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短編小説を書いてみる

2024年3月16日
大好きな本屋さんで「短編小説を書いてみる会」が開かれた。
私を含め、小説を書くことに不慣れな方が多く集まった。
進行は店主であるKさん。
なんだか授業みたいな緊張感のある空気で、18時に開始された。

まずは自己紹介。
「えーっと」を多用する私。人と話すことへの不慣れさがすごい。
きょどきょどしちゃって、あとで少し反省した。(一人反省会をいつもしてしまうのだ)

プロットとは何か? ということについて、すこし学んだあと、2000字くらいの小説を4本ほど読んだ。太宰~2023年の公募受賞作品まで幅広く集められていて、しかもどれも読みごたえがあった。

このあたりで、夕食の「蒸し寿司」が届いた。
木製の「おかもち」で届けられたのには驚いた。もしかすると、人生で初めて、「おかもち」を見たかもしれない。
「おかもち」といえば、岡本かの子の「家霊」を思い出した。

くめ子は柄鍋に出汁と味噌汁とを注いで、ささがし牛蒡を抓み入れる。瓦斯こんろで掻き立てた。くめ子は小魚が白い腹を浮かして熱く出来上った汁を朱塗の大椀に盛った。山椒一つまみ蓋の把手に乗せて、飯櫃と一緒に窓から差し出した。

「御飯はいくらか冷たいかも知れないわよ」

 老人は見栄も外聞もない悦び方で、コールテンの足袋の裏を弾ね上げて受取り、仕出しの岡持を借りて大事に中へ入れると、潜り戸を開けて盗人のように姿を消した。

岡本かの子『家霊』

少々、脱線してしまった。
蒸し寿司には、錦糸卵がまぶされていて、その上にはふっくらとした鰻や、海老や、かまぼこや、しぐれ煮、椎茸なんががのっかっていたと思う。
あと、グリンピースもあったし、栗の甘露煮ものっていた。
みめうるわしゅうてゐたり。美味なり。

食べながら、今から作る小説のことを考えた。
遅筆のくせして、ノープランで来てしまったのだ。
(書きたい作品はたんとあるけど、新しく考えたいという気持ちがあったのも確かだ)
10分くらい延長してもらって、なんとか書き上げた。
それから、回し読みをした。
わたしは読んだ後に感想を付箋で張り付けた。
べつに「絶対」ではなかったけど、全員に何か一言は書いた。
感想をもらうと、わたしはうれしいからだ。

それぞれが紡ぐ文章の連なりは、どことなく個性があって、なんだかおもしろいな、と思った。見え方の違いや経験や、読書体験のなかで、粘土のように形作られていくのは、なんだか楽しい。
しかも、近くにいるのだ、作者が。
またやりたいな、と思った。

ゆめとのぞみ(仮名)さんがいたから、やってみようと思えた、みたいなことを言っていただいて、わたしも誰かに、何かを分けることができたのだな、と不意に思った。アンパンマンみたいに。

アンパンマンみたいに見た目で分かったなら、悩みも減るかもしれない。いや、私がアンパンマンだったら、顔面の欠けを見せびらかしてしまうかもしれない。そして闇堕ちすることに……。

バカバカしいことを書いてしまったけれど、この尊さを知ることができたのも、今までの苦い経験のおかげだと思う。すべて、私の身になっている。

くるしい、とか言っている場合じゃないな、って思うし。
さっぱり才能を自分の中に見出せないけどさ、がんばらんと。

家に帰って、わたしは長編小説の続きを書いた。小説のハシゴ。
小説を書きたいと思っている間は、書き続けていきたいな。



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