圧勝劇の裏では…
2015年に混戦の末にヤクルトがセリーグを制して以来、2016年から今年まで3年続けて広島が独走する形となっています。
形だけ見ると今年も広島の圧勝という形ですが、少し各種数字を眺めてみると、過去2年に比べその強さに陰りが出ているように感じます。
それを如実に表しているのが、得失点差でしょう。
2016年は+187、2017年は+196でしたが、今年は9/22現在で+69となっており、過去2年に比べ100以上減少しています。
この数字には、例年に比べてリーグ全体が打高気味なのもありますが、投手陣の不振が大きく響いているように思います。
とりわけ過去数年の圧勝劇にも関わらず、意味のないリリーフ酷使を行っていたことがここにきて尾を引き始めているのではないでしょうか。
このように、私が思っているのは、あまりにシーズンを圧勝してしまうことは、チームのどこかしらに大きな負荷を与えてしまう(リリーフ陣の酷使等)という事を内包しているのではないかということです。
そのため、翌年もしくはそれ以降に大きく負荷をかけた代償が返ってきて、チームの成績低下につながりやすくなるのではないでしょうか。
では本当にシーズンを圧勝することが翌年以降のチーム成績に影響を与えているのか、過去シーズンの首位と2位の最大ゲーム差を10位までピックアップし、確認していこうと思います。
過去シーズンの首位と2位のゲーム差の10位までをピックアップしたものが上記表①となります。
リーグ分裂後の黎明期と2000年以降の割と近年のチームが多くランクインしています。
得失点差を見ても、どのチームも3桁を超えており、中でも1951年の巨人は300を超えています。
114試合でこの数字ですから、今季と同様の144試合こなしてたらどうなっていたのか…という驚愕の数字ですね。
1951年ということで、両リーグ分裂後2年目ということもあり、今や無き球団もありましたから、下位球団との著しいレベル差があったのでしょうが、それにしても凄い数字です。
では以上のチームが翌年どうなったのかをまとめた表が以下の通りとなります。
あれだけゲーム差を離しての圧勝だったにも関わらず、翌年も優勝したのは3チームという結果となっています。
その3チームの中でも1952年の巨人と南海は、成績自体は優勝チームに値するような結果ですが、前年比で勝率や得失点差を落としており、ゲーム差もかなり縮まっています。
そう考えると、翌年も2桁ゲーム離し、勝率・得失点差をキープしながら連覇を果たした昨年の広島の凄さが良く分かりますね。
それだけ相対的に図抜けた戦力を有していたということでしょう。
その他のチームは得失点差こそプラスをマークしているものの、その数値は大きく落としており、Bクラスに転落しているケースも見られます。
その中でも1990年22ゲーム差をつけて圧勝したにも関わらず、翌年4位にまで転落してしまった巨人を具体例として、私の「圧勝しすぎると、チームのどこかしらに大きな負荷がかかり、翌年以降に影響を及ぼす」という推論を検証してみたいと思います。
まず1990年巨人の強みは、その圧倒的な投手力でした。
1軍起用人数はわずか10人という驚異的な少なさで、斎藤雅樹・桑田・木田・宮本・香田という力のある強力な先発陣にとにかくイニングを食わせることにより、高クオリティのイニングイートを図りました。
防御率ランキングも1位~4位まで斎藤雅樹・桑田・木田・香田と巨人の4投手がランクインしていることから、高クオリティのイニングイート具合がうかがえます。
そして70完投・399失点で、その他の球団が軒並み500失点オーバーですから、失点を抑えるという側面から他球団と比べ大きくアドバンテージを取っていました。
それに対して野手は得点数はリーグ1位だったものの、他球団と比較し、相対的に抜き出たものではなく、圧倒的な投手力がこの独走を支えていたと言えましょう。
しかし翌年、前年に投げすぎた影響か強力な先発陣が軒並み成績を落とすこととなります。
前年に比べ槇原がフルシーズン投げぬいたものの、木田や香田は大きく成績を落とし、桑田・斎藤雅樹も前年ほどのパフォーマンスを見せられず、その穴を埋めるに至りませんでした。
前述の通り、野手力に秀でていたわけではなかったので、投手陣の穴の埋め合わせもできず、チームとしては大きく成績を落としてしまう事態となってしまいました。
この例一つだけで完全に断定することはできませんが、シーズンの圧勝はチームのどこかしらの部分に大きな負荷がかかっていると言ってもいいのではないでしょうか。
その例から見ると、今年3連覇を成し遂げようとしている広島にもそろそろ影響が出始めてもおかしくないでしょう。
実際に上記にも記しましたが、得失点差の減少が見られており、来年以降もっと深刻な事態に陥ることも考えられます。
このようにシーズンを常に100%で駆け抜けすぎても、長期的に見ると良くないでしょう。
これだけゲーム差をつけられるということは、相対的に抜けた力を持っている証左ですから、常に100%ではなく時にはきっちり負け試合を作るというようなギアチェンジを意識すれば、長期的に勝てるチーム作りにもプラスに働くのではないでしょうか。