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【インタビュー#01】元小学校英語講師がレンタルスペースで育んだ理想の働き方
女性にとって、結婚や出産、子育ては人生の大きな節目。環境が変わるたびに立ち止まり、自分の働き方や生き方について考えることも多いのではないでしょうか。
子どもの成長を日々嬉しく感じながらも、ふと「私だけ何もしていないのでは」と思う瞬間がありました。新しいことに挑戦したいと思いながらも、家庭を優先して自分の気持ちを後回しにしてしまい、「本当は何がやりたいんだろう」と自問自答するばかりの日々……。
そんな中、子育てをしながらも新たな一歩を踏み出した女性に出会いました。その方も私と同じように葛藤していた時期があったと話してくれたのです。
悩みながらも挑戦するありのままの姿をインタビューを通してお届けします。今まさに悩んでいる方が、未来に向けた小さな一歩を踏み出すきっかけになりますように。
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インタビュー1人目は、元小学校英語講師で3人の子どもを育てながら、沖縄県那覇市で「レンタルスペースL'Albero(以下、アルベロ)」を運営する新垣さゆりさんです。
利用者の新しい可能性を広げる場所としてアルベロをスタートさせて人との出会いが増え、自分の存在価値を見いだし、子どもたちの自主性を育む大切な場所を作り出し、アルベロと共にご自身も成長しています。
出産をきっかけに新しい働き方を模索
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以前は小学校で英語講師をしていた新垣さんは、第二子を出産後、小学校には戻らず新しい仕事を探したそうです。
「飲食店で働く夫は夕方からの出勤や週末勤務もあるので、私が平日フルタイムで働くと、夫と顔を合わせる時間がほとんどなくなってしまうんです。子どもとの時間も夫婦の時間も大切。常に家族とコミュニケーションを取り合っていたいから、平日フルタイムで働く英語講師は諦めようと思ったんです」
将来的には、レストランを持つことが夢だというご主人をサポートしながら、ご自身の語学力を生かせる仕事を探しました。しかし、家庭との両立を考えると、なかなか条件に合う職場が見つからず悩んだといいます。
「今までのキャリアを無駄にしたくない。でも、家庭を優先することが大切だと思い、悔しい気持ちもありながらやりたい仕事は諦めることにしました」と語る新垣さん。そんな中で「好きな時間に働ける場所を自分で作ろう」と思い立ち、レンタルスペースの開業を決意されました。
“開業”と聞くと、ためらう人は多いと思います。そんな新垣さんの後押しをしたのが、ご主人でした。漠然としたイメージをご主人に伝えると、家具や備品を一緒に考えて、購入してくれたそう。ご主人と内装作業も行い、夫婦二人三脚で開業まで進めたそうです。
アルベロマーケット ~多様な出会いが生まれる場所~
アルベロは、1部屋を1時間単位で借りられるレンタルスペースです。ママ友と集まる場所に使ったり、各種レッスンや講座会場に利用されたりと、自由な使い方ができます。
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新垣さんは人との出会いを大切にしようと、いくつかイベントを企画しています。
「おしゃべり会」という気軽な交流イベントでは、移住者の方も多く参加し、友達づくりの場として好評です。初対面同士で話が弾み、仕事を一緒にするようになった方もいるそうです。
また、定期的に開催している「アルベロマーケット」では、多彩な業種の出店者が集まり、訪れたお客さんはお試し価格でさまざまなサービスを楽しめます。
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新垣さんへのインタビューとは別日に、アルベロマーケットを取材するため訪れました。
赤ちゃん向けのベビーマッサージレッスン
ドライヘッドマッサージ
アロマスプレー作り
小物販売
多岐にわたる出店がありました。
「普段だったら出会えないような人たちがつながれる場所にしたいと思っているんです。同じ空間だからいろんな体験を“ハシゴ”できますよね」
新垣さんの期待通り、取材目的で訪れた私も、お試し価格に惹かれてヘッドマッサージを受け、他の出店者と楽しくおしゃべり。会場の空気感が居心地よく、気づけば時間が過ぎるのを忘れるほどでした。
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「お子さんと一緒に出店する方もいて、この自由な雰囲気がアルベロマーケットの魅力。出店者や参加者から『ここで素敵な人と出会えた』と言ってもらえると、私自身の存在意義を感じられて心が満たされるんです」
主催者も出店者も参加者も笑顔になれる、三方よしの心地よい空間でした。
キッズマーケット~子どもの自主性を育む特別なイベント~
アルベロにはもう一つユニークな催しがあります。それが「キッズマーケット」です。ここでは、子どもたちが「店主」となって自由に出店できるんです。
きっかけは、新垣さんがアルベロマーケットを開催した際のこと。小学校入学前の春休み中で子どもの子守りに悩む中「出店してみる?」とお子さんに提案したのだそうです。
「大人たちの出店者の中に、肩たたきセラピストとして出店させたら楽しかったみたいで。来場した方々からも『子どもに肩をたたいてもらうと、心がほぐれて癒されるね』と好評でした。これを他の子どもたちにも経験させてあげたいと思って、イベント化しました」
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肩たたきの対価として実際にお金を受け取ったお子さん。お客さんから感謝され、その喜びが自己肯定感につながったようです。新垣さんも「子どもが家族以外の大人と積極的に会話し、肩たたきをしている姿に成長を感じ、胸が熱くなりました」と話してくれました。
子ども主体のイベントでは、想定外の出来事が起こるのも日常茶飯事。企画をする上で大切なのは「規定を細かく決めないこと」だと言います。
「子どもたちは体調の波もあるので、当日キャンセルもOKにしています。疲れたら早退も自由ですし、逆に最後の1時間だけ出店するのもOKです」
この柔軟な対応が無理なく参加できる理由の一つです。
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キッズマーケットでは、子ども店主が思い思いにお店屋さんを楽しみます。フリーマーケットを開く子、お菓子の手づかみゲームをする子、大好きな生き物について説明会を開く子もいます。自分でポップを作ったり、商品説明を工夫する姿は、まさに自主性そのもの。
新垣さんは、子どもの自由な発想を大切にしています。さらに、子どもたちがインスタライブを使って出店の様子を紹介することもあり、遊びの延長線上で貴重な経験が積めるのもキッズマーケットの魅力です。
「うちの子は稼いだお金で、私たち夫婦にプレゼントをしてくれたんです。肩たたきで得たお金を持って『買い物に行きたい』と言われたけど、その日は行けなくて、次の休みにおばあちゃんが連れて行ってくれたんです。
その後、帰ってくるなり『ママにプレゼント!』と満面の笑みでネックレスとヘアゴムを渡してくれました。お年玉ではなく、自分で稼いだお金で贈ってくれた。肩たたきで人を喜ばせる経験をして、その喜ぶ姿を見て自分も嬉しいと認識できたんだと思います」
そんなお子さんのエピソードを語る新垣さんの表情は、とても穏やかで優しいものでした。
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新垣さんご自身も、お子さんも「人を喜ばせること」に時間と労力を惜しまない温かい人柄。きっと、お子さんは親の背中を見ながらその心を受け継いだのでしょう。
キッズマーケットは、そんな親子の愛情があふれる場所。子どもたちが成長し、自信をつける場として、これからも多くの親子の笑顔を生み出していくことでしょう。
子ども向け英語教室 ~小さな自信を育てる場~
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新垣さんが小学校で働いていた時、1年生から6年生までの全てのクラスで英語の授業を担当していました。しかし、教育の現場から離れていた2020年度から、英語必修化が小学3年生からになったそうです。
「英語に触れる年齢が遅くなったことを知り、勿体ないと残念に思いました。もっと早くから英語に触れ、小さな自信を持ったまま学校での学習につなげてほしいと思い、英語教室を始めたんです。
まずは好きな音楽を聴きながら、身近に英語があるのを知ってもらうことからスタートしました」
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インタビュー中に、突然「ハ~イ!」と元気な声が聞こえました。英語教室に通う男の子が、少し早めに到着したようです。部屋に入るなり見せてくれたのは、ハロウィン仕様の可愛らしいコップ。これは英語で会話しながら作ったもので、男の子はとても誇らしげでした。
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「学校だと、どうしても集団向けの授業になります。一人ひとりの理解度に合わせるのは難しいんですよね。でも、少人数なら一対一で会話を楽しめるし、季節の行事に合わせてこんな制作物も作れるんです」
そう言ったあと、育児中に起きたハプニングを男の子のママと話し合っていました。そんな場面を見ていると、英語教室に子どもを送り迎えする親もまた、この場所を楽しみに訪れている印象を受けました。
利用者の選択肢を広げながら、家族の心も豊かに
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子どもたちと一緒にアルベロの清掃をしたりと、仕事と子育てをあえて切り離さないスタイルで取り組んでいます。
「楽しそうに働く姿を見せたいんです。1番上の子は『大きくなったらママみたいに、人と出会える場所を作りたい』って言ってくれるんですよ。
いろんな働き方があることを知ってほしいし、やりたいことが見つからなければ自分で作ればいいんだよって伝えています。何をしているときに自分が嬉しく感じるのか、よく子どもたちと話しますね」
新垣さんは、この場所で出会った人たちが、自分にとって大切な宝物になるとは思っていなかったと話します。自分がやりたいと思って始めたのに、気づけばたくさんの温かさや支えをもらっていたそうです。
今後の目標は「大人の学びの場」を作ること。レンタルスペースで培った人脈を生かし、スキルを教え合いながら、孤独になりがちな個人事業主同士が励まし合えるコミュニティづくりを目指しているそうです。「周りの人と一緒に成長し、互いに支え合える場所を作りたい」という言葉には熱意が溢れていました。
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インタビューやイベント取材を通じて、あることがはっきりと分かりました。それは「新垣さんの周りにはいつも笑顔が溢れている」ということです。
レンタルスペースの名前である「L'Albero」はイタリア語で「木」という意味。その名前の通り、ここはまるで木漏れ日のように心がほっと温まる、そんな憩いの場所でした。新垣さんが手がけるこの場所が、多くの人の新しい挑戦を支え、さらなる笑顔を広げていくでしょう。
レンタルスペースL'Albero(アルベロ)
沖縄県那覇市真嘉比2-14-19 コーポラスさとB1
TELなし/無休
営業時間:9:00~20:00
駐車場:4台
▼公式Instagram
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