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覚醒を遂げた堂林翔太の進化と課題

2020年シーズン、シーズン最終盤に怒涛の追い上げを見せたものの結局5位に終わり、大瀬良大地や西川龍馬に代表される故障者の続出など、ネガティブな面が目立ったように思います。
しかしポジティブな面で最大のサプライズを挙げるなら、堂林翔太の覚醒で間違いないのではないでしょうか?

一時は打率4割台をキープし、首位打者にも躍り出るなど、今までの不振が嘘のような大活躍を見せたのは、数か月経過した今でも色あせない強烈なインパクトがありました。

ただ結果的には、打率.279と.280にすら届かず、打点は自己最多を更新したものの、本塁打は9月以降2本塁打にとどまり自己最多タイの14本塁打、OPSも.787と.800に届かない結果に終わってしまいます。

明と暗がくっきりと分かれた1年となりましたが、改めてこの1年で見せた進化と生じた課題をクリアにすることで、来年以降も3Bのレギュラーとして君臨できるのかについて考察していこうと思います。

1.進化したポイントを整理する

大枠は好調期の7月に上記noteにてまとめましたが、シーズン終了した今改めて進化したポイントを整理しておこうと思います。

①ストレートへの強さ

今年の堂林の打撃の進化を語るうえで外せないのが、ストレートへの強さでしょう。

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一時は打率.500をも超えた猛打っぷりは流石に最後までは持ちませんでしたが、最終的には打率.368/OPS1.048と素晴らしい成績を納めました。
加えて、wFAは15.3でNPB9位と、日本球界という括りで見ても有数の強さを発揮していたことが分かります。

更に掘り下げると、150km以上という高速の球速帯においてもその強さは衰えず、打率.405/OPS.936を記録しています。
ですので、決して平均的なストレートばかりを叩いて生まれた成績ではない、ということが言えそうです。

元々ストレートには強い打者でしたが、以上のようにその精度がより高まったことが、成績の大きな向上に結びついたようです。

②BB%の向上から見るアプローチ向上

続いて堂林の成績の大きな向上ポイントを挙げると、アプローチ面になります。

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2012年の一軍デビュー時からのBB%、K%、BB/Kの推移を見てみると、BB%とK%ではそれぞれ2020年以上の数値を残している年度があります。
しかし、BB/Kに限ると、0.45という数値は2012年以降では自身最高の成績となっており、例年より三振を減らしながらも、四球を増やすことに成功したことがここから分かります。

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また、月別に見ると絶好調だった7月はBB/Kが0.36と、決して良いアプローチとは言えなかったところから、調子が下降線を辿った8月以降に、むしろ絶好調期以上のアプローチを見せているのは、特筆すべき点ではないでしょうか。
不調ながらも我慢しながらボールを選べているところを見ると、開幕から1ヶ月の好調は決してフロックではなかったと捉えられそうです。

③コンタクト率/Hard%の向上

もう一点、進化したポイントを挙げるなら、コンタクト力の向上です。
それも単にバットに当たるようになっただけでなく、強くコンタクト出来るようになったという点がミソです。

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2014年以降のコンタクト率と打球の強さの推移を見ると、2020年のコンタクト率は2016年に次ぐ2位で、Hard%(強く捉えた打球の割合)は2017年に次ぐ2位、Soft%(打ち返した打球が弱かった割合)は自身最高と、いずれの数値でも自己ベストに近いところを記録しています。
つまるところ、バットに当たる確率は上がりながらも、堂林の放つ打球の質が大きく向上したということです。

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中でも光るのが、フライ性の打球の品質の高さで、フライ性の打球のOPS1.521は自己ベストどころか、柳田悠岐、丸佳浩、浅村栄斗に次ぐNPB4位の好成績と球界屈指の高品質ぶりです。
基本的にゴロ性の打球の多い堂林ですが、フライ性の打球の高品質さに支えられてのこの好成績だったわけです。

④「帰る場所」を見つけられた

最後は成績面ではありませんが、毎年どこかしらを見直していた打撃フォームを、固めることが出来たことも非常に大きなポイントではないかと思います。

これまでは自身の中にこれといった幹となる部分がなく、不調に陥ったら「帰る場所」がないために、少し崩されたら同じ形に戻れない脆さがありました。

それが今年1年の実績で自信を付けたようで、スポニチさんの記事で、

「結果が全てなので(去年までは)やっていても信じ切れない部分が正直あった。今年は“こうすれば結果が出る”というのが頭の中にある。そこから今年のプラスアルファを探していく」。

と語っているように、フォームについては今季のものを幹とする覚悟を決めたようです。
フォーム固めにようやく成功し、「帰る場所」を見つけられたことが、シーズン中にも精神的に余裕を生ませたのではないでしょうか。

2.9月以降の不調を解き明かす

上記のような進化を見せた堂林でしたが、9月以降は188打席で僅か2本塁打、OPS.640に終わり、成績を大きく落としてしまいました。
シーズン途中までは打率.300/20本塁打も視野に入る成績だっただけに、この急激な失速が惜しまれますし、その要因が何だったのかよく分からないまま、シーズンが終了してしまった印象です。

そこで、9月以降の堂林に一体何が起きていたのかを、以下にて明らかにしていきたいと思います。

①左足首の捻挫?の影響

9月以降、僅か2本塁打に終わった長打力の低迷を考える上で外せないのが、8/29に痛めた左足首の影響です。

翌日の試合を欠場しただけで、その後は出場を続けましたが、これ以降本塁打が一気に出なくなってしまったことを考えると、その影響は小さくなかった可能性が高そうです。

実際どのような影響が出そうかについて考えてみると、より大きな力をボールに伝えられなくなるといったことが挙げられます。
というのも、痛めた左足は堂林にとって踏み込み足となる方の足で、ここを痛めたということは、踏み込みが弱くなることが想像されます。
そうなると、トップの位置が浅くなったり、踏み込んだ際に地面から貰える力が小さくなり、出力は強く踏み込んだ時より当然小さくなってしまいます
出力が小さくなれば、打球をより遠くに飛ばすことも困難になるため、本塁打が出づらくなったのではないでしょうか。

実際に9月以降の成績を見てみると、大きく変化した部分があります。
それはゴロ性の打球が大幅に増加したことです。

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8月まではGB/FBは1.5前後で推移していましたが、9月以降は2に近い数値まで上昇しており、格段にゴロ性の打球の割合が増えています
今年同じく踏み込み足の足首を痛めていた西川も、昨年以上にゴロ性の打球が増えており、GB/FBはこちらも2を超える数値となっています。
堂林も西川も踏み込みが弱くなったことで、深いトップの位置を形成できず、打ち損ないのゴロが増えてしまったのではないでしょうか。

この部分に関しては、オフシーズンの間に傷を癒してもらう他ないので、しっかり療養してほしいところです。

②ストレートを仕留められなくなった

ストレートをしっかり捉えたことが、今年の好成績に結び付いたとは先述の通りですが、一方でシーズンが進むにつれて仕留められなくなっていったという事実も存在します。

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月別の球種別打率を見ると、7月までは5割オーバーの打率を残していた対ストレートの打率は、8月以降は月を経るごとにその率を落とし、9月以降は3割を切るところまで落ちてしまいました
ストレート系以外に強みを見せる球種はスライダーくらいで、変化球対応には特別な向上がなかったために、ストレートを捉えられなくなったことをカバー出来るものがなく、成績の低下に歯止めがかかりませんでした。

開幕当初の猛打を受けて、各球団の堂林対策としてストレートを減らしたことが、成績低下に結びついてのではないかとも考えられますが、実際はそうでもないようです。

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月別の球種割合を見ると、7月から対策が始まっていたのかストレート系の投球割合が低下していますが、その後は増えたり減ったりで安定はしていません。
成績を落とした9月以降も、9月に最低の割合を記録した後に、10/11月には最高の割合を記録しているところを見ると、ストレートの投球割合の変化が成績低迷に直接影響を与えたかは微妙なところではないでしょうか。

③アプローチ面の悪化

アプローチの向上が、今年の成績向上に結び付いたとは先述の通りですが、スイング率やコンタクト率の面を見ると、少々見え方が変わってきます。

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6月や8月はボール球に手を出すケースが少なく、空振り率も低い数値ですが、9月はボール球に手を出すケースが増え、ボール球のコンタクト率も大幅に上がってしまっています
なお好調の7月にも、ボール球スイング率や空振り率が高くなってしまっていますが、7月の最終盤の横浜3連戦で空振りを繰り返したことが原因で、好調期自体は決してこのようなアプローチではなかったことは補足しておきます。

これも左足首を痛めて、踏み込みが弱くなってトップが浅くなったためか、ボールの見極めという部分に狂いが生じ、ボール球に手を出すケースやボール球がバットに当たってしまうケースが増えたのではないかと考えられます。
不調期でも三振自体は減りましたが、打率は残らず長打も出なくなったのは、ここにも原因はあるのでしょう。

3.まとめ

・進化まとめ
①150km以上のストレートにも負けない、ストレートへの強さ
②自身最高のBB/Kと、四球を選べながら三振を減らすことに成功
③NPBでも屈指のフライの高品質さなど、より強くて質の良い打球を打てる確率が高まった
④打撃フォームが固まり、迷いがなくなった

・課題まとめ
①左足首を痛めたことで踏み込みが弱くなり、長打力の大幅な低下やゴロ性の打球の増加を招いてしまった
②高確率で捉えられていたストレートを、月が経るごとに仕留められなくなった
③9月以降、ボール球に手を出すケースが増え、打率や長打力の低下につながった

来年以降も3Bのレギュラーに君臨するには、今年のように大幅に失速することなく、安定して打ち続ける必要があるでしょう。
今年の失速の原因は、左足首を痛めたことや年間を通した体力面にあると考えられるので、そこさえ克服すれば問題はないはずです。
来年こそは、.300/20本/OPS.900レベルの水準をマークし、鈴木誠也とのツインバズーカを形成してもらうことを期待しましょう。

データ参照:スポーツナビ一球速報(https://sports.yahoo.co.jp/)
      1.02-Essence of Baseball(https://1point02.jp/op/index.aspx)

#野球 #プロ野球 #広島 #カープ #堂林翔太

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