月とウィスキー

2024年4月5日、作曲完了。
アルバム未収録
4月7日桜新町Neighborにて初披露。

きっかけ

まだ20代のころ、台北空港に飛行機が着陸体制に入った時。ぽつりぽつりと見える、家の灯りがなんともあったかくって、感激したのを強烈に覚えてる。「いつか曲にしたい」と思った景色。(どんな曲になるのか全然分かってなかったけど!)
テレビ見てゲラゲラ笑ってる家族もいるだろうし、彼氏に別れ話を切り出されて泣いてる娘さんもいるかもしれないし、家計簿と睨めっこしてるお母さんや、野球中継を見ながらビール飲んでるおじさんもいるかもしれない。誰の目にも止まらない、誰も観ることのできない情景が灯りそれぞれに宿っていて、ロマンチックだなって思うわけです。誰も見向きもしない映画のよう。吉田拓郎さんの歌で言うと「そこに人がおるんよね」っていうところです。

作詞作曲

世のお父さんたちが、BBQや焚き火の前で、ギター弾いて歌ってくれたらいいと思いませんか。咳払いなんかして「父さん、ちょっとだけ弾こうかな」なんつって。ポロッと弾き語り。It’s 最高。
主人公は、100点ではないけど、0点からも遠い人生。普段は小っ恥ずかしくて言葉にしない。ギターと焚き火とウィスキーのチカラを借りて、気持ちをつい吐露しちゃう。最後のジャーンが鳴り終わったら、照れて身体をすくめるような。顔を赤らめたりなんかして。
「全米が泣く!」ってほどじゃなくても、僕のこの小さな胸をいっぱいにするくらいの特別はたくさんあったよ。それは君に出会えたからだよ。

この曲の中では「君が好き」と言うような、いわゆる感情表現は入れませんでした。だって「世のお父さん」恥ずかしいから。恥ずかしいと歌ってくれないから。
例えば「君が静かに締めたドアの音」って、ただの情景描写なんですけどね。「子供を起こさないようにそっと閉める母親としての君の優しい手つき」を思い出したり、僕とケンカした後に「無言で部屋を出ていったあの日の君」を思い出したり、他の人にとってはなんの変哲もない場面が、僕にとっては特別な訳です。
他の誰でもない、ただ一人、僕にとって特別、
という気持ちを曲にしたかったんです。


台北で見た、夜景とは言えないレベルの
点々とした家の灯り。
それがこうした形で曲に昇華できて
20年越しの思いが叶いました。

本当はもっと音域の狭い曲にして
「世のお父さん」に歌ってもらおう
と思ったのですが
結構広くなってしまったので、
歌うの大変だと思います。。
お許しください!


歌詞

飛行機から見えた小さな光 
ひっそりと息づく家の灯り
一軒ずつ泣き笑いがあって 
ドラマがあるのでしょう

僕の人生に全米が泣くような
脚本がなくても平凡じゃないのは
たった一人役者が現れて 
特別にしてくれたから

賑やかな夜も 真っ暗な夜も
36℃くらいの ぬくもりが宿っている

君と分かち合えた夢 
君が教えてくれた歌
君に背中を向けた時の虚しさ
君が見つけてくれた僕の知らない僕
君は僕の特別を作ってくれた

ラウンジから見える丸い光 
ひっそりと佇む月の灯り
眠ってる街 琥珀色したウィスキー 
月も眠たそうにしてる

満ちていく時も 欠けてく時も
同じ場所めがけて 君の横に帰る

君についた下手な嘘 
君と初めて出かけた時の服
君が静かに締めたドアの音
君に貸してもらったハンカチの匂い
君はいつも特別の真ん中にいる

月にだけ話したことのある話
ウィスキーのように鼻がツンとする話
空から見える家の灯りの ただそのうちの一つの話
朝が来て夜露が消える頃には 忘れてくれていい話 
忘れて欲しい話


感謝

自分らしさを、自分で作ろう、自分で見つけよう
そんなふうに生きてきたけど
そばでずっと見ててくれた人が見つけてくれた
「僕らしさ」ってモノの重みを知りました。

高校のレッスンで
「自分の個性を探し回ってる」彼らに
自分で探す、作ることも大切だけど
「人に見つけてもらう自分らしさもいいものだよ」って伝えたんです。
できるなら自分を大事と思ってくれてる人に見つけてもらえるといいねって。

そういう意味では、
僕をずっと見ていてくれて、
僕の知らない僕を教えてくれた人がいることに
感謝します。
妻をはじめ家族や、ファンの方々、生徒の皆さん、
ありがとう。

photo by Eijun Mitsubori

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