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【インタビュー#02】転勤族の孤独と、子どもの発達を支える道のりで巡り合った保育法

女性の人生は、結婚や出産、育児など、何度も環境が大きく変化する瞬間があります。
結婚を機に仕事を変えたり、引っ越しをしたりと、一度にたくさんの変化が訪れることもありますよね。

さらに、子どもが生まれると「うちの子、ちゃんと成長しているのかな?」「周りのお子さんは離乳食をよく食べるみたいだけど、うちは全然食べなくて心配...」「貧血は大丈夫かな?語彙力は?」と、次々と新しい心配事が出てくるものです。

たとえ「大丈夫」と言われても、漠然とした不安が消えない日々を過ごす方も多いのではないでしょうか。

そんな中で、自分の子どもの発達にじっくりと向き合い、心から納得できる育児スタイルを見つけ、その経験を発信している女性に出会いました。



インタビュー2人目は、清水みおさん。

MILILI(ミリリ)代表の清水さんは「さくら・さくらんぼ保育」やリズム遊びの魅力を発信している方です。2024年7月からは親子で楽しめるリズム遊びのイベントをスタートし、毎回20人ほどの親子が参加しています。

学生時代はカナダへワーキングホリデーに行くなど、英語漬けの毎日。中学校と高校の英語教員免許を取得し、英語を軸にキャリアを積んできました。

沖縄県出身の清水さんですが、新卒で東京へ上京し、英会話スクールで9年間勤務。その後、結婚を機に愛知県へ引っ越し、さらに2回目の転勤で現在は千葉県に住んでいます。

転勤族として、慣れない土地で子育てをしています。親や友人が近くにいない暮らしのなか、さらに子どもの発達に悩みます。「私の子どもには何が必要なんだろう?」と模索し、そんな時に救ってくれたのが「さくら・さくらんぼ保育」でした。

自分自身の経験から「この活動を通して子育てに悩むママが少しでも笑顔になれる場を作りたい」そんな想いで活動を続けています。


環境の変化に翻弄される子育て


――沖縄→東京→愛知→沖縄(里帰り)→千葉と、頻繁に引っ越しされていますが、転勤族の子育てはどうですか?

大人でも新しい環境に慣れるのは時間がかかりますよね。本当に子どもたちは頑張ってるなって感じます。

特に保育園が変わると、慣れ親しんだ場所や友達と離れるストレスが大きいんじゃないかな。だからこそ、子どもたちの気持ちに寄り添いながら、たくさん話すことが大切だと思っています。

うちの長男は現在、年少クラスですが、今までに3回保育園が変わりました。「仕方ないよね」と思いつつも、親の都合で振り回してしまっているなと感じます。もし転勤がなかったら、こんな思いをさせずに済んだのかなって考えちゃうこともありますね。

――転勤族で楽しかったこと、辛かったことは何ですか?

正直、楽しかったことはありません(笑)

辛いのは、家族や友達が近くにいないことです。何かあった時、すぐに頼れる存在がいないのは本当に心細かったですね。

SNSで友達の楽しそうな様子を見ると、辛くなることもありました。友達みんなが遊んでいるのをインスタグラムで知ったり、同世代のいとこが親に子どもを預けている話を聞くと、私だけ孤独なんじゃないかって思ってしまって…。

ある時、母に「いとこの子どもたちと動物園に行ってきたよ」と言われて、もう連絡を断ちたいと思うほど気力を喪失してました。その頃は、精神的にも限界だったんです。周りを頼ったら?とも言われたけど、当時はコロナ禍で気軽に交流することも許されず、ましてや頼れるほど親しい人が周りにいなくて…。

でも、ずっと悩んでいても仕方ないから、全力で頑張るのはやめようって決めたんです。例えば、子ども優先で家事は後回しにして「6割くらいで頑張ろう」と自分に言い聞かせるようになりました。

地元から離れて暮らしているからこそ、一緒に時間を過ごせるのは子どもだけ。その時間を「幸せだな」って感じられたら、この場所でも楽しくやっていけそうだと思えたんです。

子どもの発達で悩み「さくら・さくらんぼ保育」を取り入れる


――「さくら・さくらんぼ保育」との初めての出会いは?

初めて出会ったのは中学生の職場体験です。叔母が「さくら・さくらんぼ保育」を取り入れている園で働いていて、そこで体験をしました。その時は「こんな保育があるんだ」くらいにしか思っていなかったんです。

「さくら・さくらんぼ保育」は生物の進化の法則に沿って創られた子どもの前面発達に大切な土台をしっかりとつくる保育。埼玉県の『さくら・さくらんぼ保育園』を創設された故・斎藤公子先生が発案。

身体を鍛える(自然あそび、リズム遊び、雑巾がけ、ハイハイでの斜面登り)
感覚を鍛える(布おむつ、裸足保育)
食育(旬の食材、咀嚼力を鍛えるため5部付き米、食器は陶器や木のお皿を使用)

リズム遊びでは、ピアノの音に合わせて親しみのある動物の真似をし決まった動きで全身運動を楽しみます。

MILILIインスタグラム

――自分のお子さんに取り入れたきっかけは?

長男を出産して、何をして過ごそうかと考えた時「さくら・さくらんぼ保育」を思い出しました。当時は知識が少なかったため、自宅で簡単に取り入れやすいリズム遊びから始めたんです。

長男は生後8か月ごろから成長がゆるやかになり、1歳の時に大学病院での受診を薦められました。初めての育児で心配ばかりなのに、相談相手もいなくて一人で悩んでいました。

そのあと、次男の出産のために里帰りで沖縄県に戻り「さくら・さくらんぼ保育」の実施園に通わせると、半年で身長が4cm、体重が1.8kg増えたんです。その前の半年は身長2.6cm、体重0.6kgしか増えていなかったので、本当に驚きましたね。

「さくら・さくらんぼ保育」のリズム遊びや自然遊びのおかげで、ご飯をしっかり食べるようになって、体重が増え、身長も伸びたんだと思います。

体を動かすのが好きなので、里帰り中も頑張って通園してくれたそうです!

――里帰り出産した次男も、発達について悩みがあったそうですね。

はい。次男は「先天性両足内反足」という病気です。
生まれた直後、医師から「処置が必要だから会えない」と言われ、すぐにネットで病気について調べました。産後の疲れ切った状態でしたが、ネットで出てきた情報を読み漁って、一睡もできない夜を過ごしました。

【先天性両足内反足】
生まれた時から足全体が内向きで、足くびが硬く、正常な形にもどせない病気です。軽症では、足を外向きに戻そうとすると、真直ぐに近くなりますが、重症では、ほとんど動きません。

神奈川県立こども医療センター
生後7か月ごろまで、お風呂以外はずっと装具着用だったそうです。

次男の病気はもちろん心配でしたが、実は、長男を思うと涙が止まらなくて…。次男の病気で、まだ幼い長男に我慢させることが増えるのではないかって。

次男が足を固定されている姿を見るのも辛かったし、毎週のギブス交換や生後1ヶ月には入院手術もありました。通院で人手が必要だから沖縄県に残ることも考えましたが、夫と何度も話し合って「家族は一緒にいよう」と決めて愛知県に戻りました。

戻ったあと、長男と次男の発達をサポートするために「さくら・さくらんぼ保育」の実施園に通わせたいと思いました。でも住んでいる地域には通える園がなくて…。それなら自分でやろうと決意し、家で出来ることを本格的に取り入れたんです。

親子に笑顔をもたらす「リズム遊び」の力

清水さん主催のリズム遊びイベントの様子

――活動を広げていくまで、どんなステップがありましたか?

最初はお家で「さくら・さくらんぼ保育」を自分の子どもだけに取り入れていたのですが、次第に少しでも多くの方に知ってほしいと思ったんです。近くの保育園にも取り入れてもらえたらいいな、という気持ちでMILILI(ミリリ)を立ち上げ、インスタグラムで発信しました。

そのあと「実際にリズム遊びを体験してほしい」と思い、アカウント開設から半年後に初めてのイベントを開催しました。今までに計5回開催し、毎回20人ほどの親子が参加してくれています。

――イベントにはどんな人が参加しているんですか?

参加者の半分は「さくら・さくらんぼ保育」に興味を持っている方たちですね。中には片道1時間かけて来てくれる方もいます。

もう半分は、子どもの発達に悩んでいるママたちです。「子どもの成長が気になる」「家でできることを知りたい」という思いで参加してくれる方が多いです。

――活動を続ける理由は何ですか?

まずは、子育てに悩むママたちに届いてほしいからです。
育児って、発達の悩みに限らず、誰でも不安や迷いがあるものだと思うんですよね。イベントを通して、少しでも同じ境遇のママたちとつながるきっかけになればいいなと思っています。

もう一つは、私自身のためでもあります。
転勤族で、慣れない土地での子育ては孤独を感じることが多かったんです。でも、イベントを続ける中で親子の笑顔に出会い、私自身も横のつながりができました。心を許せる場所が増えることで、転勤族の生活も前向きに過ごせるようになりましたね。

参加者のご感想:「まずは親が楽しむ!という自由で温かい雰囲気にホッとしました」

想いを形に ~「ミリリ」の挑戦~


――今後の目標はありますか?

リズム遊びイベントをもっと頻繁に開催していきたいです。
また、2025年からはオンラインレッスンにも挑戦したいと考えています。遠くに住んでいる親子にも気軽に参加してもらえるような形を目指しています。

――オンラインレッスンは、どんな人に参加してほしいですか?

イベントに参加したくても遠方で難しい方や、子どもの発達に悩んでいるママたちに参加してほしいですね。でも発達の悩みに限らず、育児の中で不安なことがあれば話を聞く時間も作りたいなと思っています。1対1なら話しやすいこともありますよね。

私自身、近くに相談できる人がいなくて辛かった経験があるからこそ、誰かの力になれたら嬉しいです。

あなたへメッセージ ~頑張りすぎないで~


――転勤族や慣れない土地で子育てをする人へ、伝えたいことはありますか?

「助けて!」と声にするのって、実際はすごく難しいですよね。でも、自分のハードルを下げられるのは自分だけだから、ゆる〜く子育てすることが大切だと思います。

周囲に頼れる人が少ない分、夫婦の絆はきっと強くなるはずです。お互いに感謝や尊敬の気持ちを、ちゃんと言葉にして伝えてほしいなと思います。

一人で抱え込む前に、自分を少しだけラクにしてあげてくださいね。



転勤族で環境の変化がありながら、子どもたちにできることを真剣に取り組んでいる姿に感銘を受けました。

自分が辛かった時期があったからこそ「1人でも多くの親子に笑顔になってほしい」と話す清水さんの表情は力強く、凛としていました。

心意気の折れそうな孤独や不安と何度も向き合い、くじけず堂々と振舞う姿は、これからもたくさんの親子に勇気を与えていくでしょう。

インタビュー後には、オンラインレッスンの体験をさせていただきました。

ぎこちない私に、ずっと笑顔で教えてくれました!

清水さんは童謡を歌いながら、赤ちゃんへの声かけや体を触るときのポイントを丁寧に教えてくれました。また、日常生活の中で簡単に取り入れられるリズム遊びもいくつか教えてくれました。

筆者である私自身3人の子どもを育てていますが、子ども一人ひとり性格が違い、悩みは尽きません。相談できる場が一つ増えるだけでも、子育て中のママにとって大きな安心感につながります。
このレッスンは子どものためだけでなく、ママの心を軽くする時間でもあると実感しました。

清水さんのさらなる活躍を心待ちにしています。


▼MILILI公式インスタグラム


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ゆめ|インタビューライター 沖縄
【取材費に使わせていただきます】”挑戦したいけど悩んでいる女性”に届くインタビュー記事を、なるべく多く書いていきます!