木漏れ日の頃6
【 欠勤2 】
何もないよ。
何も無かった事にするの。
誰も何も知らなければ良いの。
電車に乗る気もない。
連絡する気もない。
『あー、やばい。無断欠勤しちゃった。』
淡々とそんな事を思った。
携帯の電源はとっくにOFFにしてある。
煩わしかった。
切って切って切って……
腕が赤くなる。
そのうち風が吹いてきた。
草が風に揺らいでいた。
雨が止んで、光が降り注いでいた。
切るのを止めて、外の変化をぼんやりと眺めた。
絵を描きたくなって、紙とボールペンを取り出した。
描いて描いて描いて……
描いた後、紙を破り捨てた。
痛かった。
せっかく描いた絵を自分の手で、捨てる。
絵が嫌いなわけじゃない。
どんな落書きも捨てる為に書くことなんて、した事がなかった。
いつも捨てられなくて溜まってしまう。
腕の傷よりも痛かった。
1時過ぎ……会社の人が来るとしたら1時前ぐらい。
もうそろそろいいかな。
気もすんだし。
家に帰ることにした。
靴を脱いで、裸足になる。
アスファルトの感覚が足に伝わってきた。
気持ちよかった。
家では、母が心配していた。
「襲われたの?」
裸足の私を見た母が言った。
「えー。誰に? こんな昼間から?」
私は笑って答えた。
指導者さんも家に来ていたと聞いた。
会社に電話して、指導者さんに電話した。
「心配したよ」と言われた。
だけど、私にとってそれは実感がなかった。
迷惑をかけたのは実感していた。
駅でも、心配されてる事は頭の中になかった。
次の日が休みで良かったと、ふと思った。
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