家と音【引っ越してから後悔しないために】
少し前、「人生と家」というタイトル記事で、部屋の色に関して書いたが今日は音だ。
私は定年退職する前は建築の仕事をしていたが、思いのほか住まいの音は見逃しがちだと思っている。
落ち着く家の音環境を知っておく
引っ越しシーズンがやってきたが、多くの人が気にするのが環境音だ。
付近に鉄道が通っていないかや主要道路の横ではないかといったことだ。
もちろんアパートなどの賃貸なら隣の音も気にしなければならない。
今回はアパート選びや部屋作りで、落ち着いた生活をするための音に関する問題を取り上げてみることにする。
環境音を気にするアパート選び
アパートなどの内部見学で誰もが最初に気になるのは使い勝手やクロスの色、部屋の明るさなどだ。
内見時間はおそらく長くて30分程度だろう。
私も一時期不動産部門で働いたことがあるが、多くの人は他の物件も見て比べてから決めたいと思うから1件に多くの時間をかけることが難しい。
しかしたった30分で、その物件の生活環境をすべて把握するのは無理というものだ。
今回は音がテーマなので音に関して書くと、アパートや賃貸マンションの構造がRC構造(鉄筋コンクリート造)が最も両隣の音が聞こえにくい。
両隣の境の壁がコンクリートで出来ているからだ。
壁は重いほど遮音性は高い。
それに比べ木造や鉄骨構造は間仕切壁の遮音性能が低いのが一般的だ。
RC造(鉄筋コンクリート造)、S造(鉄骨造)、木造のどの構造の建物なのかは、不動産情報にしるされているので、内見までに頭に入れておくと住んでからの音環境を想像しやすくなる。
音を気にする部屋選びでは窓の確認も重要だ。
窓の構造などだ。
外部の生活音は窓からの侵入が最も大きいからだ。
シングルガラスとペアガラスだけでも音の侵入に違いが出る。
もちろん音だけではなく断熱効果も違ってくる。
ガラスの厚みによっても違うが、そこまで考慮して厚いガラスを使っている賃貸住宅はないだろう。
窓の大きさも音の侵入に関係性は高い。
大きいほど音が多く入ってくると思っていた方が賢明だ。
もうひとつ忘れてはならないのが窓の位置だ。
道路や鉄道に面した窓は最も大きな音が侵入する。
例えばその建物が道路に面していたとしても、高い階になるほど音の侵入は少なくなる。
その理由は音源が遠くなるのと、音の波動が窓や壁に垂直方向から当たってこないからだ。
外壁はサイディングよりタイルの方が遮音性は高い。
基本的に重い材料の方が遮音性が高くなると思って間違いないだろう。
落ち着いた部屋の音環境
少し前の記事では白い壁や天井は落ち着かないという色について書いたが、落ち着いた部屋にしたいなら音も重要だ。
これはアパートなどの賃貸に限ったことではない。
今暮らしている家も同じことだ。
いや家だけではない。
例えば友だちや家族とファミリーレストランなどに行った時、落ち着かない店だと思ったことはないだろうか。
落ち着かない原因は音の影響が大きい。
ファミレスのテーブルは大きめなので対面の人との距離は遠めだ。
窓には大きいガラスがはめ込んである。
床はツルツルのPタイルや店舗用フロア材だ。
もちろん面積の広い天井は水平だ。
テーブルが遠いせいで誰もが少し大きめの声で話をし、その音が窓ガラスや床、天井で跳ね返るから尚更聞きづらく、更に大きな声になるから落ち着かないのだ。
つまり多くの人の声を吸音してくれるものがないからだ。
家もアパートも同じことだ。
アパートの内見に行った時はカーテンも布団もないからよく響く。
新築の家に入った時も同じことだ。
しかし荷物を運び込んで生活をする頃には、カーテンや布団などで吸音されて反響音は少し落ち着いてくる。
反響音を甘く見ない方が賢明だ。
例えばある美容室の女性オーナーが、ストレスが溜まって声が出なくなったと言われたことがある。
美容室なのでお客さんの前には大きめの鏡があり、外壁には大きなガラスがはめ込んであった。
鏡と反対側の壁は塗り壁だったが鏡面仕上げで施工がなされていた。
お客さんは鏡に向かって話をされるが、オーナーはその言葉が聴き取りにくく、つい大きな声で喋る癖がついてしまったようだった。
一概にそれだけが原因だとは言い難いが、その店舗が落ち着かないのは容易に想像できるだろう。
今は畳の部屋が少なくなり、多くの床は音が反響しやすいフロアが使われている。
床の吸音効果が高いのは絨毯やラグマットだ。
掃除がしにくいからと何も敷かないと、反響音が多くなり落ち着かない部屋になることもある。
直角の壁の隅には大きめのぬいぐるみを置くのも吸音効果に期待できる。
天井にベージュの布を吊るすのは赤ちゃんの緊張をほぐす意味もあるが、天井の反響を抑える効果も少なくない。
よく考えられたちょっとお洒落な和食屋さんに行くと、天井にそのような布が吊るしてあることがある。
他のお客さんの声を吸音する目的で反響を抑えているのだ。
そんな店は落ち着いて会話を楽しみながら食事ができる。
私の納屋の家の音環境
参考になればと思い、私がいつも音楽を楽しんでいる納屋部屋の環境も紹介しておこう。
外壁に面した窓には厚手のドレープカーテンを吊るしている。
カーテンは窓と同じ大きさではなく全体に20〜30センチずつ大きめのものだ。
ひとつの理由はカーテンを両側に引いた時、窓に干渉しないようタッセルで縛れば壁面に納まるようにするためだ。
二つ目の理由は吸音効果だ。
カーテンは厚手で大きい方が吸音効果は高い。
もちろんドレープの多いカーテンの方がいい結果が得られる。
窓だけでなくロフトにも大きなカーテンを吊ったり、ベッドの目隠しにもカーテンを吊っている。
床はタイルカーペットなので、これもフロアに比べ吸音効果は高い。
コーヒーをこぼしたりしたときの掃除はフロアに比べかなり大変だが、吸音のメリットを優先した。
そして部屋の半分を吹き抜けにして天井を高くしたお蔭で、反響音を減らす結果になっている。
落ち着かない部屋の反響音
一度部屋の中で手を叩いて反響音を確認して見るといいだろう。
反響音がストレスの原因になっていることは、意識しないと自覚できないものだ。
まさかそんなことで家族の関係が悪くなっているとしたら、改善するに越したことはないだろう。
LDKの壁付けキッチンで奥様が洗い物をしている時、旦那がテレビの音を大きくするといったことは夫婦喧嘩の種になるものだ。
シンクに吸音材を使ってないだけで、洗い物の音がテレビの邪魔をするほど大きくなるということだ。
奥様が声を掛けても、テレビの音が反響する部屋で相手の言葉がハッキリ聞こえなかったからと返事をしなくても悪い結果は同じことだ。
相手が返事をしなければつい声は大きくなる。
相手が何を怒っているのだろうと思ったりしたら要注意だ。
そんな時は部屋の音を確認してみよう。
これから引っ越しシーズンになれば新しい部屋づくりをする人も多いだろう。
春になって暖かくなれば部屋の模様替えを考える人も多いだろう。
子どもの鳴き声にストレスを感じる。
夫の声が大きくなった。
家に帰るとイライラする。
こんな時には、ちょっと音にも気を使って落ち着いた部屋づくりをしてほしい。
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