12話 猫が噛む
あげはちゃんが、私と同じように試験を受けて合格をした。
あげはちゃんに最後に会ったのは、高校生の頃だった。数年ぶりに会ったあげはちゃんは、少しだけ落ち着いていた。
夜遊びをして、金髪ピアスだったあげはちゃんは、夜遊びをしない金髪になっていた。
久しぶりのあげはちゃんに、どう接していいのかわからなかった。
季節が初夏に変わったころ、猫の散歩中に猫に噛まれた。
臆病な猫だったので、私の足を何かと勘違いして噛んだのだろうと思う。
思いっきり噛まれて、足が血まみれになったので病院へ行った。
病院では「ネコに噛まれたの??」と何度か確認された。
処置は簡単で、消毒の後、包帯を数巻きされただけだった。
抗生物質の薬を貰って帰った。
が、出血は止まらなかった。
夜には包帯が血まみれになり、大惨事になった。
このまま寝ると、布団まで事件の跡になってしまう。
父が「ラップを巻けばいい」というので、ラップを巻いて寝た。
包帯が数巻きだったのは、猫だと大したことがないと思われたからだろう。
傷口は「猫の牙四つ」だったが、太い血管にヒットしていたので血は止まらなかった。
小さな傷でも、大きな血管を傷つけると大出血する。
少なくとも、貧血っぽい立ちくらみを感じるくらいには、血を流した。
ラップを巻いて病院に行くと、「なぜ、こんな事をしているんだ」と医者に怒られた。
医者側からすれば「ラップを巻いて雑菌が入ると困る」なのかもしれない。
血まみれ包帯では眠れなかった。家に包帯はなく、ラップしかなかったのだ。
会社でも「猫?本当に?」と怪訝な顔で確認された。
猫も噛む。猫を虐めたわけでは、ない。
ちょっと狭い場所に入り込んだので、リードを引いたらびっくりして足に噛みついてきた。
リードを付けた猫は変わっているらしい。
散歩をしていると、スピードを落として猫を二度見する車があった。
今でも、この時の傷は足に残っている。