勝ち続けるために必要なのは野手力
本noteは先日の「圧勝劇の裏では…」の続編となりますので、そちらを読了後読んで頂けたらより面白いと思います。
上記noteにおいては1シーズンを2位以下を寄せ付けない圧倒的な勝ち方をしてしまうと、チーム内のどこかしらに大きな負荷がかかり、翌年以降に大きなダメージを残してしまうため、意外と圧勝した翌年は優勝できないことが多いことについて述べました。
では続けて優勝することのできるチームというのはどのようなチームなのかという点について、本noteにては考察していきます。
まず連覇を成し遂げたチームとして最初に名前が挙がってくるのはV9の巨人ではないでしょうか。
1965~1973までリーグ9連覇かつ日本シリーズも9連覇を果たすなど、驚異的な強さを誇り、高度経済成長期と相まって、向かうところ敵なしの当時の時代の象徴の一つでした。
そんなV9巨人の2位とのゲーム差を見ると、3連覇までは10ゲーム差以上つけての独走でしたが、翌年以降は毎年一桁ゲーム差で決して独走とは言えるものではありません。
実際、以前最大ゲーム差ランキングを出した際にも、V9巨人は一度もランキングに入っていませんでした。
ゲーム差から見て相対的にはそこまで図抜けていたわけでもないのに、9連覇できた要因とは何なのでしょうか?
V9時の各年の巨人の得失点とリーグ平均得失点とを比較したものが上記表①となります。
得点力は常にリーグ平均の1.2倍を誇り、王・長嶋というNPB屈指のコンビを軸に圧倒的な得点力を有していたことが分かります。
その一方で失点は多く、リーグ平均を超える失点数を記録したこともV9中3回ありました。
1950年以降の両リーグ優勝チームのリーグ平均比得失点は、それぞれ得点が112.0%で失点が88.7%ですから、得点が124.0%で失点が94.2%のV9時の巨人は、抜きんでた打力で多少の失点の多さをカバーしていたことが分かります。
V9時の巨人は確かに王・長嶋を中心とした高い得点力を基にした強さだったかもしれませんが、それは果たして他に連覇を成し遂げたチームにも当てはまるのでしょうか?
1950年以降で3連覇以上を成し遂げたチームの得失点等のデータを抽出してきたのが上記表②となります。(かなり見難いです、すみません)
両リーグ優勝チーム平均より良い数字が出ているものはセルと文字の色が赤になっています。
こう見ると時代が時代ということもあるのかもしれませんが、セリーグは圧倒的に得点力が抜けているチームが勝ち続けていることが分かります。
パリーグはセリーグに比べるとまちまちですが、1980年代中盤から1990年代初頭にかけての西武黄金期は、得点力で抜けていたというよりも失点を抑えることで相対的優位を築いていたと言えましょう。
リーグによって多少の差異が認められますが、3連覇以上を成し遂げたチームのうち、得点力で両リーグ優勝チーム平均よりも上の数字を残しているのが74.5%で失点で平均よりも上なのが51.0%ですから、勝ち続けるには高い得点力を保持することがより近道になるのではないでしょうか。
また3連覇以上達成チームの平均と両リーグ優勝チーム平均を比較しても、失点の部分は変わらず、得点の部分で5%以上の差異がありますから、やはりリーグ平均比120%くらいの得点力の維持が肝要なのでしょう。
なぜ失点を抑えることで勝ち続けるのが難しいのかと言う点につきましては、投手は酷使や故障等の影響を受けやすく、寿命が短くなりがちなのに比べ、野手の方は投手ほどそのような要素が薄いため、投手と比較して長く活躍することが多いことが要因だと推察します。
所謂黄金期という一時代を築くには、優秀な野手を集め、得点力を高めることが肝要ということが分かりましたが、ただ打力に優れれば良いというわけでもありません。
守備・走塁も一定水準を持っているという前提があり、相対的に優れた打力を持っているということが大事なのです。
今年3連覇を成し遂げた広島を見ると、打力×守備力×走力のハイブリッド型選手が多くラインナップに並んでおり、それは明らかでしょう。
ですから本noteのタイトルにもした、打力×守備力×走力の野手力が揃っていなければならないのです。
チーム作りの面から見ても、野手を中心にして考えていかないと勝ち続けるチーム作りは難しいのです。