2024.8.25「大人の科学談義〜知る人ぞ知る?!大事な大事なリン資源の話〜」を開催しました
2024年8月25日(日)、名古屋市内のコワーキングスペース・タスクールにおきまして「大人の科学談義・第十三夜〜知る人ぞ知る?!大事な大事なリン資源の話〜」という講座を行いました。
リンは元素記号Pで表され、生物においても産業においても必要な元素になっています。
しかし、実はこのリンというのは産出量が非常に限られていて、その確保が社会的な問題となっています。
今回の講座では、資源としてのリンの重要性について考えて参りました。
リンを含む物質
単体として黄リン・赤リン・白リン・黒リンがあることと、化合物としては十酸化四リン(五酸化二リン)、リン酸、骨や歯の主成分であるヒドロキシアパタイト、リン鉱石の主成分であるリン酸カルシウム、肥料の一種である過リン酸石灰について紹介しました。
人体とリン
リンは人体に含まれる元素のうち、重量%でいえば約1.0%といわれています。
しかも、そのリンの約85%が骨や歯に含まれています。
また、リンは細胞膜、DNAといった細胞の構成成分や、エネルギーの運搬体であるATP(アデノシン三リン酸)の構成成分でもあります。
植物の栄養素とリン
植物が生きる上では、17種類の元素が栄養素として必要とされています。
特に窒素・リン・カリウムといった元素は「肥料の三要素」といわれています。
自然界におけるリンの循環
自然界において、リンは酸素および金属イオンと結合したリン酸塩という形で多く存在しています。
このリン酸塩というのは水に溶けにくく、植物が栄養として吸収するためにはリン酸イオンという形にならなければいけませんが、リン酸塩からリン酸イオンが溶脱しにくいので、自然界ではその量が限られています。
それ故、肥料としてリンを含む物質として過リン酸石灰を供給する必要があるのです。
産業におけるリンの用途
あまり知られていないかもしれませんが、リンは工業製品の製造でも多岐にわたって使用されています。
例えば化学肥料・消火剤・蛍光灯の蛍光体・スマホやパソコンのインジケーター(発光ランプ)・CDやDVDのメッキ・リチウムイオン電池の電解液・潤滑油・食品添加物などがございます。
リン鉱石
工業製品を製造するには、リン鉱石からリンを取り出します。
リン鉱石には火成リン灰石・海成リン鉱石・グアノなどがございます。
火成リン灰石とは、マグマが冷えて固まってできたリン鉱石のことで、主成分はリン酸カルシウムになります。
海成リン鉱石とは、比較的浅い海底に生物の遺骸が堆積し、長い年月をかけてできたリン鉱石のことで、主成分はリン酸カルシウムになります。
ただし、有害金属であるカドミウムやウランを含んでいます。
グアノとはサンゴ礁が堆積してできた島に海鳥の分が堆積し、それらが化学反応してできたリン鉱石をさします。
19世紀後半、ペルー沖の離島などでグアノを大量に採掘したことでその埋蔵量が急減し、現在ではその量がごくわずかに限られています。
リン鉱石は中国・モロッコ・ロシア・アメリカで多く生産されますが、国によって事情があり、質の高いリン鉱石をとることができにくくなっています。
リンの回収と再資源化
日本はリン鉱石をはじめ、リン資源のほぼ全てを海外からの輸入に依存している状態です。
ただ、生産過程で生じた排水や廃棄物などからリンを取り出し、再資源化する取り組みがなされています。
2008年に中国で起きた大地震がきっかけとなり、リンの価格が乱高下した「リンショック」が起こりました。
リンを海外からの輸入に依存している日本にとっては大変な問題になりましたが、リサイクルによるリン資源の確保が重要な課題となってきています。
振り返り
高校の化学においてもリンとその化合物は扱いますが、授業では軽く扱われているというのが現実的なところです。
しかし、地球上におけるリンの循環やリン資源に関する社会的な問題もつなげてみると、生命活動・人間活動において重要であることを考えることができたかと思います。
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