定年退職後にひとり旅をするなら…
旅の形は人それぞれだ。
誰かに自分の旅スタイルを押し付けようとは思わない。
しかし私を含め多くの人は人生でひとり旅を経験することは多くないだろう。
今日は定年退職後のひとり旅について書いてみた。
ひとり旅を最大限楽しむコツは?
私は定年退職をするまでひとり旅の経験は一度しかなかった。
それはまだ17歳だった時に経験したが、最初からひとり旅をしようと思ったわけではなく結果的にひとり旅になったものだ。
それ以降ひとり旅はしたことがない。
もちろんサラリーマン時代に一人で遠くの県に行って何泊もした経験はあるが、それは出張だ。
つまり自らひとり旅を計画して実行したのは定年退職後のことだ。
これから定年退職を迎え、ひとり旅でもしてやろうと考えている人の考えるきっかけにして頂ければ幸いだ。
ひとり旅とはどんな旅なのか
個人差はあるだろうが、定年退職して組織から離れれば人脈は急激に減衰する。
特に一人の時間が急激に増え何をしようかと考えることも多くなる。
そんな時にひとり旅でもしてみようかと思うのだ。
ひとり旅のイメージは、自由で冒険的で誰にも気を遣うこともなくどこへでも行けるといった旅だ。
だがそのイメージの輪郭はハッキリしたものではない。
実際にどんな旅をすれば楽しいのかはやった人にしか分からないだろう。
私も定年退職後に少し早く引退した先輩たちと旅行をしたからか、やはり自由に自分だけの価値観で旅がしたいとひとり旅に憧れた。
ちょうどコロナ禍になったこともあり、車中泊でひとり旅をしようと考えた。
最初のひとり旅計画は、遠くないがほとんどいった記憶のない四国にした。
車中泊が初めてだったこともあり楽しい経験になった。
四国の山中にあるRVパークで1泊し、眠れなかったが冒険欲求は満たされた。
愛媛の山中にある小藪温泉や四国カルストなどへ行き、そこそこ満足できる旅ができた。
しかし何度もひとり車中泊旅をしていると何か物足らなくなってきた。
何時間も運転しなければならない移動時間は話す相手もいない孤独な時間だ。
節約のため敢えて有料道路は使わず下道だけで移動する旅は、高速道路のように味気のない景色ではないが日本中どこへ行っても代り映えしない。
観光地や景勝地を一人で見学しても、共有する人がいないのは楽しさが半減したのと同じことだ。
もちろん食事は尚更だ。
旨いものを一人で食べてもおいしくはない。
だからどうしてもコンビニ弁当で済ますことが増えてくる。
国内の景勝地を転々と回ったとしても、ただ行ったという実績を作っているだけのように感じるようになっていった。
本来ひとり旅とは孤独なものだ。
一人なのだから当然だ。
だからひとり旅に求めるものがあるとすれば何だろうと考えてみた。
因みに私はひとり旅をして心を動かす切っ掛けにしたかった。
定年退職をして何もせず家にいると、脳がネガティブな思考に支配されて何もしたくなくなる。
ひとり旅はそんな心を前に動かすための一つだった。
旅を計画した時点で脳は前向きにしか考えなくなるからだ。
ひとり旅を楽しむには
定年退職後に旅を楽しみたいならひとり旅をしないことだ。
表題の答えにはなっていないが、私が出した一つの答えだ。
できれば夫婦や親子といったできる限り気を使わない相手と行くのがお勧めだ。
だがそれではひとり旅を楽しむ答えにはなっていない。
私がひとり旅を楽しむために気付いた条件の一つは旅のハードルだ。
少しずつ旅のハードルを上げていく努力をすることだ。
最初の車中泊が楽しいと感じたのは、旅に初めての経験を取り入れたことだ。
車中泊や下道を300キロ以上も走ることも初めてで、温泉に一人で行くのも景色のいい海岸を一人でドライブするのも初めての経験だった。
しかし二回目から初めての経験ではなくなる。
何度も経験をすることで予測できるようになるのだ。
段々と日常化してくると言ってもいい。
定年退職後に最初から日本一周の目標を立てるよりも、先ずは低い目標から徐々に高くするのが好ましいだろう。
例えば車中泊で日本一周をしてしまったらそれで終わってしまうと思うのは、国内旅でそれ以上ハードルの高い旅を思い浮かばないことにある。
車で日本一周を達成したら今度は自転車でということになるのならいいが、多くのシニアには向いていないだろう。
ましてや車中泊自体も年齢が高くなるほどリスクも高くなるので、もし始めるなら若いに越したことはない。
そして少しでも長く楽しみたいなら旅のハードルは少しずつ上げるのがコツだろう。
定年退職後に最もふさわしくない旅欲求
何のためにひとり旅をしたいのかという欲求は人それぞれだ。
都会の喧騒から離れて静かにこれからの人生のことを考えてみたいと思う人もいれば、私のように何かを始めるために心を始動させる切っ掛けにしたいという者もいるだろう。
サラリーマンではできなかったことを精一杯楽しんでみたいという人や、第二の人生を考える機会に旅をしたいという人もいるに違いない。
しかし定年退職後の欲求として最もふさわしくないのは承認欲求を求める旅だ。
「おれは定年退職してから車中泊で全国を下道で旅をしたんだ」と言って、「第二の人生を楽しんでますね」と世間の方々に認めて頂くような欲求だ。
そんな欲求を満たしたところで第二の人生が心豊かになるはずもない。
SNSで写真を投稿していいねを増やすことだけが目的のような旅のことだ。
「玩物喪志」または「走馬看花」とでも言えばいいのか、自分が求める旅の本質を見失ったかのようになる。
「そんな風に理屈をこねず楽しければいいじゃないか」と思うだろうが、ひとり旅が楽しくなくなるのだ。
本来心も前向きに動き楽しいはずのひとり旅が楽しいと感じなくなれば、それは何かが間違っている証だ。
ひとり旅が楽しくなる欲求
夫婦旅や友人と行く旅なら豪華なホテルや美味しい食事などが非日常を演出してくれる。
しかしそれらはひとり旅には相応しくない。
非日常を求めるなら初めての経験だ。
これまで経験したことがないことをひとり旅で経験してみれば非日常感は高くなる。
私はレンタサイクルや路線バスで瀬戸内海の島内を巡ったりもした。
どんな事でも初めての経験は楽しいものだ。
私は車依存の田舎生活なのでこれは新鮮だった。
しかも車だけの旅に比べ、バスの時刻表など調べることが増えるので旅のハードルを少し上げることができる。
もちろんまだ行ったことがないところに行くことも初めての経験に他ならないが、それよりも行く方法や行く道にこだわる方がお勧めということだ。
昔と違い車旅はナビさえあればどこへでも誰にも聞かずに行くことができる。
その便利さが返って旅のハードルを下げ呆気なくさせているようだ。
目的地へ行くまで何を考えることもなく呆気なく行けてしまう旅はさほど楽しくはない。
目的地までの道中にちょっとしたアクシデントがある方がひとり旅は楽しくなる。
一期一会の機会も車旅ではほとんど期待できない。
ひとり旅に非日常を求めるなら初めての経験が最も手っ取り早い。
私も初めての一人キャンプや一人早朝登山、早朝参拝、野営車中泊など車旅で初めての経験を多くしてきた。
初めての経験で非日常を味わいたいなら海外ひとり旅が最も手っ取り早い。
海外へ一人で行くというだけで既に旅のハードルはある程度高い。
最初はツアーに申し込んでもいいが個人旅行なら更にハードルを上げることができる。
カンボジアのホテルでひとり旅をしている80代の日本人女性と相席になったことがある。
その方は、「一緒に旅行してきた友達に先立たれてからひとり旅をしているが、一人で旅をするようになってからの方が元気になった気がする」と話された。
おそらく、ひとり旅をすることで心を前向きに動かしている人なんだろうと感じた。
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