22話 『 』
会長様との関係が最悪になって、これで切れるのかなと思った頃、とある会員様からSNSにメッセージが来た。
『会長さんがお祭りに来てほしいと日記に書いていました。
行ってみてはどうですか?
会長さんは本当にノアちゃんを愛しているんですね』
内容はこんな感じだった。
日付も時間も分からないので、直接会長様にメールで聞くしかない。
会長様の日記はお友達のみの公開で、お友達から外れた私は見る事が出来ない。
私は会長様にメールを出して、行くと伝えた。
祭りとは会長様の趣味兼仕事の場所。
会えると言っても、話ができる時間はほとんどない。
以前の祭りの場で私は失態を犯しているので、行くのはすごく迷った。
再び何かをしてしまいそうで、怖かった。
何より、もう私には以前のような気力がない。
けど、会長様に会いたいから、気力を絞って行く。
会長様のお仕事が終わるまで待つつもりだった。
けれど、私は怖かった。
会って日記に何を書いていたのか聞くのも、どう思っているのかを聞くのも。
何もかも怖かった。
お仕事が終わったのが音で分かった。
でも、この後もいろいろとあるのかなと考える。
考えているうちに会長様に会うことが怖くなって、『帰る』とメールを送った。
帰るつもりだったが、このままでいいのか迷った。
迷った挙句、『まだ帰っていない』とメールを出した。
……何をしたいのか、もう、自分でも分からない。
会長様とは会えた。
バス停までの短い距離を二人で歩く。
「お祭り、二人で回ろうかと思っていたけど……本当にアワナイネ」
それが、私たちのことを言っているのか、単に今日だけのことを言っているのかよく分からなかった。
「ごめん……」
私はもう、私で手いっぱいだ。会長様にまで気が回らない。
バスに乗る直前に「またね」と、いつものように言ってみた。
会長様から返事はなかった。
もう一度だけ「またね」と言ってみる。
会長様は私を見なかった。
これが答えだと思った。
『またね』はない。
会長様が私に、また会う気はない。
歪んで拗じれた関係は、それで終わった。