日本と先進諸国との浄水処理の比較に関する考察
水道の国際比較に関する研究委員会調査報告より引用
大規模紫外線消毒施設の導入
● 日本では、紫外線処理は地表水以外の原水に対してのみ、塩素消毒を組み合わせた方式で 対応することが可能となっているが、アメリカやカナダでは地表水を対象とした大規模な紫外線消毒施設が導入されている
特に、アメリカのキャッツキル・デラウェア紫外線消毒施設の施設能力は 848 万 m3 /日(22.4 億ガロン/日)、カナダのセイモア・キャピラノ浄水場の施設能力は 180 万 m3 /日と規模が大きい
●シンガポールでは、浄水は工業用水及び間接飲用化されて使用されていることもあり、消毒として塩素ではなく紫外線を用いている
● 日本の水道における紫外線処理施設の導入件数(平成 27 年度)が 318 件で、 それらの計画処理水量の総計が 109 万 m3 /日であることから見ても、その規模の大きさがうかがえる
高分子凝集剤の使用やそれに伴う高速ろ過
● アメリカのシーダー浄水場及びキャッツキル・デラウェア紫外線消毒施設、カナダのコキットラム紫 外線消毒施設では、原水水質が良好なこともあり、紫外線消毒前にろ過処理設備を設けていない
なお、キャッツキル・デラウェア紫外線消毒施設では、豪雨等で原水濁度が5NTU を上回るようなときは、上流の貯水池に、貯水池出口濁度が5NTU 以下になるように、凝集剤の硫酸アルミニウムを注入している
● 調査した 14 箇所の浄水場中、凝集剤を使用していた浄水場は9箇所あり、その種類は、ア メリカでは塩化第二鉄や硫酸アルミニウム、カナダではPAC、イギリスではPACやポリ硫酸 第二鉄、オーストラリアでは塩化第二鉄、ニュージーランドでは硫酸アルミニウムが使用されていた
● 日本では、凝集剤使用量全体に占める PAC の割合が約 90%となっている
● 合成有機高分子凝集剤(以下、「高分子凝集剤」)は、日本では浄水処理に適用されている事例は少ないが、海外では使用事例が多く、調査した 14 浄水場のうち 6 浄水場(アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア)で使用が確認され、用途も凝集補助剤、フロック形成助剤、ろ過助剤と多様であった
● 海外では、ろ過速度高速化のため、ろ過助剤として高分子凝集剤を使用している浄水場が確認され、カナダのセイモア・キャピラノ浄水場では最大ろ過速度 300m/日、オーストラリアのイラ ワラ浄水場では最大ろ過速度 480m/日での浄水処理が可能となっている
また、アメリカのトルト浄水場では、アンスラサイト単層のろ過池においてろ過助剤として使用しているため、ろ過速度は 700 m/日まで可能となっている
凝集剤、高分子凝集剤、pH 調整剤、消毒剤、防食剤等の注入薬品の種類についても、国や浄水場ごとに様々であることが確認された
● オゾン処理を実施している浄水場では、オゾン除去のため還元剤の薬品注入が確認されたが、日本では後段に活性炭吸着池を設けることとされているため、オゾン除去のための薬品注入は実施されていない
● 海水淡水化を実施している浄水場では、ミネラル添加が確認された
フッ素添加
● 虫歯予防のためのフッ素注入が、調査した 14 箇所の浄水場中、7 箇所(アメリカ、オーストラ リア、ニュージーランド、シンガポール)で確認された
● 多くの浄水場で管内腐食防止のために防食剤が注入されており、調査した 14 箇所の浄水場中、10 箇所(アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド)で確認された
● 日本では、管内腐食防止として消石灰や水酸化ナトリウムを使用している浄水場もある
米軍統治下の沖縄本島では、1957年から日本返還の1972年まで広い範囲で実施されており、一時期19市町村約50万人に給水されていた
クロラミン処理
● トリハロメタン対策としてクロラミン処理を行っていた浄水場は、調査した 14 箇所の浄水場中 6 箇所あり、海外では、トリハロメタン対策として、クロラミン処理を採用している浄水場が多く確認された
● アメリカやカナダでは、今回調査した浄水場ではクロラミン処理を実施していなかったが、その他の地域において、広く実施されていることが確認された
● 日本では、現在クロラミン処理を実施している浄水場は無いこともあり、消毒剤使用量全体に占める次亜塩素酸ナトリウムの割合が約 95%となっている
下水の飲用化
水資源に乏しいシンガポールでは、チャンギ NEWater プラントを含む4箇所で下水処理水を 浄水処理して国内水需要の30%を賄っており、下水処理水を新たな水源として位置づけており、2060 年までには、将来需要の55%を満たす目標を掲げている
現在の日本の水道水
日本では残留塩素の懸念がある
1.次亜塩素酸ナトリウム(次亜塩素酸ソーダ)
・酸化剤として鉄、マンガンを酸化させ取り除き、次亜塩素酸の有効塩素により殺菌剤となる
(水道法により遊離残留塩素濃度0.1mg/L以上であることが義務)…上限を設けていないため日本の残留塩素濃度は世界一
→特に多摩川浄水場では150PPmを超えた
2.苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)
・pH調整剤として注入すると、凝集剤がその効果を十分に発揮できる
・水道管の腐食防止として
3.ポリ塩化アルミニウム(PAC)
・凝集剤としてプランクトンや藻類、不溶性の有機物、懸濁成分など分解して凝集させる
4.硫酸アルミニウム(硫酸バンド)
・凝集剤としてPAC同様、水中の浮遊成分を凝集させ沈殿させる
5.ポリシリカ鉄(PSI)
・凝集剤として同様
6.濃硫酸(硫酸)
・pH調整剤として
我が国におけるフロリデーション(水道水フッ化物添加)実施経験
歯のフッ素症(斑状歯)が発生
歯の形成期、永久歯では出生から満8歳までの間に高濃度のフッ化物を含む飲料水を継続的に飲用すると、歯のエナメル質が白く濁って見える、歯のフッ素症 (斑状歯) が発生し歯牙フッ化物症となれば過剰な摂取が原因となる
また、骨に対しては骨硬化症という病気を引き起こすことがある
しかし少し流れが変わって、PFAS汚染として危険性が注目され出した
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