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☆18☆ 夜景2

 どう断るべきかなと考える。いや。断ったところで、人の話なんて聞かないだろうけれど。
 私がそんな人間を引き寄せている事を嫌でも自覚する。
 彼らが見ているのは、『大人しくて自分の言いなりになってくれそうな女』であって、私ではない。
 そんな女に告白する男は、『押せば俺の言いなりになってくれる』というしつこさも併せ持っている。

 非常に厄介だ。
 股間を蹴り上げて終わりにしていいなら、そうしたい。

 担当が私に告白をしてきたのは、派遣先の契約期間が切れるからだ。
 仕事が切れたら、関係も切れる。私と担当との間には、仕事の関係しかないのだから。
 とはいえ、あと数週間の仕事を無難に過ごしたいので、この場も穏便に済ませたい。

「無理です」

 考える事を放棄して、私は分かりやすい言葉を選んだ。
 けれど、「なんで?今は付き合っている人はいないんでしょ」と、しつこい言葉が飛んでくる。

 私は全てが嫌になった。

「好きな女性がいるんです」

 あと数週間、職場で私が同性愛者だとばらされてもいい覚悟で言った。
 担当はポカンとした顔で私を見た。

「え?あ。えっと。同性が好きなの?」

 私はうなづく。

「じゃあ。手をつないでいるのも嫌だよね」

 慌てたように担当は、私の手を離した。やっと解放された手を握ったり開いたりして私は自由を感じる。
 これで、話は終わりだろうなと思ったが、そうはならなかった。

「でも、男性とは付き合った事がないんだよね」
「はぁ。そうですね」

 私は一歩階段を下りて、車へと行こうとした。

「じゃ。試しに男の俺と付き合わない?」

 私は階段を踏み外しそうになった。慌てて体勢を整えて、担当の言葉の意味を考えようとしたが、考える前に担当が説明をしてくれた。

「男とやった事はないんだろ?だったら、俺とさ」

「……嫌です」

 私は即答した。暗くて、相手の顔さえマトモに見えない事に感謝する。このゲスの顔を二度と見たくはない。

「そっか。そうだよね」
 私の即答に凹んだのか、担当は「じゃあ。行こうか」と諦めたように階段を下り始めた。
 しかし、階段を下りながらも「好きな人はどんなタイプなの?かっこいい?可愛い?」などと聞いてくる。

 いろんなものを我慢して「まぁ。どっちでもあり、どっちでもないかな」と適当な返事で乗り切った。
 階段を下りている途中で、男女二人組と行き違いになった。そこでやっと私は、ここがデートスポットという事に気がついた。

 車に乗ると、担当が「喉、渇いたでしょ?」とペットボトルを一本渡してくれた。私はそれを、カバンに放りこんだ。
 この後、本当に部屋に帰してくれるのかと疑問に思っていたが、ちゃんと部屋まで送ってくれた。
 部屋に入るなり、私はもらったペットボトルの中身を流しに捨てた。飲む気にはなれなかった。

 次の日は、全く休めた感じがせず心身ともに疲れ切っていた。そして、会社に着くなり、同僚に昨日の出来事を話した。

「え?何、考えてんの?まっていたのかな。風俗でも行けばいいのに」
 というのが同僚の言葉だった。やっぱり、そうだよね。と思った。

 帰り道は雨が降ってきた。傘を忘れてしまったので、れながら帰っていると、車が止まり担当が顔を見せた。
「送っていくよ」
「いいです。大丈夫なので、放っておいてください」

 もう、担当の車に乗る気はなかった。あんなに疲れるくらいなら、れた方がまだマシだった。

 仕事が終わるまで数週間の間、私は担当を避け続けた。
 次の仕事は別の派遣でやる事に決めた。


 



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