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炊飯器にごはんを長期間いれたらダメだよって話
僕がまだアルバイトだった頃、お金がなかった。
本当になかった。
一週間でご飯代で500円しか使えないことも往々にあった。
しかし、唯一の希望は祖父が農家なので米には困らなかった。
実家から送って貰えば白飯だけは食べることが出来た。
大体は一回でまとめて炊いて、小分けに冷凍することで電気代も節約することが出来た。
たまにの贅沢として、スーパーで売っている炊き込みご飯の素を買ってきておにぎりにすることだけでも、凄い贅沢をしている気持ちになったものだ。
ある日の夜、僕は炊き込みご飯の素を炊飯器にいれ炊飯ボタンを押した。
次の日からはお盆休みで、二泊三日帰省する予定になっていたため、夜の内に炊いて、朝に小分けにしてある程度冷めたら冷凍し、昼過ぎに帰省する予定だったためだ。
翌日、僕は寝坊した。
そして、そのまま帰省した。
炊飯器の事に気付いたのは帰省から帰る電車の中でおにぎりを食べている時だった。
そこからは頭の中は炊飯器の事で一杯になり、帰りに店に寄ろうとしていたものもキャンセルし、自分の部屋に急いだ。
荷物を下ろし、恐る恐る炊飯器に近づく。
匂いはない。
炊飯器の密閉力の素晴らしさを称えたかった。
いよいよ、開封する。
心臓は高鳴り、さりげなく息を止める。
スイッチを押す指に力を込め、炊飯器を開ける。
米が茶色になっている。
一瞬思考が停止したが、その後、炊き込みご飯であることを思いだす。
少し匂いを嗅ぐ。
特別、危険なスメルは感じられない。
炊いてから蓋を開けていないから、雑菌がいないのが功を奏したのか。
僕の頭にはそんな勝利の方程式が浮かぶ。
なるほど、炊いてから開けずに保温すれば大丈夫なのかと感心しながら意気揚々としゃもじでご飯を掬う。
米と米が透明な細い糸を引く。
嗅いだことないような酸っぱめの匂いが鼻腔に届く。
僕はゴミ袋に炊飯器の中身を叩き込んだ。