When blue change White/Even if you become a bone, But I love you
…?とある曲とMVの感想の様なものです。勿体無い気がしたので貼ります…
規則的なドラムの音がその空間に響く。煙を巻きながら、ギターに添えた指を楽譜の通りに動かす。準備が整い、前奏がその部屋の時間の中に誕生する。
彼がその声で歌い出す。人に聴かせる為の曲が育ってゆく。
マイクを通して、その歌声は室内に響く。
部屋の中央で彼が座っている。その身を丸めている。
手首にマイクの線を巻きつけている。二重に巻かれたその黒く太いコードは、リストカットの暗示に似ている。
体格も良く、筋肉もある彼は心が弱い。服に隠れると体に彫られた黒いタトゥーも見えなくなる。その半袖のシャツから覗き見える、コードを巻いた手首は頼りなく弱々しいものに見えた。
遅い拍子の曲が響いている。悲観的な詩を音にして歌う。歌声とギターの音が脳と心を引っ張っていく。曲の色に自分の色が今は塗り潰されていく。
脳味噌に絵を描いているようだった。その歌声は絵の具であって、筆であって、その絵の主線であり、影であり、その人物の名前だ。
その声は人の記憶をカンバスにし、消えない絵の具で消えない絵を描く。突き刺さる感傷と、人と言う、その詩という油がある。それが絵の具になり記憶を塗る。脳の皺の中に、曲という記憶を塗っていく。
声、というのは命の欠片である。昔の人は、写真を撮られると魂が吸い取られると信じていた。
映像というのは、生の、人生の断片となる。
命を削るということばがある。
その声は自身を痛みに晒し、苦痛から生まれた光る魅力だった。
葛藤や悪夢や苦痛の上澄みが命を反射している。
記憶はまた塗られていく。
その記憶に、脳に塗られた絵には血液の香りがする。
想像が出来る。
想像してしまう。
その手首から真っ赤な血が、
大きく裂かれた、彼の手首に描かれた、彼というカンバスを裂いて出てきたその命が。
虚ろな目をしている。
真っ赤な血がその絵に滴り落ちる。
絵が渇いてゆく。血液が渇き、こびりついていく。
命を削り、命を燃やし、命を痛め、命を嬲り、命は晒し、命を刺し、命を締めて、命に通う心臓の血液を止めてまで、人は何かを造るということをする。
人生には色が付く。人というのは絵の具である。
彼の血液が赤や黒で、彼の肌は薄橙色で、時々頬に薄桃色が差す。瞳は黒と茶色、唇は発色の良い赤。身体に彫られたタトゥーは黒。肌の下の筋肉は真っ赤、脂肪は黄色、腸は桜色で肝臓は赤褐色、心臓は薄い桜貝と真っ赤な薔薇のような色。肺は紫で、闇の様な黒と雨雲のような灰色。
その下は全て白い骨。
その曲には全員の色が混ざり合っている。
汗、涙、血、唾液、鼻水、消化液、鼻血、胃液、膿、愛液、血漿、静脈血、尿、爪の垢まで全て混ぜる。それは曲になる。
その全てが絵という形になる。
その映像自体、彼の命の欠片である。
彼の血が彼の色に混ざる。透明な水が彼に透き通った色を付ける。
彼は見る者を魅了させた。彼の色が綺麗だった。
彼の声と言葉の色は光り、見惚れる様な色で輝いていた。
彼の歌を忘れない、彼の声を忘れない、彼の言葉を忘れない、彼の姿を忘れない、彼の思いを忘れない。
見る者を魅了させた、綺麗な色の彼は最後には全てその色が焼かれ、真っ白に戻った。白は灰色に変化した。
彼の白や灰色という色に、彼が生きていた時の様な色は付いていないが、彼がつくり、彼らが作りここに残したものは綺麗な色を持っている。
1日1日生きていく中で、色が剥がれたり、落とされたりするがまた新たな色を作り出す。
彼らには今、彼の残した色が付いている。彼の命の色と、彼の息の色が付いている。彼らもまた魅力的な色を出す。
彼はマイクを置いて部屋から立ち去る。
曲という絵が完成して終わる。
そこに彼の血は流れ続ける。
彼の命は欠片になって絵に散った。
魅了させるような絵を残した。