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実践から学ぶ地方創生と地域金融

地域に根付いた金融機関、地元の企業や市民、そして地方自治体の連携や協働で進められている地方創生プロジェクトから11事例を選び取材しました。持続可能な地域事業を実現するためのファイナンスのスキームや、ステークホルダー同士の関係構築の裏側に関心のある方に読んでいただきたい一冊です。

著者は、日本銀行で金融機関の支援に長年取り組まれたのちにコンサルタントとして独立された山口省蔵さんと、東京を拠点に全国各地で地域プロデュースを手掛けられている江口 晋太朗さんです。

旧来のあり方からの脱却を目指す地域金融機関の意欲的な挑戦のありようを、金融視点一辺倒の硬質な専門書としてでなく、事業者や市民、行政の観点も踏まえた都市・まちづくりの読み物として形にできないか――。
そんな構想を、書籍『強い地元企業をつくる』の制作を通じて知り合った但馬信用金庫の宮垣健生さんにご相談したことが企画の端緒になりました。
そこで、当時日銀の金融高度化センターに勤められていた山口さんをご紹介いただき、ちょうど同じころに近い方向性で一緒にアイデアを練っていた旧知の江口さんも交えて構想を共有。2年前の夏から世代の違う3人で毎週のように議論し、取材を重ねました。

全体は2編構成。
メインとなるプロジェクト紹介編では、鹿児島県長島町が鹿児島相互信用金庫との協働で創設し他地域での導入も進む教育融資制度「ぶり奨学プログラム」のスキーム、スイデンテラスなどを手掛ける事業会社ヤマガタデザインを中心とする山形・庄内地域のまちづくりの取り組み、飛騨信用組合が推進する電子地域通貨さるぼぼコイン実装の裏側、瀬戸内海7県の地域金融機関が競合関係を超えて協働している広域連携DMO「せとうちDMO」の事業展開など、注目度の高い事例について詳しく紹介しました。
後半の金融トピックス解説編では、地域プロジェクト展開の際にポイントとなる金融面の知識や主要なキーワードについて、山口さんになるべく平易にまとめていただきました。

コロナ禍を受け、各地の事業者が苦境を強いられるなか、地域金融機関は当面の資金繰りを支えるべく緊急的な融資を積極化させています。
挑戦的な事業への投資はまだ難しい局面にありますが、今後復旧・復興の局面に差し掛かってくるにつれ、再び地方創生の旗印のもとで、まちの活力を取り戻すための意欲的なプロジェクトが求められてくるはずです。
本書は、その構想のためのヒントになると信じています。

内容紹介

まちの持続可能な経済循環は、地域資源を活かした課題解決に取り組む事業者や行政と、受け身の体制を脱し創造的な支援や連携を目指す地域金融機関の協働から生まれる。本書では各地の意欲的なプロジェクト11事例を取り上げ、背景にあるキーパーソンやステークホルダーの関係性を紐解き、事業スキームのポイントを解説する。

著者紹介

山口省蔵
株式会社金融経営研究所 所長。2018年に金融機関向けのコンサルティング会社として同社を設立。元・日本銀行 金融高度化センター 副センター長。日本銀行在職中は、金融機関職員向けに新たな事業金融手法に関するセミナー等の企画を担当した。共著書に『営業店マネジメントの実務』(経済法令研究会)、『信用保証制度を活用した創業支援』(中央経済社)。

江口晋太朗
株式会社トーキョーベータ代表取締役。編集者、ジャーナリスト、プロデューサー。各地の地域プロジェクトの取材・執筆経験多数。金融庁や信用組合関係者で構成する「シビックエコノミーと信用組合の新しい関係に関する研究会」メンバー。
著書に『孤立する都市、つながる街』(日本経済新聞社)、『日本のシビックエコノミー』(フィルムアート社)ほか。

目次

〈プロジェクト紹介編〉
Scene 1 地域資源を発掘・活用する

Case 1:田舎ベンチャービジネスクラブ
行き詰まる事業者の連携と6次産業化を主導
信用組合のリーダーシップ
―秋田県信用組合

Case 2:秋田風作戦
厄介な気候条件を資源に転換
地銀が主導した冒険的な発電事業
―北都銀行

Keyword 1|基金

Column 1-1|試行錯誤が続く地域ブランディング

Case 3:谷根千まちづくりファンド
地元金融機関による古民家再生への投融資
MINTO機構と連携して支える民間のまちづくり
―朝日信用金庫

Keyword 2|相続・遺贈寄付

Column 1-2|リノベーションとエリアマネジメント

Scene 2:地場産業の新展開に伴走する

Case 4:豊岡カバンストリート
融資からプロデュースへ
ネットワークを活かした地場産業ブランディング
―但馬信用金庫

Column 2-1|関係人口を意識したコンテンツ誘致型地域おこしの実践と課題

Case 5:庄内インキュベーションパーク
まちぐるみの出資を促進
知的産業を軸にした民間主導の地域振興
―山形銀行

Keyword 3|事業承継

Scene 3:次世代の担い手に投資する

Case 6:ぶり奨学プログラム
帰郷して就職・起業すれば返済不要
地域の思いを原資とした教育融資制度
―鹿児島相互信用金庫

Keyword 4|地方創生人材支援制度

Column 3-1|民間主導の奨学金事業がもつ可能性

Case7:家庭円満51
若年層の支えとなる金融商品を
地元事業者も巻き込んだ住宅ローンの開発
―塩沢信用組合

Keyword 5|ふるさと納税

Column 3-2|従来の枠組みを超えた学習・教育手法の出現

Scene4:域内の経済循環を促進する

Case8:さるぼぼコイン
つながりが地域経済のインフラに
まちと事業者を育てる電子通貨開発
―飛騨信用組合

Keyword 6|地域通貨

Column 4-1|ソーシャルビジネスを主導する組織体とそれを支える仕組み

Case9:リレーションシップキャピタル
コミュニティにアプローチする原点回帰の事業支援
―第一勧業信用組合

Column 4-2|社会的インパクトを重視した事業評価の拡大

Scene5:持続的な観光基盤をつくる

Case10:WAKUWAKUやまのうち
創業リスクを負担し地域の面的活性化を担う観光まちづくり会社の設立
―八十二銀行

Keyword 7|オーバーツーリズム

Column 5-1|観光の形を変えるインフラ・プラットフォーム

Case11:せとうちDMO
競合関係を超えた産官金協働による広域連携DMOの設立と展開
―瀬戸内海7県の地域金融機関

Keyword 8|DMO

Column 5-2|過渡期にある観光政策のトレンド

〈金融トピックス解説編〉

Topic1:金融機関とプロジェクトファイナンス
Topic2:金融機関の経営
Topic3:金融機関による融資
Topic4:金融機関とフィンテック
Topic5:金融機関による事業者支援

紙面見本

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書誌情報

体 裁 A5・240頁・定価 本体2400円+税
ISBN 978-4-7615-2748-8
発行日 2020/09/15
装 丁 中川未子(よろずでざいん)

企画・編集 松本優真

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