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☆4☆ 美術展
ビアンサイトで、お友達募集してみた。
最初はメールでやり取りをする。何人かは、返信が一言で終わる。
『こんにちは。休日は何をしていますか?』
この質問に対して、一言「別に何も」と返ってくる。
他の質問もそんな感じでどうやってこの先を続けたらいいのか、頭を悩ませる。
結局、こちらが質問を続け、相手は一言で終わる。こちらがたわいのない雑談を入れても、それについては何もない。
メールを続けるのが困難だったので、まず『普通に返信が続けられる人』を探す事が課題だった。
めげそうなやり取りの中で、質問に質問が返ってきて何度かやり取りを続ける事が出来た人が何人かいた。
その中の一人のお話。
名前を壱さんと言って、実家は地方にあるのだと言っていた。こちらも実家は、地方だと伝えた。
美術館巡りなどに興味があると書いた自己紹介が気になったと言ってきたので、美術展へと誘った。
待ち合わせは、池袋駅。新宿駅は迷子になった事があるので、避けた。
壱さんも、まだ東京には慣れていないと言っていたので、池袋辺りならば大丈夫かと思った。
人の多い東口も西口も避けて、南口での待ち合わせ。人は少ないが、駅の端で場所が分かりにくいのが、難点だった。
壱さんは、迷いながらも南口に辿り着いてくれた。待っている人が私以外にいないので、すぐに気がついてもらえた。
あいさつをして、美術展へと足を向ける。一緒に見ると言っても、中に入ったらお互いに相手を気にしなくなってしまった。
会場は広くないので、迷子になる事もない。とりあえず、『会場内のどこかにいるだろう』と思って、展示物を好きに見て回った。
展示物を見終わってから、壱さんを探そうとしたら、壱さんの方が先に見終わって私を待っていた。
「ごめんなさい。夢中になっちゃって」
私が謝るより先に、壱さんが謝ってきた。私の方が誘ったので、ごめんなさいと返す。
その後の予定は特に何もなかったが、おなかが空いたので一緒にお昼を食べてから解散した。
仕事で地方に移動になったと壱さんから連絡が来て、それきりだった。
誰かとこんな風に美術展を回るのもいいなと思えたが、彼女以外の人と美術展に行く機会はなかった。