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3番打者こそバティスタの天職である

開幕直後は極度の不振に陥り、打率は1割台前半を彷徨ったバティスタですが、4月中旬以降3番と一塁手に定着すると、次第にその打棒は爆発を始め、5月の日程を終えた時点で打率.296/14本塁打/34打点/OPS.922と、クリーンアップとして申し分のない成績まで上昇させ、月間勝利記録を更新したチームの5月の快進撃を支えました。

昨年までは調子の波が激しく、下位打線で振り回して一発長打を期待するような、一般的に典型とされる外国人長距離打者という印象でしたが、今季は与えられたポジションに応じた打撃を披露するなど、パワーだけではなくインテリジェンスのある部分も見せています。

そんなバティスタの、今季これまでの成績から見える打撃の変質について考察していきます。

※成績は5/31終了時点でのもの

1.昨季までのバティスタ

昨季までのバティスタというと、ツボに入った時の飛距離は素晴らしいものの、好不調の波が激しく、松山竜平・新井貴浩・エルドレッドらの存在もあり、スタメン定着とまでは至りませんでした。

そんなバティスタの打撃の特徴についてまとめたものが、表①~③となります。

ISOが.304と、山川穂高や筒香嘉智といった球界随一のスラッガーと肩を並べるレベルの長打力を持っており、プルヒッターでフライボールヒッターと、いわゆる長距離打者と呼ばれるような打者です。

また、Soft%とHard%の両方がリーグ平均より高く、きっちり捉えた打球とそうでない打球がハッキリとする、0か100かのような打撃であることも窺えます。

球種面では、ストレートと落ちる系のボールに強さを見せ、スピードボールと縦変化で勝負する投手の多い試合終盤にも頼りになる存在です。

打席内でのアプローチ面では、積極的にスイングを仕掛けに行くものの、コンタクト力は低く、BB%の低さとK%の高さはこの辺りに起因するのでしょう。

以上より、昨季まではパワー自体はNPB内屈指のものがあるが、コンタクト力は低く、0か100かになりやすいような特徴があり、打線の中ではできれば下位に置いてフリーでブンブン振らせたいような打者でした。

2.今季の変質

そんなバティスタですが、4月中旬以降3番に定着すると同時にその打撃に大きな変化が生まれ始めました。

その変化点とは、下記2点となります。

①フライボールヒッターからの変化

②打つべきボールを絞れている

まず①についてですが、昨季の数字を見るとFB%は59.8%と清々しいまでのフライボールヒッターでしたが、今季はFB%が46.6%まで落ち、その特徴に変化が生じていることが分かります。

中でも、不振に喘いでいた3/4月は、FB%は57.4%と例年通りの傾向を示していましたが、5月には41.0%までその割合を減らしており、逆にGB%は49.4%まで上昇するという傾向を示し、好調だった5月にこれまでの打撃から大きく変わっていることが分かります。

FB%が大幅に減少したとは言えども、本塁打はコンスタントに出ており、5月は月間で10本塁打を放ち、HR/FBはNPB内5位の30.3を記録するなど、その長打力自体は全く変化はありません。

5月は、全試合3番でのスタメン出場となっており、3番に入ることで昨季までの単に振り回すだけから、頭を使い状況に応じた打撃を意識することで、ある程度打球の質をコントロールすることを覚えたのかもしれません。

②については、打撃アプローチに変化が見られ、Swing%が減少する代わりにContact%が上昇しています。

おそらく打つべきボールを絞りスイングを仕掛けているために、コンタクト力が上昇し、空振り率も減少しているのでしょう。

そのためか、Hard%はNPB内2位の48.9%を記録、Soft%は21.3%まで減らすことに成功し、より強い打球をムラなく飛ばせるようになっています。

ここにも、おそらく3番に入ることによる作用が考えられ、前は野間菊池の俊足打者、後ろには最強打者・鈴木誠也を控えることにより、自然と得意のストレート系が来やすい状況へと相手バッテリーを落とし込んでおいており、そこを狙ってバティスタが仕留めるという一連の流れが生じていることが想像されます。

以上の流れが、打つべきボールを絞らせ、より強い打球を打つことを可能にしているのでしょう。

メカニクスという点では大きな変化はありませんが、3番打者という打順がバティスタの打撃を変えたのではないか、ということが以上より窺い知れます。

総合的な打撃力や安定性かつスピードが求められる3番という打順への適性を考えると、0か100かになりがちなバティスタの3番起用は違和感を感じてしまいますが、打線の流れという観点から見ると、前後の打者との関係から生じる球種の絞りやすさやバティスタ自身の打撃アプローチの変化という点から、見事にマッチしていることが分かるでしょう。

日本ハム・栗山監督が、2番打者にあえて大田泰示のような選手を置いて、頭を使った打撃を求めて更なる成長を促したように、バティスタの3番起用も下位打線でブンブン振らせるのではなく、よりコンパクトにスイングする意識を持たせるという点で同様の狙いがあったのかもしれません。

少し話は逸れますが、打順というのは、その打順各々に求められがちな役割を意識しつつも、打線としてどのように流れていくかという点を想像し組むことで、より得点創出力を上げられるように思います。

3.まとめ

昨季→今季での打撃の変質
・大元として、継続した3番打者としての起用
・頭を使い、打球の質をある程度コントロールできるようになった
・前後の打者の影響で、投球が絞りやすくなり、よりシンプルなアプローチが可能になった
⇒これにより、圧倒的な長打力は保持しつつも、大幅な確実性の向上に繋がった

以上が、ざっくりと今回のnoteのまとめになります。

バティスタの貢献度は、打撃だけでなく安定した一塁守備という部分も非常に大きく、開幕当初の内野守備の崩壊時は松山が主に一塁手に入っていましたが、バティスタが一塁手として継続的にスタメンに入り始めた4月中旬以降、内野守備が安定し、勝ち星を積み重ね始めたのは偶然ではないでしょう。

今やバティスタは、打撃面と守備面の両面でチームのバランスを担う重要なワンピースとなっているのです。

6月に入り、交流戦へと突入していきますが、相手は変われども攻守両面で、5月と変わらぬ活躍を期待したいところです。

#野球 #プロ野球 #広島 #カープ #バティスタ #3番

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