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だれでも幸福ガイド

📙はじめに

 よく生きることについて考えるため、有識者の方にお願いし「これからの知・情・意」という対話を行った。

◻️知情意については👤石山祐己氏による🔗マインドマップをご参照いただくと、基本から用例まで体系的に分かります。

 あなたは、「怠け者の私でも無理なく続く仕事」や
「寂しがりでめんどくさい私に合う恋人」など、横着で狭めた選択肢の先に、充足や幸福があると思うだろうか。
 思う人は途中で読むのをやめたくなるかもしれない。

 しかし私はこの記事で、より豊かな幸福の話をしたい。
 それは知情意さえ意識できれば、誰でも得られるものだから。

📊知情意の歪み

 知性感情意志。これらはもともと誰にでも備わっていて、幼少期はシンプルな状態にあり、成長とともに洗練される。

 知は、好奇心から発し、判断力を養い、教養となる。
 情は、単なる感受性から、芸術性仁徳に至る。
 意は、自我の芽生えから、柔軟で平穏な人格を作る。

 それぞれが順調に育ち、高みに至ることが望ましいが、多くの人は途上にある。それどころか育たず歪んでいき、その歪みによって諦めや苦悩の多い人生を送っている。

 知情意の歪みは困難をもたらす。漱石の名句がこの本質を的確に表している。

智に働けば角が立つ。情に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。

夏目漱石(1906)『草枕』

 賢くても心無いと嫌われる。感情に従いすぎては不安定だ。自己主張が強すぎると世界を狭める。というわけだ。


 知の歪みは、乏しい判断力が招く虚栄心だ。理屈を振りかざし、力や数を価値基準として、自分は優れていると悦に入ってしまう。

 情の歪みは、快と利己のみを求め自堕落を招く。現れてはすぐ消える感情に流され、愚鈍な独りよがりになる。

 意の歪みは、自我が確立したという錯覚から頑固さとなる。自分を正しいと思い込み、他者を否定する攻撃性を持つ。

「頭では分かっているけど怠けたい」「やる気はある、きっかけが無い」「私は間違っていないのに通じない」「私は凡人と違うアピール」
 みんなちょっとずつ心当たりがあるのではなかろうか。これらによって人は、快適な人付き合いや心豊かな社会生活から遠ざかってしまう。

♻️知情意の循環

 さあ、歪みの原因を探って対処法を考えよう。まずは小さい頃にさかのぼる。

 幼少期は好奇心感受性自我が、つまり知情意がぐんぐん膨らんでいき、分かること・出来ることが増えていく。
 学校生活では様々な学問文化に触れ、ランダムな人々と過ごし、新しい刺激を受け続けて知情意は育っていく。

 このまま知情意が育ち続ける限り、人間的な成長は止まらない。しかしほとんどの人は、10代で1度ブレーキがかかる。
 他者評価環境によって自分を抑えたり諦めたり、こだわりを持ったりして、思考が偏り出すのだ。これが歪みの始まりである。

 ブレーキとは、端的に言えば「知情意の循環が止まること」である。ここで放置するとドンドン凝り固まって、やがて前述した「歪み状態」に至る。

では、どうすればまた循環が始まるのか?

 知情意は《やってみて→気付いて→考えてまたやってみる》のように循環させることでバランス良く成長する。
《やったけど気付かない・気付いたけど考えない・考えたけど行動に移さない》が循環の停滞である。

 この循環の中心となるのは。「心をよく見つめ、補い育てること」が、まずすべき対処法だ。

真ん中の矢印が「情」
知情意のバランスをとることだけではなく
バランス良く成長させることで幸福に繋がる

🏄‍♂️自然を乗りこなす

 知・情・意それぞれには性格と役割がある。心(情)は、たとえれば元気に暴れ回る子どものようなもので、バカやりたいもっと食べたいサボりたい気持ちよくなりたい‪(ง ˘ω˘ )ว‬と欲望のままにリクエストをしてくる。
 これの言いなりになってしまうと、嬉懈(きかい)となり、人生や健康を損なう。

 欲望だけでなく、心は、過去や未来へ勝手に出かけていき、今どうしようもない不安や後悔をおみやげに携えて戻ってくる。
 そんなあれこれ(怠惰・杞憂・自棄)を拾ってきた子どもには、意が「面白いのあったね」と一旦は穏やかに受け取って見てやり、知が「でも要らないね、お外に返して来ようね」と躾けてやらねばならない。
 全てを受け取っていたら頭がゴミ屋敷になってしまうし、拾って来るたびに苛立ったり動揺したりしなくて良い。

 そして、情はその無邪気なあり方が自然なので、責めたり押し殺したりする必要は全く無い。飼い猫が害虫をくわえて来た時のごとく、やめろとコントロールするのではなく、よく知って対処するのだ。

 そうして他2つによって補いながら知情意がバランスを取れるようになると、心は子どもが育つように自然と成長し、3つのチームワークでより高次の働きができるようになる。

 もちろん、知・意も自然なマイナス面を持つ。心(情)は無知で、頭(知)は恩知らずで、肚(意)は臆病者。その弱点を知れば、伸びしろが分かる。

・サボりたがる・投げやりになる時は知の伸びしろ
・優しさや美しさを感じにくい時は情の伸びしろ
・勇気が出ない・人目を気にする時は意の伸びしろ
 不足は必ず自分の中にある他の要素でどうにかできる。それぞれ補い合って乏しいものを豊かにすれば、日々の不本意な展開を免れる。
 己の状態をよく見つめ、よく知り、対応しよう。

*¹…遊んでばかりですべきことを怠ること。

🦋世界を見て自己を知る

 情をよく知り、補うことは以上の通りだ。では、情を"育てる"とはどういうことか。

情操教育」という言葉は、子どもの成長過程によく聞くが、これを年齢を重ねてからもドンドンやって欲しい。
 科学、芸術、道徳、情緒。子どもの頃は関心に関わらず、家庭や学校、メディアからそれらを高めるものが与えられるが、大人になってからは自分で選んだものしか人生に登場しない
 向いている・相性のいいものや人にばかり能動的になってしまうので、結果狭い世界へ情が偏っていくのだ。

 ぜひ、芸術や文化に触れよう。自分でも歌ったり絵を描いたりしよう。やりたかった楽器はある?習おう。上手じゃなくていい、気負わなくていい。
 人に会ったら挨拶をしよう。知らない人に親切をして、周りの人にも優しくなろう。みんなと協力してゲームをしよう。スポーツやキャンプの利点を知ってみよう。不器用でもいい。あとからついてくる。
 歴史や語学を学ぼう。幅広く読書をしよう。教会や寺社、お墓参りに行こう。人の営みと命の尊さを感じよう。
 やる気や関心のある無いは二の次だ。自分の中の尻込みや偏見に気付いた時ほどあえてそれをやってみよう。
 その全てがあなたを小さな世界から解放し、悠久の流れにある自身の役割を見出させてくれる。

🌳知情意の全機

 セルフ情操教育によって情が育つと、利己心がグッと減り、利他仁愛が心の軸になる。愛情や尊敬、孝行、報恩の気持ちである。どれも他者や社会をよく意識する心だ。
 培ってきた論理的思考や判断力、知識を利他に用いることができ、それは大いなる叡智に繋がる。
 仁愛という後ろ盾によって柔軟さと勇気が備わり、実践を続けるうちに、何をなすべきかという生きる指針が定まる。

 愛を中心に知恵と勇気が安定したバランスをとり、自立した個が生まれるのだ。そうなれば自分が偏りそうになった時も、困難に見舞われた時も、何が必要か気付き動けるはずだ。


 良きところでまとめに入る。知情意のマイナスの働きを殺さず、プラスの働きを活かし、バランス良く成長させる。
 人間の社会生活上の都合でプラス・マイナスと区別をしているが、全ての働きは知情意の自然のあり方である。自然を受け止めて、全機*²させよう。

 さすれば自ずと、そんな洗練されたあなたにふさわしい豊かな人物、環境、出来事とマッチングする。未来は僕らの手の中だ。

*²…禅思想。そのものが持って生まれた働きの全てを発揮していること。例): 生前と死後が命の全機現。

🍭おまけ

 ただし、いかに理知・美徳・倫理を心に宿しても完璧に思い通りには……とかくに人の世は住みにくい。
 たまには浴びるほど酒を飲み、脂肪と糖を摂取し、海へエスケープして笑って、あしたなど知らぬと惰眠を貪ろう。たまにね。


◻️この記事の元となった対話は、音声SNSアプリ『Clubhouse』にて🔗アーカイブを聴取できます。

◻️以下はお子さま向けの簡易な知情意ガイド記事です。小学四年生までに学習する漢字のみ使用しています。
https://note.com/yulabsinthe/n/n453e14b9a3ac

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