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☆24☆ クリスマス2

 食事を終えて、お店を出ると真っ暗だった。

「映画はどうする?」
 そう聞かれて、そういえば電車の中で映画にも誘われていた事を思い出した。

「もう、帰ります」
「え?行こうよ。せっかく来たんだしさ」

 電話での『食事だけ』という話は、消え去っているんだなと思った。
「もう暗いし、食事だけという話だったので」
「でも、映画は見たかったんじゃないの?映画もおごるしさ、行こうよ」

 面倒になった私は、映画も見に行く事にした。

 映画館の駐車場に車が止まったので、私はドアを開けようとした。

「ちょっと待って、話があるんだ」

 唐突にそう言われて、嫌な予感しかなかった。聞かなかったふりをして、ドアを開けようとしたが、ロックがかかったままだった。
 しかたなく、契約社員さんの方を向く。

「付き合ってほしい」

 ここは映画館の駐車場とはいえ、田舎とは違う。映画館はすぐそこで、行きかう人が見えている。
 駅はどこだろうか。人が歩いているのだから、聞けば分かるだろうかと考えた。

「聞いている?付き合ってほしいんだけど」

「無理です」

 車を即座に降りて、電車で帰った方がいいと思ったが、ロックがかけられていて開けられない。
 いや。それどころか、狭い車内では何があるか分からない。

「なんで?理由があるの?」

 付き合えない理由なんているだろうか?そもそも、なぜ付き合えると思うのか、こちらが理由を聞きたい。
 彼女がいると言えばいいだろうか?と思ったが、今日は『クリスマス』だという事に気がついた。
 恋人がいると言ったところで、「クリスマスも一緒に過ごせない恋人なんて恋人じゃない」なんて言いそうだなと思ってやめた。

「なんででも……私の年齢も知らないでしょ?」
「知らなくても付き合える。これから、知っていけばいい」

 とりあえず『何も知らない』という部分しか思いつかない。
 相手が私の事を知らないように、私も相手の事を知らない。
 すでに一つだけ分かっているのは『妄想力がたくましい』という事だ。そして、それはとても厄介だという事も知っている。

「私、地元に戻るかもしれないよ」
「だったら、地元に戻るまでの間でいいから、付き合って」

 他にもあれこれと、思いつく理由を並べ立てたが、しつこく繰り返してくる。
 それが30分以上続くと、さすがに私も根負けした。そして、やけくそになった。

「じゃぁ。いいよ」

 私がそう言うと、契約社員さんはうれしそうに顔をほころばせた。
 そして、後部座席から何かを取り出した。

「これ、クリスマスプレゼント。OKがもらえなかったら、せっかく買ったのにどうしようかって思っていたんだ」

 私はいいよと言った事を後悔した。相手はすっかり恋人気分だが、こちらは拉致監禁されている気分しかない。

「あ。ありがとう」
 引きつった笑顔でそう返すと、「開けてみて」と急かされた。
 リボンで結ばれた袋に入ったプレゼントを開けてみると、センスの欠片もない服が出て来た。

「君に似合うと思って買ったんだ。体に当ててみて。ほら、すごく可愛い」

 センスがあるとは言えない私でも、『これはない』というのが分かる。
 ワンピースのような形だが、丈が短い。モコモコした生地でパジャマのようなパステルイエローの服。
 外出着……ではない。部屋着なのか?それにしては、レースのひらひらが邪魔で、モコモコ生地もすぐに毛玉が出来そうだった。

「すごく悩んだんだよね。でも、これにしてよかった。これからは、僕がもっと可愛くしてあげる」

 契約社員さんが、仕事で会う私は地味でダサい事を言っているんだなと思った。仕事で可愛くする気は一欠けらもないが、こうやって勘違いする男にはウンザリする。


 



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