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マルタ島の観光産業についての初感
優しい旧友が、一緒に電話をする時間を設けてくれた。今日は彼女が提案してくれたテーマについて語ることにする。
観光代理店でのインターン初日を終えた私の、マルタの観光産業に関する考えが、今日のテーマである。
結論を先に書くとしたら、「マルタは夏にしか稼ぐ機会が無く、ほとんどヨーロッパからの観光客しかいないのが現状だが、これを維持するだけで十分満足していられる国民性を持った人々が暮らす、のんびりとした島」だと思う。
マルタ島は地中海の中心に佇む小さな島だ。2時間もあれば車で一周することができるだろう。
一年中、寒すぎず暑すぎず、湿気もなく、冷暖房施設が無い建物もあるくらいの過ごしやすさである。
夏にはヨーロッパの多くの国から旅行客が押し寄せる。彼らをターゲットにしたホテル、レストラン、ジェラート屋さん、若者向けのクラブやカジノなどが海沿いを中心に発達している。
しかし夏以外はどうだろうか。夏以外は海で泳ぐには寒すぎる。夏以外の時期に大きなイベントは無い。6000年の歴史を誇り、遺産も数多く存在するが、それだけを目玉に人を呼び寄せるにはややインパクトに欠ける印象だ。夏以外のマルタは、観光客を呼ぶのには厳しそうである。
マルタを歩いていて思うのは、アジア人が全くいないということである。他の国の観光地だと中国人の団体やインド人の旅行客を見かけるものだが、マルタではヨーロッパらしいゲルマンやスラブ系の観光客以外はほとんど見かけない。ヨーロッパの人々からすれば、近くで手軽に来れる観光地だが、他の地域の人にとっては、わざわざ長距離移動してまで行くほどの場所では無いのだろう。日本における金沢のような場所だろうか。日本人は行くが、外国人が貴重な1週間の滞在の中でわざわざ行くほどメジャーな場所では無いのである。
では夏以外にもイベントを開催したり、他国へのアプローチを強化したらマルタはもっと栄えるのだろうか。確かにそうかもしれないが、マルティーズたちはそれを望んでいないように感じる。
マルタの人々は穏やかで、のんびりとしている印象だ。とにかく暮らしやすい街なのだろうと思う。
生活にかかるコストも、かなり低くてすみそうだと思う。気候が良いので冷暖房にお金がかからない。日当たりのよい家ばかりなので家の中に明かりがいらないから電気代がさらに低くなる。食費が北欧諸国のように高いこともない。車にかかる税金も安いらしい。
これは推測だが、夏の稼ぎだけでも彼らは十分暮らしていけるのでは無いだろうか。
また、国民性的にも、成長意欲や金への執着の強い人々では無いと思う。インターン先の人々には残業という概念はかけらもなく、定時になった瞬間に帰宅していった。仕事ぶりも非常に古典的で、今日も私がマイクロソフトワードの操作方法を教えてあげたくらいであった。街を歩いていればケータイで動画を見ているコンビニ店員や、隣のお店の主人と雑談をしているパン屋の店員などを見かける。
この街は今の暮らしに満足している慎ましい人々の素朴な雰囲気で満たされている。この街はこのままでいるのが一番美しいと、私は思う。
一ヶ月後、私はこの記事を見返して、自分の認識の甘さを笑うことになるのだろうか。自分でも、楽しみである。