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林間学校(中編) 〜洒落にならない怖い、不思議な話〜

「肝試しの前に施設の前の開けたスペースでクラス全員体育座りをし、教師が怖い話をしたんです。内容としては施設の近くのダムで過去に赤い服を着た女性が赤ちゃんを抱いたまま飛び込んで二人共亡くなり、それ以降夜中にダムの近くを通ると赤ちゃんの鳴き声がするとかそういう話でした。教師の真に迫る語り口調に女の子の中には既に泣き出しそうな子もいて、正直言うと山の暗く不気味な雰囲気に僕も少し怯えていました。肝試しのルートは施設の周りの山道をぐるっと回るようにとの説明の後に男子、女子二人ずつの計四人のグループで出発することになりました。前のグループと5分間隔位で出発するのですが、遠くから聞こえる生徒の叫び声がますます恐怖心を刺激します。僕のグループの女子は2人共出発前から半泣き状態で、もう一人の男子も怖がっていたため自然と僕が懐中電灯を持つ役割となりました。ルート上には何ヶ所か怖がらせるポイントが用意されていて、ガードレールの所にマネキンの頭が三つ並んで置いてあったり、トンネルの上の暗がりから教師が糸で吊るした雑巾を僕達の顔に当ててきたりといった定番のものでした。雑巾を顔に当てて来た先生を懐中電灯で照らすと、してやったりな顔をしてましたよ。今思えば、暗がりに潜む先生の方が怖かったんじゃないかな。そして、ある程度歩くとみんな肝試しの雰囲気にも慣れ、その後に出てきた口裂け女のメイクをした女性の教師を見ても笑う位の雰囲気にはなっていました。でも、施設に帰り着く寸前に後ろから、先生二人組が叫びながら全速力で走ってきたのは不意を突かれて心拍数が跳ね上がりました。そうやって、肝試しは終わって部屋に帰りました。」
そこまで話すと彼はまたコーヒーに口をつける。
その間に、先程の肝試しの途中に何かあったのだろうか?とか最後追いかけて来たのは実は先生は一人だけだったとかだろうか?と僕は思った。
彼はまたコーヒーを飲むと続ける。
「そして、朝になって食堂で学年全体でご飯食べている時に数人が言い争っているような声が聞こえてきたんです。″嘘言うな″とか″嘘じゃねーよ″っていう部分は聞こえてきたんですが、先生が直ぐに喧嘩に割って入ったので詳しくはその時はよくわからなかったんですが、後で聞いたら一組の佐藤君と五組の山下君が喧嘩していたようで、肝試しの時に佐藤君はガードレール前に生首が四つあったと言い、山下君は三個だったという事で言い合いになったみたいです。そんな大した事でも無さそうな違いなんですが、元々二人は仲が良くなかったようで、喧嘩のタネはなんでも良かったんでしょうね。そんな朝食の後は林間学校の作文を書く為にバスに乗り、学校に帰りました。そこで、不思議な事が起きたんです」
そこまで話すと彼は両腕を組んで、上を見上げた。

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芥川裕次郎
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