織のレジェンド in Denmark - ディナー編 -
*前回のアトリエ訪問編はこちらから
夕方、Spindegårdenを後にし 歩いてHanneさんのお家に向かいます。
道中歩いていると、いたるところにキノコが。
秋になるとキノコ狩りワークショップなんかもあるようで、キノコに詳しい人が結構多いデンマーク。
ナチュラルにもぎって持ち帰ります。笑
こじんまりとしたお家はあたたかみがあり、シンプルかつクラシックな雰囲気から Hanneさんらしさを感じます。
ぱっと目に留まる、Hanneさんの家具。
彼女が手がけたものは 時間を経て空間に馴染みつつも、どこか凛とした存在感があります。
Hanneさんのファブリックを纏う家具たち
上の写真は 2015年で誕生50周年を迎えた、Hans J. Wegner (ハンス・ウェグナー) がデザインし、自身も愛用した椅子「PP701」。
当時 その特別企画として、Hanneさんのテキスタイルとのコラボレーションが実現したそうです。
彼女の手織りサンプルや、わずかな生地見本などからつくられた限定モデルは少数のみの生産で、とても貴重な一脚です。
なんと実は 日本限定の商品とのこと!
Hans Wegner のデザインだと、包まれるような座り心地が贅沢な一人掛け椅子の名作「ベアチェア」においても、Hanneさんのテキスタイルを纏ったプロダクトが製作されています。
また Finn Juhl (フィン・ユール)との共作も数多く、ニューヨークの国際連合本部ビルにある会議場(Trusteeship Council Chamber)の椅子の生地を製作したことでも有名です。
FJ 51を含む、Hanneさんがデザインした多くの家具用ファブリックは デンマークに唯一残る 小さな椅子生地製造会社、Kjellerup Væveri 社(ケアロップヴァヴェリ)による上質なウールによって作られています。
太い番手の紡毛を使用することで、生地に空気が含まれ "ふわっと" 優しい織り上がりになるのが特徴とのこと。この独自のテクスチャーがぼやけた色調のカラーと相まって、他の生地には出せない柔らかさを家具全体に持たせることができるのだとか。
デザインの工程でも特に重要な色選び。自身の感覚によるもの と仰る Hanneさんですが、キリスト教にゆかりのある色づかいが根底にあることから、彼女に選び取られた色からは その深い精神性が感じられます。
世代を経て
Hanneさんのキャリアは若い頃からスタートしますが、きっかけとなったのは 彼女のお母さんやおばあさん。
彼女たちも縫い物や織物に長けていたそうですが、Hanneさんがまだ幼い頃 学校から家へ帰ると、なんとお気に入りのお洋服が切り裂かれ、マットを織るための糸になってしまっていたことがあったそう。笑
当時はショックで涙したそうですが、後に そのお洋服で織られたマットからインスピレーションを受けた、裂織りマットが製作されます。
(*上のキッチンの写真がそのプロダクト!)
お母さん、おばあさんの世代から培われてきた 生活に足りないものを自分たちで作ったり、手を加えたりする ささやかな営み。
大切に受け継がれてきたそれは、Hanneさんの審美眼を通して 世界に誇るデニッシュデザインに昇華され、彼女の織り機から生まれたテキスタイルは日々人びとの生活に寄り添い続けています。
デンマークの女性に脈々と受け継がれる、彼女たちの強い精神を感じるエピソードでした。
そんな志高く織の道を極めるHanneさん、とてもフレンドリーでパワフル。
スイミングが日課だったり、また伺ったときはなんと腕を骨折されていたにも関わらず、お家ディナーでは手料理を振舞ってくださったり、ほんと活力に満ちた方でした。
彼女と人生のことから色んな話をして夜長したひとときは、今も色褪せない良い思い出。
たまに記憶の引き出しを開けては確かめる、わたしにとって唯一無二のweaver です。
works cited:
house of finn juhl
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