木と日光と実家

悶えるほどの暑さ、ニュースになる大型台風、家の前で生き絶えたセミを避け、日焼けを気にしながら会社向かい、着くなり小型扇風機をぶん回す日々。
そんな日が始まると同時に来る、毎年恒例の夏季休暇。
そして恒例の大阪帰省。

もはや8割義務化したこの行事も慣れたもので、東京駅に向かう電車の中でさらっと新幹線を予約し、新幹線に駆け込み乗車。

今年も私なりの限界である3泊4日の帰省を予定し、実家の帰路についた。

年始に祖母の家に引っ越した実家は、人口過密だった家とは打って変わって部屋が余りに余った快適空間。

しかし今年のお盆はさらに一味違った。
大広間に入った瞬間、ふわっと新品の家具の匂い。
目の前には、木目の入った洒落た木のテーブルと、シックな長椅子が構えていた。

陽が射し込む椅子へ腰掛け、思わず写真をパシャリ。
お気に入り空間に浸るというより、友達を家に入れるのが恥ずかしいぐらい狭かった実家の変貌ぶりに、戸惑う自分がいた。

母と父それぞれから、家具購入までの苦労話を聞きながら、学生の頃からこんな環境だったらな〜としみじみ。
あの頃は誰も余裕がなかったし、丁寧な暮らしとは無縁の生活をしていたし。
余裕がない中のギチギチな暮らしが嫌すぎて、これまで帰省しても逃げるように東京に戻っていたなと思い返していた。

今の家はとにかく快適。
家族と喋りたい時は長椅子に座ればいいし、1人でいたい時は居間にいけばいい。
血が繋がっていても、適度な距離って本当に人を豊かにする。

そんな今回の帰省は、7日も居座って。
一丁前に、お気に入りの場所なんか見つけて。

ちなみにその場所は、南向きのでかい窓に面した長椅子。
陽がたっぷり射し込み、長椅子にクッションを置いて寝そべりながら本を読んだり映画を見たり。
小屋みたいな東京の家では絶対味わえない贅沢空間を楽しむことができた。

実家で寛げないって、結構自分の中で焦ってたというか、コンプレックスでもあったけど、今は安心して実家に帰れる。そして、ぜひ仲良い友達や大切な彼氏にも来てほしいと思える家だ。

別に私の努力でもなんでもないけど、それだけ身近な場所がお気に入りになったのは、自分の人生に余裕ができると実感した。

それだけで心に余白ができる。
人に優しくできる。拠り所があるというのは、人生の余裕に繋がるのだ。

東京帰りたくねぇ