第0026撃「メタ氏、中2になる」の巻

平成2年1990年、4月、中学2年1学期。
始業式、まず初めに小生にとって喜ばしいことが起きました。
1年のときによくつるんでいて、
写真部も一緒に活動した多坂(仮名)と、
同じクラスとなっていたのだ。
我々は手をとりあって喜びました。

数日後の昼食のときである。
小生は多坂と一つの机を挟んで向かいあって座り、
家から持ってきた弁当箱を取り出しました。
そのとき、多坂の弁当箱の上に妙なものが乗っかってることを、
小生は見逃しはしませんでした。
「それはなんなんや!?」
「おう、大人が口にするものよ!!」と多坂は得意気に言う。
それは2月に永谷園から発売されたという、
「おとなのふりかけ」というふりかけでした。
多坂が神妙な面持ちで、
ふりかけの袋の上部を切り取りました。

「ちょっと貸せっ!」
多坂の手からふりかけ袋をもぎ取って、
小生は自分の白米の上に勢いよくばら撒きました。
「おま、なにすんねん!」
今度は多坂が小生の弁当箱ごと手元に引き寄せて、
ミートボールに箸を突き刺して口に入れ、
ムシャムシャと喉に通しました。
多坂が2個目のミートボールに箸を突っ込みました。
「待てっ!わかった!停戦や!いったん停戦や!」
(ほう、どんな交渉といくね?)
多坂はそんな顔で小生の顔を覗きました。

多坂は不憫にも弁当におかずが一切無くふりかけ一袋だったようで…、
それを小生は横どりしてしまったのでした。
やむをえず2個目のミートボールを譲渡し、
「帰りに店でミニスナックゴールドおごるから赦せやっ!な!」
そう言うと多坂はニヤニヤした顔で、
「ええやろ、それで赦しといたるわ」と答えたのでした。
そして、多坂は前歯でミートボールをちびちびと削っては、
それをおかずに白米をぱくぱくと口にしました。

下校時、ミニスナックゴールドを食べ終えた多坂は、
ご満悦といった様子で「あとでシヲヤ文具行こうや?」と小生を誘いました。
それぞれ帰宅して着替えて、
マンションフォーエバーの3号館の1階のエレベーター前で、
多坂が降りてくるのを待ちました。
そして、泡嶋本町商店街(仮名)の中ほどに位置するシヲヤ文具へと、
自転車で急ぎました。

『シヲヤ文具(仮名)』
そこは可愛い文房具をこよなく愛する中高生にとって、
食品店の次に無くてはならない聖地、
といっても過言ではありませんでした。
多坂はシャーペンなどを買うようで品定めしており、
小生は普段使っているアルミの缶ペンが、
ボコボコに凹んで使いものにならないので、
ジッパーで開閉する茶色の柔らかいペンケースを買いました。
〈これで叩いても曲げようとしても被害はないぞ〜☆〉
一つ問題が解決した気分になり小生は嬉しくなりました。

シヲヤ文具からの帰り際、
春の風を浴びながら自転車で並走する多坂が、
「このまえ終わったHOTEL観てたか?」
と訊いてきました。
1990年の1月から3月まで木曜の夜9時からテレビで放送していた、
赤川一平たちホテルマンが、
ホテルプラトンで起きる珍事件に、
素敵に奮走するハートフルなドラマです。
小生は途中の何話目かだけを観たくらいで、
普段、新聞のテレビ番組欄に無頓着だったので、
ほとんどの回を見逃してました。
その後もこのドラマは続編を重ね、
大人気ドラマへと化けてゆくのでした。

HOTELオープニングOPを観る
https://youtu.be/xscJQT7QgAE?si=jFNvM36qAAPxiK2R

HOTELエンディングEDを観る
https://youtu.be/yerLQzxG6VI?si=pq3s17isz5Wt9cG4

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懐かCMを観る1990年⑤4月
https://youtu.be/ZCc6M87gwOQ?si=rQ-hdlbiu010tJ11

懐かCMを観る1990年⑥4月
https://youtu.be/gkR7OTW7k_4?si=xIjkeXkE0eQV1ogE

続く。果てしなく続く……。

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昭和50年代に大阪市に生まれた男が描く、 すぐに読めるライトエッセイ(軽い読み物)を お楽しみいただけると幸いです。 平成時代の穏やかな…

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