♯7 司法試験、過去問演習のやり方〜答案構成とは?
※司法試験論文式試験については、「♯2司法試験論文式試験とは何者?」で詳しく書かせて頂いたので、是非こちらを読んでから本記事を読んでください!
※筆者は論文596位、全体605位で純粋未修から司法試験一発合格しました。上位合格ではなく、あくまで確実合格を目的としたnoteになりますのでその点はご留意ください。
過去問演習の意義、目的
司法試験において過去問の重要性というのは計り知れません。過去問演習の目的は大きく分けて5つほどあります。
1つ目は、最終ゴールを知ることです。私は、ちゃんと司法試験の過去問を見るまで、司法試験とは膨大な知識を覚えたうえでも悩ましい複雑な問題を解くことなんだと思っていました。
しかし、実際には、「♯2司法試験論文式試験とは何者?」で詳しく書かせて頂いたように、基本的な知識ばかりが聞かれていることに気づけます。
ひたすらボールを見ながらのドリブル練習をしても、実際の試合では相手選手を見ながらドリブルしないと意味がないように、試験本番で何が問われているのかわかってこそ、普段の練習の意義も出てくるので、初学者の人もまずは一度、過去問を見てみてください。
刑法や刑事訴訟法が見やすいと思います。そして、決して見て絶望しないでください。最初は誰も出来ません。それでいいんです。
「自分には、まだ過去問を解く力がない」、「問題を覚えてしまうから」という理由で過去問演習を始めることを避けるのは絶対に良くないです。過去問演習を後回しにすればするほど合格が遠のくと思ってください。
2つ目は、長文の問題を解く経験を積むことです。演習書と過去問の違いの一つに問題文の長さが挙げられます。過去問演習において、知らない法律や論点、‘‘美しい”事実に対する評価にばかり目が行き、事実を拾いきるという視点を、受験生の大半は持てていません。
しかし、論文式試験は、♯2の通り、長文の文の問題作成者が答案に拾って欲しい事実を拾いきること、そして全てに評価することが強く求められます。問題文を読んで書こうと思っていたけど書けなかった事実・そもそも気づけなかった事実を無いようにしたり、他者の再現答案をみて自分が拾えなかった事実に着目して、今後ないようにする経験を積んでください。
(※事実を拾い切る最強のコツは一番最後に書いてます!!)
3つ目は、‘‘誘導‘‘を落とさないということです。司法試験では、受験生がトンチンカンな方向にいかないように問題文の中に誘導があります(例えば行政法だと仮の処分については検討しなくてよい)等。過去問を解いてから問題文に誘導がなかったか探す癖をつけて、いずれは必ず誘導を見逃さないようにしてください。私は、誘導は必ず黄色の蛍光ペンで線を引くようにしていました。
4つ目は、自分の出力を知るということです。言い換えれば、①答案構成にかかる時間、②答案を書く時間でどれだけのページを書けるか、ということです(※答案構成については後ほど説明致します。)。私は、答案構成に30分の時間をかけており、30分で答案構成を終わらせれば、答案に全て書きたいことがかけました。しかし、人によっては、30分も答案構成をかけていては、答案を書ききれないという人や、反対にもっと時間をかけても書ききれるという人もいるかと思います。
そのため、過去問を解いて自分がどれくらいの時間で書ききれるのかを把握することが必要です。
なお、答案構成に30分を超えて大幅に時間がかかるという場合には、おそらく基本的知識の精度・暗記の精度が低い可能性があるので、今一度基本的知識を確認・暗記する必要があるかと思います。
5つ目は、知識を得るということです。例えばですが、行政法の原告適格等は出題趣旨・採点実感で、規範を一言一句間違えないようにと指摘されています。また、民事訴訟法の弁論主義の理由付けではこう書くようになど、摘示されています、このように、出題趣旨・採点実感で細かく指摘されているものは、言われている通りにしたら点が来ますし、言われている通りにしなければ点が来ないものになります。そのため、出題趣旨・採点実感を読み込んで、どう問われているか知るために過去問はやる必要があります。また、受験生皆過去問をやってくるので、過去問で大きく出た問題は知っておく必要が出てきます。
起案か答案構成か
過去問はよく、起案(実際に2時間かけての答案の作成)をするのか、答案構成でよいのかという議論があります。私の考えとしては、各科目2年ずつぐらい起案すればよく、後はすべて答案構成で良いと考えています。なぜなら、しっかりとした答案構成をすれば、起案が答案構成に優る点は、自己の出力を測れるという点しかないと思っているからです。。私は、どのnoteでも、「人間が本当に集中できる時間は1日2~3時間ほどしかなく、そのため、その時間を何に割り振るかが重要である」と書いています。起案をすることになれば、起案だけで2時間、さらに解説・出題趣旨・採点実感の読み込み・再現答案と見比べ・一元化ノートに落とし込む・までを考えると、軽く3.5〜4.5時間かかかってしまいます。さらに、後述するように過去問は何十問も解く必要があり、多くの人は過去問一題にいちいち3.5〜4.5時間もかけていては時間がいくらあっても足りません。
答案構成を密度高くやることで1科目30分で問題が解けるので、自身の出力を把握している人であれば、起案は不要であると私は考えています。
過去問演習は密度が全て
予備校教師も教授もX界隈もおそらく皆が司法試験においては過去問演習が重要と言っていますが、その真髄は密度にあります。
私が皆さんに言いたいのは、「過去問演習やった気になっていませんか?」ということです。密度を薄い順に並べると、
①起案or答案構成してやりっ放し
②問題みて、簡単に解説・出題趣旨・採点実感を流し読みする
③起案or答案構成+簡単に解説・出題趣旨・採点実感を流し読み
④答案構成or起案して、解説・出題趣旨・採点実感読み込む
⑤答案構成or起案して、解説・出題趣旨・採点実感読み込む+一元化ノートに落とし込む
⑥答案構成or起案して、解説・出題趣旨・採点実感読み込む+一元化ノートに落とし込む+適宜暗記カードに追加して暗記する
となります。大半の受験生が①〜④に留まっています。これが実は大問題なのです。あなたが今日の夜食べたご飯を一週間後覚えていますか?では一ヶ月後は?はたまた人生の一大イベントで極限の緊張状態である司法試験本番で思い出せてスラスラ答案に書けますか?ということです。
エビングハウスの忘却曲線をあなたは聞いたことがあるかもしれません。次の日・一週間後・一ヶ月後というように覚えるためには繰り返し見なければならないということです。
また、皆さんが全て大学受験で覚えた知識のほとんどを忘れてしまっているように、一度完璧に覚えてもしばらくたったらまた忘れてしまいます。
過去問演習をなんのためにするか、その大義としては、試験本番で活かすことにあります。つまり、過去問演習を通して身につけた知識を、自分が繰り返し見て暗記出来るような状態にまで落とし込んで初めて過去問演習といえるのです。
つまり①〜④では頑張って過去問演習してもかなり意味のないもの、効率が良くないことになってしまいます。
過去問演習には非常に多くの時間が掛かります。私は答案構成に30分、解説・出題趣旨・採点実感の読み込みに1時間、一元化ノート・暗記カードに落とし込むのに30分、トータルで2時間を目安にしていました。しかし、実際はもう少し時間がかかったように思います。しっかりと解説を読み込まないと、理解出来ないため結果としてスラスラ書ける状態にはならないからです。
もう一度言いますが、多くの受験生は①〜④で留まっています。
⑤答案構成or起案して、解説・出題趣旨・採点実感読み込む+一元化ノートに落とし込む
⑥答案構成or起案して、解説・出題趣旨・採点実感読み込む+一元化ノートに落とし込む+適宜暗記カードに追加して暗記する
まで必ずやるようにしてください。無論私のオススメは⑥です。これをしないと過去問演習の意義は7割減すると思ってください。逆にやれば必ずあなたの血肉となり必ず周りと差がつきます。
過去問どれだけ解けばいいの?
私は、令和5年度の受験生なので、過去問は新司法試験で17年分ありました。17年分✗8科目=126問を2周するだけでも、252問になります。1問につき、⑥の[答案構成30分+解説出題趣旨採点実感読み込み60分+暗記カード・一元化ノートへの落とし込み30分]で行うとして2時間かかるので、計504時間かかることになります。
実際問題これに加えて演習書・短答・暗記を行う必要があるため実際これほどの時間を用意するのは不可能に近いですし、そもそもこれだけやることは求められていません。
”過去問演習については、過去問の数よりも、密度=質を取りに行かなければ血肉にはならない”です。
では実際どれだけやれば受かるのか具体的に言いますと、7科目において、加藤ゼミナールの加藤先生のブログに書かれている司法試験の過去問の優先順位ランク付けに従って、AランクとBランクの過去問を、⑥かつ私のnoteのやり方でAランク2周+Bランク1周できれば確実に合格出来ます!確実にです。
令和6年度で見ると、プレを除いて、憲法14問(A8B6)・行政法15(A8B7)問・民法13(A7B6)問・商法16問(A10B6)・民訴法12問(A5B7)・刑法14問(A9B5)・刑事訴訟法13問(A8B5)
で、Aランク55問、Bランク42問、AB合計97問でした。単純計算で過去問演習に(55問✗2周+42問)✗2時間=304時間かかるということになります。
ちなみに、私はAランク全問+Bランク各科目5問でやろうと思い、その途中の50問ぐらい解いたぐらいで本番を迎え(Aランク2周目の途中、全然計画通りに出来ませんでした…)、本来予備を受けてるはずの在学中優秀層もいるはずの令和5年で論文596位でしたので、十分すぎるのがAランク2周+Bランク1周になります(多分やりすぎオーバーキル・・)。
なので、このNoteを読んで下さった段階で304時間もないや、やり切れないよ、ということでしたらまずはAランク2周を目指してください。Aランク2周でも密度濃くやれれば確実合格できるレベルになるはずです!
※加藤ゼミナール加藤先生の司法試験ランク付けブログ
なお、選択科目については、私の場合は国際私法選択で、演習書がなかったため、過去問を演習書代わりに17年分✗2周しました。結果国際私法は47点と8科目で一番低かったので、3周するか、演習書なにかやれば良かったかもと思っています。
答案構成
司法試験は、1科目2時間あり、緊張感等から、頭の中で思い浮かんだことを答案に書き忘れたりすることがめちゃくちゃあります。それを防ぐためにするのが答案構成です。簡単に言えば、答案のプロット・簡易版シナリオです。問題文を読むのと答案構成で合わせて30分になります。30分は目安で自身の答案を書くペースに合わせて、適宜答案構成にかける時間を修正してください。
ナンバリングを振ったミニ答案を作る
問われている論点の名前を書き出す
問題文のうち答案に拾いたい事実すべてにつき、番号を振った上で(①____のように)、答案構成にその番号を記す。
④黄色い蛍光ペンでマークした問題文の”誘導”を最後に見て、誘導に答えているか確認する
この4点をしっかりやって頂ければ、必ず深い答案構成が出来るようになります。私は、3番の[問題文の事実に番号を振って、答案構成に番号を書く]ということをするまで、問題文を読んでいるときは気づいていたのに拾い落とした事実やそもそも気づけなかった事実が多くあり、伸び悩みを感じていました。しかし、3番をやるようにしたら、事実を拾い落とすことがなくなり、雪だるま式に点の伸びる答案が書けるようになったので絶対やってください!
(この3番をあなたに伝えるために#7を作成していると言っても過言ではありません!)
私は、最初この答案構成を作るのが凄い苦手で、書きながらじゃないと答案書けなかったのですが、ひたすら練習すると出来るようになりました。自分には合わないとめげずに続けて欲しいです。
答案構成せずに答案書き始めるのは非常に不合格のリスクが高いと思ってください。
過去問演習はいつから始めればいいの?
逆算的な言い方になりますと、上記のAランク2周+Bランク1周が⑥の密度の濃いやり方でかかる時間(304時間)を、司法試験本番までに終わらせられるタイミングということになりますが、なかなか読めないと思うので、各科目の演習書(論文マスターやアガルートの重問、市販ですとサブノート)1冊を3周出来たら始めていいと思います。始めたときはわからないことばかりでメンタルにくると思いますが、皆苦しんでいるし、苦しんでいない人ははっきり言って密度のない過去問演習をしているに違いないので、安心して苦しんでください。
過去演習の教材は?
多くの受験生は、『加藤ゼミナールの司法試験過去問講座』か、『辰巳法律研究所の論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本』をつかっていると思います。
加藤ゼミナールは細かい論点まで説明が分かりやすく、これさえやっていれば合格には必要すぎる知識が付きます(若干オーバーキル感もある・・)。また、講義なくとも本だけで十分学べると思います。
『辰巳法律研究所のぶんせき本』は、私的には解説の日本語が少し読みづらったのですが、各問題につき10人ほどの再現答案が乗っているので再現答案を色々みたい人には有用であるかと思います。
最後に
おさらいすると、暗記カードor一元化ノートまで落とし込むまでやって欲しい・答案構成習慣付けて欲しい・Aランク2周で合格できる!という内容でした。
note助かるな、有用だな!と思って頂けたら、是非大事な友人に私のNote広めてくれたり、Twitterのフォローやファボ頂けたら本当に本当に嬉しいです!(笑)
なにか、相談事や、質問等ありましたら是非DMしてください。心よりあなたの合格を願っています!