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5話 赤痢収束

 次の日、普通に学校に行った。先生は何も言わなかった。
 ただ、検便が全く出せなかった。
 緊張とストレスと、食べる量が極端に減ってしまったせいで、出てこなかったのだ。
 さらに次の日には、寮母さんから便秘に効くという漢方をもらって飲んだ。

 下痢になった。
 漢方を飲んでいなかったら、発症したのか?と思うくらい、おなかの中が全部出てきた。
 学校に来たことを後悔した。休んでおけばよかったと思った。

 数日後には検査結果も出た。私は感染していなかった。
 感染していたのは1階の子達が多かったおそらく、階ごとにあるトイレからの、感染だったのだろうという事だった。
 食事からも菌は検出されなかった。
 2週間もすると、食事もいつも通りで、友達も病院から出てきた。

 友達が寮に帰ってきてから、はしゃぐように私に伝えてくる。

「親とも壁越しだし、皆、重防備で入ってくるし、ホントすごかったよ」

 ドラマの中のような事が実際にあるんだねという話になった。

 全てが元通りになっていく中で、カウンセラーが寮にやってきた。
 食事を終えて、部屋へ帰ろうとした時、友達がそのカウンセラーに呼び止められた。
「治ってよかったね。変わったことはない?」
「何もないですよ。いつも通りです」
 と友達が答えた。

「そう。こんな事があると、周囲の反応が変わったりするから心配で。学校でも何か言われたりしてない?」

「別に特に何も……皆、いつも通りでしたよ」
 友達がそう答えた。
 私はやっぱり、先生たちのような態度はよくある事なのだと理解した。

「あなたは?何もない?」
 ついでのように、私にも話が振られる。
「はい。特に何も……」
 私はわざわざ先生の態度を言う必要はない気がした。
 言う事で友達が嫌な気分になるのでは?とも思った。

「そっか。よかった」

 カウンセラーとのやり取りはそんな感じで終わった。
 保健所からやってきたカウンセラーは、数日、寮の人たちの話を聞いている様子を見かけた。
 その後は、落ち着いたようで見かけなくなった。

 一カ月もすると、元の寮生活に戻った。
 洗面所に残る多数のアルコール消毒だけが、赤痢の名残だった。






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