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新外国人3選手は広島にフィットするのか?~スコット編~

前々回はDJ・ジョンソン、前回はJ・ピレラを取り上げて広島のみならず日本球界にフィットするのかについて検討してきましたが、最終回となる今回は最も直近で契約を結んだT・スコットを取り上げて過去の二人と同様に考察を加えていきたいと思います。

T・スコット R/R 191cm/84㎏ 27歳

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スラっとした体型で顔もよいため、女性から人気を集めそうな選手ですが、まずはこれまでの経歴を簡単にさらっておきます。南アフリカ出身とあまり野球のイメージのない国の出身ですが、キャリアのスタートは2011年のドラフトでカブス(CHC)から5巡目指名を受けたことからです。指名を受けたCHCでは中々芽が出ず、2016年3月に自由契約となってしまいます。その後独立リーグを経て、ブルワーズ(MIL)とマイナー契約を結びAAでリリーフ投手として活躍。トレードでレンジャーズ(TEX)へ移籍した後、マリナーズ(SEA)へ移籍し2019年6月8日に念願のMLBデビューを飾りました。このスコットのデビューにより、南アフリカ出身では初のMLB選手誕生となったそうです。ただSEAでは結果を残せず、オリオールズ(BAL)に移籍しますがそこでも打ち込まれることとなります。そして、つい先日の12/1に広島と契約を結ぶに至りました。

1.2019年投球成績

南アフリカ出身では初のMLBプレイヤーとなったスコットですが、MLBでの成績はかなり悲惨なものとなっています。

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動画を見る限りでは、そこまで悪いボールを投げているようには見えませんが、防御率は14.43、16.1イニングで31の安打、6本の本塁打を浴びるなどフライボールレボリューションの波に飲み込まれたような格好となったようです。シンカーのようなボールを多く投げていますが、その軌道と打者の下からすくうようなバットの軌道が一致しやすかったために、ここまで被安打や被本塁打が増えたのでしょうか。

AAAでも2チーム合計で33試合に登板していますが、防御率4.59とこちらもイマイチな成績です。ただ移籍先のBAL傘下のマイナー成績は防御率0点台を誇り、どちらのチームでもK%は30%を超えるなどAAAレベルでは奪三振マシーンとなっているのはプラス材料です。

MLBでの単純な成績面ではあまり良いところのないスコットですが、投手としての特徴という面から見ていくと、GB/FBが2.57とゴロ性の打球の割合が多く、グラウンドボールピッチャーの傾向が非常に強い点が大きな特徴と言えましょう。DJ・ジョンソンと同様に試合終盤を任せるような投手で、長打を浴びにくいということは大量失点のリスクを減らせるという点でプラスに働くはずです。

左右打者別の成績を見ると、左右どちらに対しても被OPSが1を超えるような滅多打ちに合っているため、あまり参考になりませんが、K%とBB%の関係を見るとやはり右打者に対しての方が強いのでしょうか。右のサイド気味のアームアングルから左右に揺さぶるような投球スタイルのため、右打者には優位に働くのかもしれません。

まとめ

・MLBではフライボールレボリューションの波にのまれたためか滅多打ちにあい、AAAでの成績もイマイチだが、移籍先での成績は良くK%は30%を超えるなど奪三振マシーンと化している
・MLBでもGB/FBが2.57と強めのグラウンドボールピッチャーの傾向を示し、アームアングルがサイド気味なためか右打者への強さを見せている

2.球質

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続いて球質については、本格的にトラッキングデータを基に確認していきます。まずスコットの持ち球を押さえておくと、シンカー・スライダー・4シームという3球種と少なめの球種数です。いかにもリリーフ投手という感じですが、落ちる系のボールがないのはシーズンを戦っていく中で、段々投球の幅が狭くなってきた際に対処ができるのかという点で少々疑問符が付きます。

シンカーや4シームといったファストボール系は95マイル近い平均球速を叩き出すため、決して遅いボールではありません。ただスピードとしては突出したものではなくボールの軌道やフォームにも問題があるのか、被打率はどちらも.400超で、最も多く投じたシンカーはXWOBAが.500とある意味驚異の数値を記録するなど、全く通用しないものとなってしまいました。

そんな中で唯一光るものを見せたのがスライダーです。88.9マイルを記録する高速の部類に入るスライダーで、被打率等の見てくれの成績は良くないですが、打球の強さ等を補正したXBA・XSLG・XWOBAを見ると実際の数値よりも大幅に低く、しっかり捉えられるケースはそこまで多くなかったことが分かります。加えてWhiff%(空振り率)も36.1%と非常に高く、日本でも武器となる可能性を大いに秘めているボールです。

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球種ごとの成績をさらったところで、本題の球質へと入っていきます。再度この表の見方について確認しておくと、横軸が正の方向がスライド成分を示し、負の方向がシュート成分を示します。また縦軸の正の方向がホップ成分を示し、負の方向がドロップ成分を示します。

以上の認識を持って頂きデータを見てみると、まず最も投球割合の多いシンカーはプロットされた点のバラつきが小さく、軌道が安定していることが分かります。また変化量の特徴としては、平均的なボールと比べて非常にシュート成分が強く、かつドロップ成分も強いため、大きくシュートしながら沈んでいくボールとなっています。中々いやらしいボールなように思えますが、このようなホップ成分の小さいボールは上述の通りフライを打つために掬い上げるような打者のスイング軌道にバッチリハマってしまうのでしょう。

スコットの持ち球の中でも、MLBクラスで光るものを見せたスライダーを見てみると、回転数が2792回転と平均的なスライダーの回転数2394より非常に多く、変化量でいうと平均の平均的なボールと比べてスライド成分が小さく、ドロップ成分が大きなボールとなっています。ですので、88.9マイルの高速で縦に沈んでいくようなボールであると言え、いわゆる「スラッター」というボールに近しいボールなのでしょう。ということからMLBでも光るものを見せたということも何となくうなずけます。プロットされている点がバラバラになっているので、質がイマイチ安定しなかったことが、MLBでも武器とまではならなかった要因なのでしょう。

最後に最も投球割合の低い4シームについてですが、回転数は平均的なものの変化量に特徴があり、シンカーと同様にシュート成分の非常に強く、ドロップ成分も強めのボールとなっています。球速も4シームとシンカーでほとんど変わらないため、この2つの球種がシュート方向への変化量でしか差別化できていないことが分かります。ですので実質2球種のような形となり、打者からすると非常に狙いを絞りやすくなっていたことも、滅多打ちにあった要因なのかもしれません。4シームをもっと平均的な軌道に近づけるだけでも、投球の幅が広がり、打者からすると対応が困難な投手となるのではないかと感じます。

まとめ

・シンカーや4シームといったファストボール系のボールは、シュート成分とドロップ成分が多いためか、打者の下から掬うスイング軌道と合うことが多くMLBレベルでは痛打を浴びる場面が多かった
・スライダーはいわゆる「スラッター」のような高速で縦に大きく沈む軌道を見せるため、MLBレベルでも光るものを見せた

3.広島にフィットするのか?

フィットする可能性中(60%)

以上より、投球成績と球質のデータからスコットの投手としての特徴を追ってきましたが、広島のみならず日本球界にフィットする可能性はまずまずの確率であるのではと感じます。もう少し高い確率でハマりそうとは思っていますが、スコット以外にも外国人リリーバーが豊富なため、チームへの貢献量の面が少なくなりそうなことから確率は低めに設定してはいますが‥。このように感じる要因としては、下記のような点が挙げられます。

①「スラッター」がマネーピッチ

球質の部分でも述べましたが、スライダーが現代の魔球とも呼べる「スラッター」のような変化を見せている点は大いにプラスに働きそうです。

ストレートと同じ軌道からスッと縦に沈んでいき、例え抜けたとしても打者の認識より減速しないため、空振りも狙えるような万能なボールですが、MLBでもこのボールが武器となっていました。NPBでも一流どころはこのボールを放っており、スコットにとっての課題である精度のバラつきを改善し再現性を高められれば、より威力のあるボールとなることは間違いないと思います。

②ヘルウェグの上位互換的な存在

球種は4シーム・シンカー・スライダーと非常に少ないのが特徴的ですが、この持ち球を見て想起されるのが、2019年までの2年間広島の在籍したヘルウェグです。

ヘルウェグも150㎞を優に超える2シームと130㎞台前半のスラーブのようなスライダーを主な球種として、三塁側に抜けるボールが多いといった荒れ球具合でしたが、それが打者に恐怖感を与えたのか、数少ない登板機会ではありましたがきっちり結果は残しました。

そのヘルウェグと比べて、スコットはそこまで荒れてはおらず、かつ150㎞オーバーのハードシンカーは勿論のこと、スライダーが上述のような「スラッター」に近いボールで非常に実戦的な点が特徴です。ということから、ヘルウェグより制球のまとまりがあり、同じようなハードシンカーを武器としながらもスライダーはスコットの方が実戦的と考えると、スコットはヘルウェグの上位互換的存在と言えるのではないでしょうか。

ハードシンカーとスラッターで揺さぶる投手は他にいないため、リリーフ陣の中でバリエーションを持たせられそうな点もおそらくプラスに働くこととなるでしょう。いち早く獲得を表明した同じ新外国人のDJ・ジョンソンや、既に実績のあるフランスアと比較すると、立ち位置的には弱くなるでしょうが、このレベルの投手が控えているのは非常に心強いため、例えバックアップのポジションとなったとしても腐らず、常に投球を磨き続けてほしいと思います。

データ参照 Baseball Savant(https://baseballsavant.mlb.com/)
      FanGraphs(https://www.fangraphs.com)

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