おとぎばなし「宝石国の王子さま」④

宝石国の王子さま⓷のつづきです

王子さまはその日の夜、とてもご機嫌でした。なぜなら、いままで認識できなかった人の顔がハッキリとわかるからです

「これで、明後日の誕生パーティーは大丈夫だ」

王子さまは安心すると同時に、はやくローズに会いたくなっていました

ローズはどんな顔をしているのだろう?ローズはどんな顔で笑うのだろう?

王子さまの頭の中はローズのことでいっぱいです

「・・・この気持ちは、なんだろう?どうして、僕はローズにはやく会いたくなっているのだろう?」

王子さまは、生まれて初めて恋をしたのでした



次の日、朝起きると黒猫のシリウスが王子さまの枕元まで来ていました

「おはよう、シリウス!!実は昨日、魔法使いの薬のおかげでみんなの顔がわかるようになったんだ!!」

王子さまは嬉しそうに話します

「ああ、はやくローズに会いたいなあ・・・」

王子さまは明日が待ちきれないようです

「・・・そうだ!なんで僕は明日にこだわっていたんだろう?いまから会いに行けばいいじゃないか!」

そういって、朝のお勉強をすますと、王子さまは意気揚々と森の中へ向かいました

昨日とは違い、まだ辺りは朝の空気が漂っています。

魔法使いにお礼を言いたかったのと、ローズの居場所を知っているのではと思い、王子さまは魔法使いの家にむかいました

「ごめんください!!昨日お邪魔したルイスです!魔法使いさん!!」

王子さまは元気よく扉をノックすると、今日は魔法使いが扉をあけてくれました

「あら、いらっしゃい」

「どうも、こんにち・・・・あれ?」

目の前にいる魔法使いの後ろに、見慣れたペンダントをつけている女の子がいます。思わず王子さまは声をかけました

「ローズ!だよね?やったあ!こんなところであえるなんて!!僕はなんて運がいいんだ!!」

声をかけられたローズはとても驚いた顔をしています

「え?ルイス?!わたしの顔がわかるの?」

「そ、そうだよ!魔法使いさんのおかげで人の顔を認識できるようになったんだ!」

「ほんとうに?よかったね!!わたしも嬉しい!!改めまして、ルイス、わたしがローズよ!」

ローズは王子さまにむかって綺麗なお辞儀をします

そんなローズに王子さまは見惚れてしまいました

「ローズ、君はなんてきれいなんだ!!その赤い瞳も、艶やかな髪も、ぼくはそんな君の顔を見れるようになって本当に幸せだよ!!」

「あら、ルイスはお世辞が上手なのね!ありがとう、この瞳も髪も大好きなお母様譲りのものなの。わたしもとっても気に入っているわ」

ローズは自分の髪をさわりながら、にこにこ答えます

「はいはい、人の家で勝手にいちゃつかないでおくれ・・・。王子さまっていうのはみんなこういう性格なのかねえ」

魔法使いは少しあきれた顔をしながら二人を見ています

「え?おうじさま?」

「おやおや、ローズは彼がこの国の王子さまだって知らないのかい?」

「うそ!?全然知らなかったわ!!王子さまなんて滅多にお目にかかれないもの!!」

ローズはこの森を越えた小さな村に住んでいるようで、王子さまの顔を今まで見たことがなかったのでした

「別に、僕はえらくもなんにもないよ・・・そんなことより、ローズは明日の僕の誕生日にお城へ来てくれるよね?」

「え?そんな・・・それは出来ないわ。だってわたしは貴族でもなんでもないただの田舎娘だもの」

「貴族じゃないから来ちゃダメなんて決まりはないよ!僕は、君に来てほしいんだ!!それに僕のお父様はこの国のみんなのことを大切に思っているよ。身分問わず、僕のことをお祝いしてくれる人を招きたいって言っていたもの!ローズは・・・僕のことをお祝いしてくれないの?」

綺麗な顔で悲しそうにする王子さまを見て、さすがにローズも断りにくくなっています

「でも、わたし、ドレスなんてもっていないし・・・」

「そこは、私が力を貸そう!!」

黙って聞いていた魔法使いがいきなり身を乗り出し言いました

「私がローズのために綺麗なドレスと、靴と、そうだねえお化粧も施してあげよう、どうだい王子さま?それでいいだろう?」

「もちろんだ!ありがとう!!これで、ローズは来てくれるよね?」

「・・・そこまで、言うなら、でも、対価はなにかしら?」

ローズは魔法使いの顔を見て聞きます

「対価?ってなに?」

王子さまはローズにたずねました

「あら?知らないの?魔法使いさんに、なにか願いを叶えてもらう代わりにこちらから何かそれと対等になるものを渡さないといけないのよ?」

それを聞いて王子さまはびっくりしました。なぜなら最初に薬を飲んだ時、魔法使いになにも対価を求められてないからです

「知らなかった・・・僕はあの薬の対価を払っていないけど、なにかいま払った方がいいの?」

王子さまは魔法使いに聞きます。魔法使いはちょっと気まずそうな顔をして答えました

「まあ、あれは君が勝手に飲んじゃったし・・・滅多にお会いできない『王子さまに会えた』ってことを対価にしたんだよ」

「そうなんだ・・・じゃあ、ローズのドレスとかの対価は?」

「・・・その、申し訳ないのだけど、王子、昨日飲んだ薬の効果は今日までなんだよ。だから、せめてものお詫びってことでローズの身支度をね、まあ、君が勝手に飲んだわけだし、こっちもカギをしないで出かけた落ち度はあるし、うん、薬はね、効果は間違いなかったんだけど、うん、」

色んな言い訳を述べながら、最後に小さく王子さまに害がなくてよかったと魔法使いは呟きました

まさかの事実に王子さまはショックを受けました。

「明日顔が認識できないなんて、他の人はともかく、ローズの顔さえもわからなくなるなんて・・・そんな・・・せっかく見れたのに・・・」

「王子さま」

ローズは初めてルイスを王子さまと呼びました

王子さまが顔を上げると、ローズは王子さまの手をぎゅっと握りました

「大丈夫、昨日も言ったけど、わたしはあなたの顔がわかるもの。明日、お城でわたしからあなたの名前を呼ぶわ。それに、このペンダントをつけていくから。これをつけていれば私だってわかるでしょう?」

「ローズ・・・」

「大丈夫よ、わたしがあなたを見つけてあげる」

「ありがとう!!!」

王子さまは思わずローズを抱きしめました

「明日!僕の!言葉を受け取ってくれ!!僕も君より先に君を見つけてみせるさ!!!」

真っ赤になっているローズと、嬉しそうな王子さまを魔法使いはホッとしたような顔をして眺めていました

それからしばらく三人で楽しくお話をして、王子さまとローズはお昼を前にそれぞれの家へ帰っていきました

「「また、あしたねっ」」

お互い元気よく手をふって別れました

いよいよ明日は王子さまの誕生日を迎えます

――――――――――――――――――――――――――

今日はここまでです

読んでいただきありがとうございます

明日で、終わる予定です

・・・文字数大丈夫かな

いいなと思ったら応援しよう!