おとぎ話「宝石国の王子さま」⓵
むかしむかし、あるところに、それはそれはきれいな国がありました
その国は大昔から、とてもきれいな宝石がたくさん採れたので
その国の人々は、いつも皆、きれいな宝石を身に着けていました
ある年、その国に小さな王子さまが誕生しました
人々はよろこび、お祝いをしました
小さな王子さまはすくすくと元気に育ち、もうすこしで14歳の誕生日をむかえようとしていました
王様は、王子さまに言います
「かわいい王子や そなたはそろそろ、将来のお嫁さんを見つけなければいけないよ。明後日の誕生日にたくさんの人をお城に招いてお祝いするから、そのときに一番、うつくしい子をお嫁さんにえらびなさい」
「・・・わかりました、お父様」
そう答えた王子さまの顔はなんだが不安気です
「難しいかもしれないが、これはそなたの大切な仕事だ。しっかりと選びなさい。大丈夫、わたしはそなたの目を信じているよ、そなたが一度決めた相手には絶対反対はしない」
「そうよ、安心して、わたしたちはいつでもあなたの味方だからね!ああ、この子がどんな綺麗な子をえらぶかとっても楽しみだわ」
王様の隣に座っていた王女様も、王子さまのお嫁さんをとても楽しみにしているようでした
そんな二人をよそに、やっぱり王子さまは困った顔をしています
王様の前から立ち去ると、王子さまは自分の部屋に戻りました
「はあ・・・」
王子さまはベッドに寝転がり、手を天井に伸ばします
――にゃあ
鳴き声がするほうを振り向くと、そこには一匹の黒い猫がいました
「ああ、シリウス。こっちにおいで」
王子さまは優しく手を広げると、黒猫は嬉しそうに王子さまの腕の中におさまりました
「・・・ねえ、シリウス、明後日ぼくは誕生日で、そこで僕のお嫁さんをみつけないといけないんだって」
黒猫のシリウスに、王子さまは話しかけます
「これは、この国の、僕にとってもすごく大事なことなんだ。お父様もお母様も、ぼくがどんなお嫁んさんを選ぶのかすごく楽しみにしているんだよ、でもね・・・・・ぼくは、顔が、他の人の顔がまったく見分けがつかないんだ」
そういって王子さまは深いため息をつきました
そうなのです。王子さまは小さなころから人の顔を覚える事が、とても苦手でした。
最初は、みんなそうなのだろうと思っていた王子さまでしたが、成長するにつれて、それは自分だけなのだということに気付きました
人の顔の一部、一部はとらえる事ができるのに、顔全体はなぜかわからないのです
お父様やお母様に相談しようと思いましたが、そんなことを知ったら、失望されてしまうのではと怖くなってしまい、いえないまま14歳目前になってしまったのでした
一つ助かったのは、この国の人々が宝石にこだわりを持ち、一人ひとりが違うものを身に着けていることでした
それにより、王子さまは人を区別することができていたのでした
しかし・・・
「顔がわからない僕が、どうやって綺麗な人をお嫁さんに選べばいいんだろう・・・・・」
王子さまの誕生日に開催されるパーティーには、この国の人だけではなくほかの国の人もたくさん駆け付けます
なぜなら、この日が『花嫁選びの日』というのをみんな知っているからです
この国の人はもちろん、他の国の人もお嫁さんに選ばれたい人が沢山いるので、その日は宝石以外にもなにか目印がないと王子さまは誰が誰だかわからなくなってしまいます
「ぼくは・・・今まで綺麗だって思う女の子に出会ったことがないんだ。みんないつも綺麗な宝石を全身にまとっているのに、ぼくにはそれがただの目印にしか見えないんだよ」
王子さまはそういって、シリウスの頭をゆっくりなでました
お父様とお母様と顔は、なぜか不思議なことに認識できました
それがどうしてなのか王子さまにはわかりません
使用人の顔も、いとこの顔も、おじいさまの顔ですら王子さまは認識することができないのです
「お前の顔は、わかるのにな・・・」
王子さまはシリウスを抱き上げ、自分の胸に引き寄せました
シリウスは満足そうに喉をならしています
「・・・なんとか、しないと」
そういうと、王子さまはシリウスを地面にフワッとおいて
なにやらカバンに物を詰め始めました
―――コンコンッ
王子さまの部屋の扉が叩かれる音がします
王子さまはあわててカバンをベッドの下に隠しました
「なにかようか?」
「王子さま、これからお勉強の時間でございます、家庭教師の方が部屋でおまちです」
「あ、そうだった。ありがとう、すぐいくよ」
王子さまは、なにかを一度中断して家庭教師が待つ部屋へ向かいました
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一万字って条件つけたので、今日はここまでにします
さすがに前回よりは短い予定です
これは短編を書くことが目的ではなく、プロットありとなしの違いをしるためのものなので・・・
それでは!!