『三人の騎士』−現実とアニメの垣根を越えて−【ディズニー長編総チェック#7】
さて「ディズニー総チェック」を今日もやっていきましょう!
ということで、今回の作品は『三人の騎士』
前回取り上げた『ラテン・アメリカの旅』の続編ということですので、その辺りも踏まえて語っていきます。
『三人の騎士』基本データ/あらすじ
基本データ
公開 1945年
監督 ノーム・ファーガソン
脚本 ホーマー・ブライトマン他
製作 ウォルト・ディズニー
出演者 クラレンス・ナッシュ/ジョゼ・オリヴェイラ/ホアキン・ガラ ほか
あらすじ
物語の根幹は「南米いいとこ、いつでもおいで!」
前作と共有される主題
この作品は基本的に語られることは、前作と同じ。
「我々が、自慢されたいラテン・アメリカ」を描いていると言える。
ドナルドがプレゼントを開けると、そこから様々なキャラクターが登場して、彼に「南米」の良さを語る、基本的にはその繰り返しだ。
今作品は以下のエピソードで構成されている
さむがりやのペンギン パブロ (The Cold-Blooded Penguin)
空飛ぶロバ (The Flying Gauchito)
バイーア (Baia)
ラス・ポサーダス (Las Posadas)
メキシコ〜パツクアロ、ベラクルス、アカプルコ (Mexico: Pátzcuaro, Veracruz and Acapulco)
ユー・ビロング・トゥ・マイ・ハート (You Belong To My Heart)
ドナルドの白昼夢 (Donald's Surreal Reverie)
それぞれについて、言及をするつもりはないのだが、
この作品の中でも「さむがりやのペンギン パブロ」「空飛ぶロバ」は基本的になくてもいいのでは・・・? と首を捻る構成にもなっている。
これらの作品に共通点を見出すのなら、基本的に登場するのは「鳥」関連のキャラクター(「空飛ぶロバ」が鳥かどうかは、考えたくない)が登場すること。
そして、繰り返しになるが「南米」の良さを語っているという点が挙げられる。
いいところって「女の子?」
ただ、この「いいところ」をフューチャーする面で、どうしても言いたいことがある。
それは、基本的に「女の子」
それも南米特有の「情熱的」な「女の子」と出会えること、それを良きこととして描きすぎ。という点は指摘されるべきだろう。
後述するがこの作品は「実写」と「アニメ」の融合を目指している。
基本的な作劇のお約束として、ドナルドが現地で女性と知り合う、そして女性に「モテたい欲」丸出しながらも、上手くいかない。
という流れになっている。
それが一番顕著なのが、水着の女の子を追いかけ回したり。
このエピソードが繰り返されることもあり、我々は見ていて「南米のいいところって”女の子”」なのか? と思わされてしまうという。
この点は正直上手くないと思います。(もちろん「いいところの一つ」ではあるかもだけど、しつこいんだ!)
前作はきちんと「文化」的な側面もしっかり見せてくれていただけに、そこは残念すぎた。
もちろん、いいところもあります!
もちろん、いいところもある。
例えば「さむがりのペンギン パブロ」「空飛ぶロバ」
これらは、正直あまりにも他のエピソードと関係がない気もするが面白い。
特に「ペンギンのパブロ」
このペンギンなのに「南国」への憧れを抱くキャラ造形は、アナと雪の女王」の「オラフ」を彷彿とさせられる。(もしかしたら「アナ雪」製作陣の頭の片隅には「パブロ」がいたのかもしれない)
さらに「バイーア」と言う短編で、情景を歌い上げるシーンの一連の流れも感動的だ。
そして「ラス・ポサーダス」という転変で、メキシコのクリスマスのエピソード。特にこのエピソードはメキシコの「クリスマス文化」を紹介するものとして、非常に興味深かった。
ただし、この映画の最大の「面白いところ」は、実はさっき指摘した不満もあるポイントと重なるのだ。
それはどういうことか? これから見ていこうと思う。
初の試み
さて、この映画、最大の「面白い」試みをしているポイントがある。
それは、先ほどボクが指摘した、「うーん」と首を捻ったところとも重なる。
それが「実写」と「アニメ」の融合という試みだ。
先ほど、「女性」との出会いだけが「南米のいいところか?」
と疑問を呈したが、この作品は現地の女性とドナルドたちが、文字通り同じ画面内で交流をするのだ。
この試みは、確かに面白い。
例えば「バイーア」のパートでは、ドナルド、ホセたちがいる「アニメの世界」に「実在の人物」が入り込んできて、一緒にダンスを踊る。
それも動きもしっかり連動している。
この試みは「史上初」なのだ。
そしてメキシコのビーチのパートでは、逆に「現実世界」にドナルドたち「アニメキャラ」が入り込み、交流をする。
まぁ、内容は、ドナルドが「水着の女の子」をひたすら追いかけまわすというね・・・。
女性歌手の顔が月になったり、サボテンダンスと女性のシンクロなど、やはりその巧みさには「うまい」と舌を巻かずにはいられない。
これらは試みとしては面白い。
でも、個人的には、その「面白い試み」が全て「女性」との絡みに終始してしまっているのが、勿体ないとも思っているので、複雑な気持ちを抱いたいたりする。
だが、何にせよ、これらの試みが「非常におもしろい」というのは事実。
そして、この点をもって「素晴らしい作品」だということもできるのではないだろうか?
ディズニーランドの構想の元になったのでは?
この「アニメ」と「現実」の融合という試みは、後の「ウォルト・ディズニー」の人生に大きな影響を与えたのではないだろうか?
元々「アニメ」という「虚構」を作り上げていたウォルト。
それが今作で、「アニメ」と「現実」の人物・光景を融合させる試みに踏み込んだ。
そして、それが後に「現実」に「アニメの世界」を再現する。
つまり「ディズニーランド」の構想の元になったのではないだろうか?
そう考えると、この試みは非常に「意味のある」大きなものだったのかもしれない。
まとめ
そうそう、この作品は「実写」「アニメ」の融合がテーマだが、その締め括り方がうまい。
夜景に浮かぶ女性とキスしたドナルドは舞い上がり、そして「悪夢」的とも言える「白昼夢」を見る。
そして、その「白昼夢」はアニメでなければ再現できないほどに、独創的なのだ。
その夢、つまり「アニメならでは」の世界を体験して、ドナルドは「アニメ」の世界に戻ってくるのだ。
そしてラストは爆竹・花火を仕掛けられた「闘牛」とドナルドがぶつかり、幕をおろす。
きちんと「アニメ世界」から旅立ったキャラクターが、最後には「アニメ世界」にきちんと「アニメならでは」の方法で戻ってくる。
この辺りは流石と言わざるを得ない。
総括になるが、非常に「興味深い試み」の作品だと思う。
それは認める。
だが、その「試み」で描かれるのが「女性にモテたい」みたいな内容で留まっている。
これは勿体ないと言わさるを得ない。
ということで、正直なところ「試みの面白さ」は認めるけど、内容については「あまり好きじゃない」作品だったと言わざるを得ない。
そりゃ「総チェック」だから、「好きじゃない作品」も出てきますよ!!
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