☆番外☆ 文通相手
専門学校に通っていたころ、小学校からの文通相手に実際に会った。
会ったのはこの時、一度きりだった。
彼女の大学に潜り込んで、講義を受けさせてもらった。
大学ってこんな場所なんだとわくわくした。
その後、彼女がやるキリストの劇を見て、帰った。
「脚本は私が書いたんだよ」
と彼女は言っていた。キリスト教はよく分からなかったので、劇の内容も半分も分かっていなかった。
彼女が何の役かを聞いていなければ、彼女がどこにいるかも分からなかったかもしれない。
文通相手に会う前、大学までの路線を寮長さんに聞いた。
「なんざんだいって、どうやって行ったらいいですか?」
「なんざんだい?」
と聞き返された……。音読みではなくて、訓読みが正しい読み方だった。
地名は本当に難しい。名古屋の某大学名、知らない場所なので読めなかった。
文通相手とはこの後、数回のやり取りをした。
それからは、手紙を送らなくなって、来なくなった。
お互いに自分の時間で忙しくなったせいだと思う。