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1話 父の家の話

 ちちの いえの おはなし

 父の家は大きな屋敷だったらしい。
 昔は今の倍の広さを持った屋敷だったらしい。
 跡継ぎだった伯父さんが何代目なのかは知らない。
 近所には、遠い親戚らしい家が数件あり、数代さかのぼるとつながるらしい。
 昔はお風呂のおけを作っていたらしい。そのせいか知らないが、親戚には東京で銭湯をしている人も居る。
 この辺りの大半の家がそうしているように、ただの兼業農家だった。
 本家は、田んぼを多く持っていた。

 その家の次男坊として父は生まれた。
 父には姉と兄が居た。
 姉は父が生まれる前に事故で亡くなったと聞いている。
 父方の祖父母は私が物心つく前に亡くなった。
 私の中で、父方の祖父母は写真の中の父にそっくりな人でしかない。
 父の伯父さんは衛生兵として戦争に行って、帰って来なかった。
 お墓には衛生兵の像が立っている。

 父の足の傷だけは聞いたことがある。
 10代の頃、農作業を手伝っている時に機械に足を挟まれて大けがをしたのだと。
 とはいえ、父はその後もいろんなけがをしているので、今はどれがその傷なのかよく分からない。

 父の家の話は今のところ、これだけ。






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