VketRealで起きたトラブルを行動経済学と心理学で読み解くと100倍面白くなる話
はじめに
このnoteは、仮想空間でコミュニケーションを楽しむゲーム「VRChat」で開催されるイベントを題材にした記事です…が、今回はゲームそのものの話よりも、2024年11月に話題になった「VketReal」の料金トラブルを軸にしつつ、行動経済学や心理学の視点を少しだけ交えてみました。VketRealを批判するための記事ではありません。
議論が盛り上がり、一時的にSNSで炎上気味になった経緯を振り返りながら、なぜこうしたプチ炎上や「お気持ち表明」が頻発するのかを掘り下げます。問題の表層だけでなく、「なぜ人々がそのように行動するのか」という心理的な背景に着目していきます。
この記事では、行動経済学や心理学を初めて知る方にも興味を持ってもらえるよう、具体例を交えつつ分かりやすく解説しました。一方で、これらの学問を少し齧ったことがある方には「これってこういう現象だったのか」と気づきのきっかけを提供できればと思います。
それでは、「VketReal」の料金トラブルと、それを取り巻くSNSの反応から見えてきた問題を整理していきます。
1. 発生した問題:料金トラブルの背景
2024年12月に開催予定のVketReal(Virtual Market Real 2024 Winter)
は、オンラインのVirtual Market(以下Vket)をリアルな会場で体験できるイベントとして注目されていましたが、料金に関するトラブルがX(旧Twitter)やVRCコミュニティ内で大きな話題となりました。この問題の中心にあったのは、「チケット料金の発表遅延」と「高額設定」という2つの要素が重なっていました。
チケット料金の発表遅延が招いた混乱
イベントの概要や会場の詳細は比較的早い段階で告知されていました。しかし、参加者にとって最も重要な情報の一つである「チケット料金」が、イベント間近まで明らかにされませんでした。この対応により、参加予定者の間には以下のような声が上がりました。
「準備が間に合わない」
チケット料金が未定の状態では、交通費や宿泊費を含めた全体の予算を計算できません。遠方からの参加者ほど、スケジュールの確定が難しくなります。「高額ならば再考したい」
チケット料金が発表されるまで、参加者は「費用対効果」を判断できず、不透明感がストレスを生む結果となりました。
最終的な料金設定とその受け止め方
チケット料金が発表されたのはイベント直前に近いタイミングでした。その金額は、単日券で3,900円、2DayPassでさらに高額という設定で、一般的な同規模展示即売会と比べて決して安いとは言えません。この発表に対し、多くのユーザーが次のような反応を示しました。
「価格が高すぎる」
オンラインで大半が無料体験できるVketと比較し、「なぜリアルだとこれほど高額なのか」という不満が多く上がりました。「費用がかさむ」
遠方からの参加者にとっては、チケット料金に加えて交通費や宿泊費が必要になります。これらのコスト全体が予想以上の負担となり、不満の声を助長しました。
※以下、実体験を貴重な記事とされている方のNote
情報不足が招いた混乱の本質
料金設定自体よりも問題視されたのは、「料金に関する情報提供の遅れ」による不安感です。特に、2つの点が参加者の不安を煽っていました。
判断材料の不足
チケット料金が事前に明らかにされていれば、参加者はスケジュールや予算を早めに計画できたはずです。情報が欠けていたことで、準備が難しくなり、不安感が高まりました。納得感の欠如
高額な料金であっても、具体的な体験内容や特典が説明されていれば、納得するユーザーも増えた可能性があります。これらの情報が十分に提供されていなかったため、「なぜこの料金なのか」という疑問が残りました。特に、パラリアルクリエイターとして有志によって参加するブースも該当の有料エリアとして指定されており、クリエイターと会うことが目的のユーザーは高額な料金を払ってからでないと会えないという不満感も募らせていました。
価格改定とその影響
ユーザーからの反発を受け、運営側はチケット料金の見直しを行いました。2024年11月19日、新価格でのチケット販売が開始されました。新たな料金体系は以下の通りです。
だれでもエリア:無料
企業ブースや一般ブースがあり、どなたでも無料で楽しめるエリアです。一部有料コンテンツを含みます。パラクリエリア:1,400円
パラリアルクリエイターの展示エリアで、16時以降は無料開放予定です。コミュステージワイワイエリア:2,500円
ステージや飲食を中心としたコミュニティエリアで、Vketコミュコラボカード5枚が特典として付与されます。2エリアセット:3,900円
パラクリエリアとコミュステージワイワイエリアの両方に入場できるチケットで、特典としてVketコミュコラボカード5枚が付いています。
この価格改定により、ユーザーの不満はある程度解消されましたが、情報提供のタイミングや透明性の重要性が改めて浮き彫りとなりました。
2. ユーザーの不満の本質:行動経済学で読み解く
VketRealの料金トラブルが引き起こした不満の本質は、「価格が高い」こと自体ではなく、ユーザーが「価格に見合う価値がある」と心理的に納得できなかった点にあります。この問題を行動経済学の視点から解き明かし、改善点を探ります。
前年料金が生んだ心理的基準とアンカリング効果
VketReal 2023は基本無料、オフ会イベントでチケット制、1,000円など低価格で提供されました。この料金設定は、参加者にとってVketRealの基準となり、2024年の料金評価に影響を与えました。前年の1,000円に比べて、約4倍の価格の3,900円となっています。この価格差が、「予想外に高い」と感じられる主な原因です。行動経済学でいう「アンカリング効果」がここで強く作用しています。
即売会との比較が招いた心理的負担
ユーザーはVketRealの価格を他のイベントとも比較します。例えば、以下の料金設定が多くの人にとっての「基準」となっている可能性があります。
コミケ:無料(公式カタログ約2,500円推奨購入)
コミティア:公式カタログ付きで約1,000円
コミケやコミティアは即売会形式として一般的な基準となっており、VketRealが「他の即売会と比べて規模の割に高額」と感じられる要因になっています。加えて、料金発表が遅れたため、ユーザーは事前に「今年は前年より大規模だから価格が上がる」などの心理的準備をする機会がなく、不満が増幅されたと考えられます。
無料から有料への移行がもたらす心理的抵抗
VketはVRC内で無料で楽しめるイベントであり、多くのユーザーが「無料の力(Zero Price Effect)」の恩恵を受けてきました。無料には特別な心理的魅力があり、有料化には強い抵抗感が伴います。
実験から見る「無料」の影響
行動経済学者ダン・アリエリーの実験では、以下の条件でチョコレートを販売しました。
高級チョコレート(リンツ):15セント
通常のチョコレート(ハーシーズ):1セント高級チョコレート(リンツ):14セント
通常のチョコレート(ハーシーズ):無料
最初の条件では、多くの人が高級チョコレートを選びました。
しかし、2つ目の条件では「無料」の力が強く働き、ほとんどの人が無料のチョコレートを選ぶ結果になりました。
この実験が示すのは、無料であることでお金を払う「損をしない」という心理的な魅力が非常に大きいことです。オンラインVketが無料で参加できることを知っているユーザーにとって、VketRealの有料化は「損失」を感じさせる心理的障壁となりました。
無料から有料への移行が与える「損失感」
Vketが無料であったのに対し、VketRealでは3,900円の負担が求められます。この変化に対して、ユーザーは金額以上の心理的負担を感じやすくなります。「払う価値があるのか」への疑念
有料化に際し、価格に見合う価値を具体的に示さなければ、ユーザーは料金を不当に高いと感じる傾向があります。特に、料金に含まれる体験価値が曖昧だと、この疑念が不満として表面化します。
損失回避バイアスが強調する不満
行動経済学の基本原則として、人は「損をする痛み」を「得をする喜び」よりも強く感じます。これを「損失回避バイアス」と呼びます。VketRealにおける高額料金は、ユーザーに以下の心理的影響を与えました。
「損失への恐れ」
高額なチケット料金に対して、「払ったお金以上の体験が得られないかもしれない」という恐れが不満を増幅させます。「無料のVket」との無意識の比較
無料のVketを基準にしているため、VketRealの有料化が「過剰に高額」と認識されやすくなっています。他のイベントとの比較が強調する違和感
コミケやコミティアといった低コストイベントの存在が、VketRealの価格に対する納得感をさらに低下させています。
行動経済学的な改善策
ユーザーの心理的負担を軽減し、料金に対する納得感を高めるためには、以下のような施策が考えられます。
1. 段階的な料金発表とアンカーの設定
早割価格や事前購入の特典を提示
事前に「早割チケット」や「限定グッズ付きチケット」を低価格で提示し、それを心理的な基準(アンカー)として設定します。
例:「通常価格3,900円ですが、早期購入で3,000円!」といった提示により、最終的な価格が高額に見えにくくなります。前年料金との差を明確に説明
前年との価格差を正当化するため、具体的な体験価値を示します。例:「新エリアの追加により体験内容が2倍になりました」などの情報を提供します。
2. 料金に見合う体験価値を具体化
特典や体験内容を明確に提示
「参加者限定の特典グッズ」「リアル限定ステージ観覧券」といった形で、料金に含まれる価値を具体的に説明します。無料エリアと有料エリアの差別化
一部エリアを無料開放し、有料エリアでの特別な体験(例えば、限定展示やプレミアムコンテンツ)を強調します。
3. 損失回避バイアスを逆手に取る
「今買わないと損をする」心理を活用
限定特典や早期購入割引を設け、「このタイミングで買うのが得」というメッセージを強調します。購入後のフォローアップを強化
チケット購入後に事前情報や特典の詳細を提供し、「この選択で間違いなかった」とユーザーに安心感を与えます。
4. 透明性を高め、情報提供を充実させる
料金の内訳やコストを明示
チケット料金に含まれるコストや体験価値を具体的に説明することで、不透明感を解消します。ユーザーとの双方向コミュニケーション
SNSや公式サイトで、ユーザーからの疑問に対して運営側が迅速に回答する体制を整えることで、信頼感を向上させます。
3. 心理学の視点:不透明さが生む心理的反発
VketRealの料金トラブルにおいて、料金そのものの高さ以上に問題視されたのが、情報提供の遅れや不透明さが生んだ心理的反発でした。心理学の観点からは、この「不透明さ」がユーザーに与えた心理的影響が、不満の拡大に大きく寄与したと考えられます。
心理的リアクタンスが生む反発
心理学では、人が自分の自由や選択肢を制限されると反発を抱く現象を心理的リアクタンスと呼びます。1966年に心理学者ジャック・ブレームが提唱したこの理論は、制限されることへの反発がいかに行動や感情に影響を与えるかを示しています。
VketRealにおいて、料金発表が直前まで遅れたことは、多くの参加者にとって「計画の自由を奪われた」と感じさせる結果となりました。特に次のような声がユーザーから多く上がっています。
「計画を立てる時間が足りない」
チケット料金が不明の状態では、交通費や宿泊費を含めた予算の算出が難しくなります。遠方から参加を検討していたユーザーにとって、この状況は特に深刻でした。「判断を急かされた感じがする」
イベントの体験価値と料金を比較し、参加するかどうかを冷静に判断するためには一定の時間が必要です。料金の発表が直前だったことで、この判断のプロセスが十分に取れなかったと感じたユーザーが多くいました。
情報不足が招いた不安
料金発表の遅れや情報提供の不足は、ユーザーに強い不安を与えました。心理学的には、人間は未知の状況を過大評価する傾向があるため、不明瞭な情報に直面すると、リスクを必要以上に高く見積もるようになります。
VketRealの場合における情報不足の具体例
料金の妥当性が判断できない
チケット料金が3,900円と発表されたものの、料金に含まれる特典や体験価値が明確に示されていなかったため、「なぜこの価格なのか」が分からず、不安や不満を助長しました。クリエイター参加エリアも有料という意外性
パラリアルクリエイターエリアが有料エリアに含まれていたことも、十分な説明がないまま告知されたため、クリエイターとの交流を目当てにしていたユーザーからは「意図しない追加負担」として不満の声が上がりました。
心理的リアクタンスを示す実験結果
心理的リアクタンスの影響を示す実験として、ペンシルバニア州立大学の心理学者ジョン・ペンネバッカーが行った「ゴミ捨て禁止の看板」の実験があります。
実験内容
公園のゴミ箱に対し、2種類の異なるメッセージを表示した看板を設置しました。強制的なメッセージ:「ゴミを捨てるな!」
協力を促すメッセージ:「ゴミを捨てないようご協力ください」
結果
「ゴミを捨てるな!」という強制的なメッセージが掲示されたゴミ箱の周囲では、かえってゴミが多く捨てられました。一方、「協力を促す」看板の周囲では、ゴミが少ない結果となりました。
この実験は、制限的なメッセージが人々に反発を引き起こす可能性を示しています。同様に、VketRealでの料金発表の遅れや「参加の準備ができない」という状況は、参加者の心理的リアクタンスを引き起こし、不満を増幅させたと考えられます。
心理的反発を和らげるための心理学的改善策
ユーザーの選択肢を増やすことで自由を尊重する
心理的リアクタンスを和らげるには、選択肢を増やし、ユーザー自身が「自由に選べる」と感じられる状況を作ることが効果的です。
段階的なチケットオプションを提供
「フリーパス」「特定エリアパス」「時間帯限定パス」など複数のチケットプランを用意し、選択の自由を強調します。これにより、「自分で選んだ」という感覚が生まれ、料金への納得感が向上します。ユーザーが関与できる価格設定モデル
例えば、「支払った金額の一部がクリエイター支援に使われる」と明示したり、「寄付型チケット」の選択肢を提供することで、ユーザーが料金設定に積極的に関わる感覚を持てるようにします。記憶は定かではないのですが値段を自由に決められる寄付型の方が多く売り上げが上がったという実証実験もあったはずです。人は決められた価格以上に支払いを行うこともあるようです。
サプライズ要素を活用して期待値を調整する
心理学では、サプライズ効果がポジティブな感情を引き起こし、不満を軽減することが知られています。料金発表に関連する不満を和らげるには、予期しない価値を提供することが有効です。
「料金以上の価値」をイベント中に提供
チケット購入者限定で、「当日限定グッズ」や「サプライズステージ」などを予告なく提供することで、料金に対する期待以上の満足感を得てもらいます。早期購入者への追加特典を後から発表
「早期購入者には特別な抽選の応募権を付与」といった形で、料金の発表後にポジティブな要素を追加することで、心理的リアクタンスを減少させます。
親しみや共感を高めるコミュニケーション
心理的リアクタンスは、運営側のメッセージが一方的だと感じられる場合に強まりやすいです。共感や親しみを重視したコミュニケーションが、反発を和らげる効果を持ちます。
運営の背景や意図をユーザーと共有する
運営側が料金設定やイベントの規模に至るまでの経緯を語るコンテンツを作成し、「ユーザーのために努力している」と伝えることで、共感を生みます。動画やインタビュー形式での発信が効果的です。ユーザーの声を直接取り入れる仕組み
料金設定やイベント内容に関する意見を、アンケートや投票形式で事前に収集し、「この内容はユーザーの声を反映しています」と公表することで、ユーザーが参加型の運営に共感を持つようになります。
機会費用を低く感じさせる工夫
心理的リアクタンスを引き起こすもう一つの要因は、「参加しない場合のコスト」を正当に評価できないことです。これを補うため、参加するメリットをわかりやすく伝える施策が有効です。
無料エリアと有料エリアの比較を視覚化
例えば、「無料エリアではこれが楽しめますが、有料エリアではさらにこれが体験できます」という比較をグラフィックや動画で明示することで、支払う料金の価値を直感的に理解させます。「次回開催時には得られない価値」を訴求
「このエリアでしか体験できない展示」や「限定コンテンツ」の情報を強調し、参加しない場合の機会損失を感じてもらう工夫をします。
ユーザー体験を事前に疑似的に提供する
心理的リアクタンスは、イベントの価値が不明確な場合に強まるため、疑似体験を通じて期待値を具体化させることが有効です。
事前にバーチャルツアーを提供
オンライン上で有料エリアの一部をバーチャルツアーとして公開することで、体験価値を事前に視覚化します。これにより、料金に見合う価値を感じてもらいやすくなります。「ちょい見せ」コンテンツをSNSで公開
イベントの内容や特典の一部を事前に「ちょい見せ」することで、ユーザーの期待感を高めつつ、「不明確さ」への不安を軽減します。
4.まとめ:心理的納得感を重視したイベント運営の重要性
VketRealで起こった料金トラブルは、価格設定そのものの問題以上に、情報提供の遅れや心理的納得感の欠如が不満の根本原因となっていました。行動経済学や心理学の視点から分析すると、ユーザーが料金を「高額」と感じた背景には、以下のような要因が複合的に絡み合っていたことがわかります。
情報の不透明さ
チケット料金の発表遅延や具体的な体験価値の説明不足が、ユーザーに不安や不信感を抱かせました。無料から有料への移行
無料のオンラインVketが基準となっているため、有料化への心理的抵抗が大きく、不満を増幅させました。他イベントとの比較
コミケやコミティアといった既存の即売会の料金設定と比較され、「割高」と感じられました。心理的リアクタンスと損失回避バイアス
自由が制限された感覚や、「損をするかもしれない」という恐れが、不満の背後に影響を与えました。
これらの問題を解決するためには、運営側がユーザー心理を十分に考慮した運営方針を取る必要があります。具体的には、料金や特典の早期公開、自由を尊重した選択肢の提供、参加しない場合の損失を明確に伝える工夫などが有効です。また、共感を呼ぶコミュニケーションや、サプライズ要素を取り入れた体験価値の提供によって、ユーザーの満足度を向上させることができます。
リアルイベントは、オンラインイベントとは異なる独自のコストと価値を伴うものです。その特性をユーザーに適切に伝え、心理的納得感を高めることが、成功の鍵となります。次回以降のVketRealが、こうした教訓を活かし、より良い体験を提供できるイベントとして成長することが期待されます。
5. 蛇足:VketRealを取り巻くSNSの問題点
VketRealを巡る料金トラブルや運営への不満がSNS上で議論される中、問題の本質から外れた感情的なやり取りや、個人的なアピールが目立つ場面もありました。これらはユーザーの心理や議論の進行にどのような影響を与えたのでしょうか。行動経済学や心理学の視点から分析します。
感情論が議論を曇らせる:問題の本質からの逸脱
SNSでは、「運営の後出し説明」や「料金の高さ」に対する批判が中心となる一方、関係者や代表者の人格を批判・擁護する声や、運営への同情・中傷が議論の焦点を曇らせる場面が多く見られました。心理学では、これを感情ヒューリスティックと呼びます。
感情ヒューリスティックが引き起こす問題
議論の焦点がぼやける
料金設定や情報公開の遅れといった本質的な問題に集中すべきところが、運営者の人柄や関係者の情熱といった感情的な話題にすり替えられてしまいました。これにより、建設的な議論が進みにくくなります。社会的同調圧力が働く
「代表者の熱い思いに免じて」といった感情論が支配的になると、異なる意見を持つ人が批判を恐れて発言を控える傾向が強まります。結果として、問題の本質に対する指摘や改善案が議論から排除されることになります。
有名人アピールの心理:ステータス消費と社会的比較
SNS上では、VketRealに関する議論の中で、「VketReal代表者と知り合い」等という自己アピールした上でのお気持ちが散見されました。このような発言が、なぜ不快感を与えるのか。これは、ステータス消費や社会的比較理論に基づく現象です。
不快感を与える理由
「自分の優越性を示そう」とする意図が透ける
有名人とのつながりを強調する発言は、無意識のうちに「自分が優れている」と周囲に示したい心理から来ています。一方で、受け手は「自分が比較対象にされている」と感じ、劣等感や反感を抱きやすくなります。議論の場にそぐわない空気感を生む
VketRealの料金や運営について真剣に議論している場面で、有名人とのつながりを持ち出す発言は、議論の本質に貢献せず、「場違い」と受け取られることが多いです。
3. 問題の本質を見失わないために
こうした感情論や個人的なアピールが議論を曇らせる中で、問題の本質を見失わないためには、次のような視点が必要です。
1. フレーミングの再設定
議論の焦点を明確にする
「料金設定の妥当性」「情報公開の透明性」といった具体的なテーマを中心に据え、SNS上でも明確に問題点を整理して共有することで、感情的なやり取りを減らすことができます。
2. エビデンスに基づく議論の促進
事実とデータを基に議論する
他の即売会との料金比較や運営の背景にあるコスト構造をデータで示すことで、感情論に流されない建設的な議論が可能になります。
3. SNSの特性を理解する
感情的な投稿が拡散しやすいという性質を意識する
SNSでは、論理的な議論よりも感情に訴える投稿が広まりやすい特性があります。このため、問題解決を目指す場合は、あえて冷静なトーンで情報を発信することが効果的です。
4. SNSでのモヤッと感を和らげるために
SNSでのやり取りが不快感やモヤモヤを生む原因は、自己アピールや感情論が支配的になることにあります。これを和らげるための対策を心理学的視点から提案します。
「相手の視点を意識した発信」
自己アピールに走るのではなく、議論に貢献する情報を発信することで、SNS上の空気をポジティブなものに変える努力が求められます。「共感を生む言葉の選び方」
批判ではなく提案や応援の言葉を織り交ぜた投稿を心がけることで、建設的な議論を生むきっかけを作れます。「モデレーションの導入」
SNS上の議論をスムーズに進めるために、イベント運営側が公式アカウントで問題の本質に関連する情報をまとめ、積極的に発信することも効果的です。
まとめ:議論の焦点を取り戻し、健全な場作りを
VketRealを巡るSNSでのやり取りには、感情的な議論や場違いな自己アピールが目立ちました。しかし、本来焦点を当てるべきは「料金設定の妥当性」や「運営の透明性」であり、それを曇らせる感情論や個人的な発言に流されない議論の場作りが重要です。
おわりに
さて、ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございました。この記事を書くきっかけとなったのは、行動経済学の入門書として有名なダン・アリエリー著の「予想どおりに不合理」です。
今回は「無料の魅力」というテーマを例に取り上げましたが、他にも「所有効果」や「自己制御の失敗」など、日常のちょっとした行動の裏にある心理を解き明かす興味深い内容が詰まっています。読み物としても軽やかで、学問というよりはエッセイに近い感覚で楽しめる一冊です。
少し余談になりますが、社会人になると学生時代よりも読書量が落ちたと感じる方も多いのではないでしょうか。かくいう私もそうで、時間が取れない中で知識欲を満たすためにYouTubeの書籍紹介を眺めることが増えました。ですが、ある時気づいたことがあります。
「情報量が足りない」
YouTubeでの書籍紹介は、たった20〜30分で一冊分の内容を要約しています。そのため、どうしても本の面白い部分を「上澄み」として拾い上げる形になります。紹介動画は便利ですが、やはり原著には及びません。今回の記事で取り上げた「無料の魅力」の話も、書籍の一節に過ぎませんが、原著を読むとさらに多くの驚きや発見があるはずです。
あなた自身のための読書を
上澄みとして取り出された文章は、その「角度」からしか読めません。本というのは、自分の視点や状況によって読み取れる内容が変わるものです。そのため、自分のための読み方をするためにも、ぜひもう一度、手に取って本を読んでみてはいかがでしょうか?そこには、今のあなたに必要な新しい発見や気づきがきっとあるはずです。
改めて、最後までお付き合いいただきありがとうございました。この記事が、新しい知識や考え方と出会うきっかけになれば幸いです。