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幽体離脱のやり方(前編) 〜芥川裕の洒落にならない怖い話・不思議な話・奇妙な話〜
転職する前の会社の受付をやっていたMさんから聞いた話だ。
彼女は小学生位の頃から幽体離脱をする事が出来たそうだ。
元々出来たというよりも、ある漫画か小説だったかに幽体離脱をする方法が書かれていて、その通りにやったら出来たという。
手順としては、まず横になり全身リラックスした状態で胸の前で両手の指を組む。
そのままウトウトとするまで、無心でじっとしておく。
そして、眠りに落ちそうになって来たら、その組んだ手の平の間に白い球を想像する。
そして、その白い球が上に浮かんでいくようなイメージで動かしていく。
胸の上から徐々に上へ上へとその球を移動していく。
すると、一定の距離上がってしまうと、白い球に自分の意識が入り込み幽体離脱ができるそうだ。
浮かんでいる自分の姿は見えないが、白い球からの視点として自分を見下ろしたり移動する事ができるらしい。
移動する時は下に行きたいとか前に進みたいと意識する事で移動出来ると言っていた。
初めて幽体離脱した時は、自分の体に戻れないのではないかと感じたそうだが、体の方向に向かうとまるで体から引き寄せられ、吸い込まれる様な感覚になり、無事戻れたそうだ。
Mさんが言うには白い球状態の時の動きは遅く、夢の中で走りたくても走れない時のようなもどかしさを感じると言っていた、
ある程度幽体離脱の感覚に慣れて来た時、Mさんは家の中を回って見ようと思った。
隣の部屋の姉の部屋に行こうと壁をすり抜けようとすると、まるでゼリーに体を通す様な柔らかい抵抗を受ける感覚だった。
壁を抜けたら姉は既にベッドで寝ており、上から見下ろしているMさんは声を掛けようとしたが、声は出せずにもどかしさを覚えた。
まるで、口にハンカチを詰めて話すような、声を出したくても出せないもどかしさとの事だ。
何もできないMさんは自分の部屋に戻ろうとした時に、ある事に気づいた。
壁と姉の勉強机の間に、数年前に姉が無くしたと言っていたノートが落ちていたのだ。
それを見ながらMさんは自分の部屋へと戻り、体に戻った。
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