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6話 仕事

 全ての不満が、『月のモノ』のせいにされてしまう。

 守り人さんにとって、私が不機嫌で要望を伝える日は『ツキの日』だからで片づけられた。
 不機嫌な言葉が、『本音』であることは脇へ押しやられ、『可愛いタナさ』の言葉だけが守り人さんの耳に残る。

 守り人さんとのチャットに疲れ切ったころ、新しい仕事が決まった。
 仕事が始まると、チャットの時間は減った。時間が減ると、えすえむ話も減った。

 次の自傷理由は、仕事になったけれども、自傷との戦いも徐々に疲れていた。
 私は『今は切っておこう』という気持ちで、切るようになった。
 切る事に理由を付けるのも、切る理由を探すのも、面倒になっていった。
 切る事で癒やされるなら、それでよかった。

 チャットの時間が減ったのは、寂しかったけれども、自傷理由が一つ減って私は楽になった。
 仕事のストレスでの自傷行為はあったけれども、これは『私自身』の問題だと思えた。
 守り人さんとのチャットで切るのは、守り人さんに悪いと思っていた罪悪感もなくなった。

 さらにしばらくすると、会長様とのメールやチャットのやり取りが復活した。
 それも、また、私の心を安定させた。

 同時に、私の中で誰が好きなのかに迷いが出てきた。
 依存のせいだと分かっていながら、守り人さんへの想いも本気なのではと思ってしまっていた。

 春が近づくと、「会おう」という話になった。
 会長様のサークルオフ会に、守り人さんを呼ぶという形で『複数人で会う』という形にした。
 夏のいざこざのしこりが、なかったわけではない。

 何かと会長様を目の敵にする守り人さんの発言に、「そんなことはないから」となだめながら、誘った。
 誘ったのはいいが、私の頭は痛かった。夏の様子から、お互いがお互いに『良くない印象』なのは分かっていた。
 その原因が、『私』なのも分かっていた。

 さらに、会う事で『錯覚』の強化も怖かった。もちろん逆の『幻滅』も怖い。
 どちらに転んでも、良い事がないような気分にもなった。
 けれど、私は『私の気持ちを確認する』という目的で、会う事にした。

 




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