☆番外☆ 中国人と契約終了
ある日、職場に行くと中国の人がいた。前日まで見かけたことのない人だった。
「時々、彼女にやってもらうから。少しだけ日本語が分かるらしいから、大丈夫」
そんな説明だったが、その『少しだけ日本語が分かる』というのが、よく分からなかった。その人は急きょ休みになった人の代わりに、入る事が多かった。
初日は、ずっと眠たいと言い放ち、「家に帰る」「まだ仕事があるでしょ」と上司と押し問答をしていたと聞いた。
そのうち、部署が変わってメインのメンバーになったと聞いた。メインというのが、夜勤シフトだった。
クリスマスイブの日には、同僚が「メリークリスマス」と声をかけたが、意味が分からないという顔をしていた。
「クリスマスは中国にもあるよね?」と同僚が聞いていたが、「うん。あるけど、そんな事は言わない」と返ってきた。
日本語だからなのか、中国語での『メリークリスマス』は別の発音なのかなと思った。
中国の人とも親しくなってきたころ、噂が広がった。
「実はこの会社、奥の俺たちが行かない棟に中国人を沢山雇っているらしい。そこには日本語が出来ない人間が沢山働いているって。
そのうち、俺たちの仕事、奪われちゃうかもよ」
日本語が分かるという中国の人に確認してみると、「うん。私のほかにいっぱいいます。その人たちは言葉、わかりません」と答えてくれた。
中国人が沢山いるのは事実だった。
そして、しばらくして上司から告げられた。
「ごめん。派遣は全員、切ってくれって上が」
冗談がまさかの本当になっていた。
私たちがやっている仕事は、言葉の分からない人間でも出来る仕事と判断されたわけだ。
以前職場では
「言葉が分からなくて、身振りで何とか伝えたけど、全部ダメで作業がやり直しになった」と言う事があった。
やり直しにさせないために通訳でも雇うのか、日本語が分かる数人を通訳を押し付けるのだろうか。
どちらにしても、派遣は全て切られてしまった。