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人生でテレビがいらないと思った時!

キッチン、ダイニング、居間をリフォームした時のことだ。
一時的にテレビのない生活を送ったことがある。
水まわりとリビングを工事する期間中は仮設で過ごすことにしたからだ。


人生でテレビを見ていた時間は?

一ヶ月以上の仮設生活だったが、テレビがなくても辛抱できるだろうと思った。
仮設でテレビを見るようにするにはアンテナ線などの仮設工事も必要だったからだ。
その頃、居間に入ると先ずテレビを付けるのが習慣になっていた。

テレビのある人生

田舎の我が家がテレビを購入したのは1964年(昭和39年)頃だろうか。
私はまだ物心がつくかつかないかといった年齢だった。

初めて東京でオリンピックが開催される少し前に、その東京オリンピックを見るために買ったのだろう。
買ったのは我が家だけではなく、百五十軒近くあった集落のほぼ全戸が同時に東芝のテレビを購入した。

勿論白黒テレビだ。
100台以上の東芝のテレビを購入する条件として、共同アンテナの設置を条件にしたようだ。
姫路市にあった東芝の工場見学に行った記憶がほんの少し残っている。
それまではラジオがあったがそのラジオを聞いていた記憶は残っていない。

当時のテレビ番組で最も記憶に残っているのが、円谷プロダクションが制作したウルトラQだ。
まだウルトラマンというヒーローが登場する前だ。

その頃から60年間にわたってテレビのある生活をしている。

テレビのチャンネル争い

テレビがあるというだけで家庭内には少なからず問題が生じた。
当時テレビは高価だったこともあり一家に1台という定説があった。

我が家では私が大人になってからも一家に一台は続いた。
そのことで起こる問題のトップはチャンネル争いだ。

家族の年齢や価値観によって観たい番組が違うのは当然だった。
しかしそんな家庭内の小さな問題は、どこも同じだろうとは思っていても外で聞くことはなかった。

我が家で記憶にあるのは、チャンネル争いに負けた時の番組のけなしあいだ。
概ね結婚してからのチームは子ども対大人や私対女性といった組み合わせだった。

子どもがアニメを見ていたら大人がその番組を後ろからけなす。
特に観たいドラマなどを裏番組でやっている時にけなすことが多かった。
「つまらない漫画ばかり見てないでそろそろ勉強でもしたらどうだ」といった具合だ。

平均20%強という驚異的な視聴率を叩きだした国民的ホームドラマ「渡る世間は鬼ばかり」という番組では妻や母が相手だった。
普段は決して仲がいいと言えない嫁姑のタッグは最強だった。
負けていたのはいつも私だ。

「心の中まで説明しないと分からないようなドラマのどこが面白い」と言ってけなしていた記憶がある。
言うなれば負け惜しみだ。

どれだけ番組をけなされようが、聞こえないふりをして観ているのは勝ち組だった。

テレビがない生活

そんな我が家にテレビのない生活をしなければならない時が来た。
テレビを置いていた居間も含めてキッチンや浴室などをリフォームした時だった。

住みながらのリフォームで使っていなかった部屋を仮説のLDKとした。
予算軽減のため仮説部屋のアンテナ工事をしなかったことで、工事中はテレビを見ることができない環境になった。

最初の一週間は毎週見ていた番組が気になった。
しかしなぜか二週間目からはテレビのことが気にならなくなった。
3週間目になると見ていた番組が懐かしいと思えてくるほどだった。
チャンネル争いに負けて見ていた「渡る世間は鬼ばかり」も懐かしく蘇る程度だ。
テレビを見ない生活が1ヶ月も続くと返ってその生活が新鮮になっていた。

いつもならテレビを見ていた時間に子どもは漫画本を静かに読み、私は小説を読んだ。
勿論けなし合うことはない。
家庭内のテレビがあることで起こる小さな諍いが我が家から消えたのだ。

テレビがなくても生活はできると思った。
返ってテレビがない方が家庭内が穏やかだとも思った。

その時初めてテレビが人生にもたらした影響を考えた。
もし世の中にテレビがなければもう少し勉強もしていたのではないだろうか。
そうすればもう少し違った人生になっていたのではといった今更の胸中だ。

一概には言えないが、私たちの年代ならテレビを観て過ごした時間も相当なものだ。
いいことも悪いことも、テレビが私たちの人生に影響を与え続けたことは否定できない。

昔よりは見なくなったと言っても現在も1日に2時間程度テレビを観る。

今後2時間テレビを見続ければ10年で7300時間程度になる。
300日間テレビを見ることになるという計算だ。

そのような計算をすればこの時間をもっと他に使えないかと考えてしまうのは私だけなのだろうか。
私がどれだけ理屈っぽい人間だとしても、残された人生を有効に使いたいと思うことが悪いことだとは思えない。

因みに我が家にテレビが来てから毎日2時間見ていたのなら、何とその合計は43,800時間にもなる。
人生の60年間に、途方もない時間をテレビに費やしたことになるのだ。

テレビっ子と言われて育った昭和人間の私だが、第二の人生くらいはテレビのない生活をしてみたいと思う次第だ。

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