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苺狩りは楽しいけど恐ろしいよって話
あなたは苺狩りにいったことがあるだろうか?
大体は入場時にいくらか払って、ヘタを捨てる用の袋や練乳の入ったミニカップを受け取って一時間位美味しい苺を食べ放題可能な素敵な場所である。
僕も小さい頃に数回、ある程度大きくなって二回行った。
どうせ行くなら、早めの時間をオススメする。
人に因って様々だろうが、僕は真っ赤に熟してもう少ししたら腐れ始める位の苺が好きだ。
もちろん歯ごたえのある甘酸っぱい苺が好きな人もいるだろう。
そういう苺は昼過ぎでも残っている可能性は高い。
しかし、熟してもう少しで腐りかけの甘い甘いのやつは結構早めに狩り尽くされてしまう。なので、早めに行く事をオススメする。
豆知識だが、苺は先っぽから数センチの部分が一番あまい。
なので、そこだけ齧って捨てる不届き者が最近増えているらしい。
狩ったからには、全て食べるのが狩者としての最低限のマナーということを知っておこう。
さて、以上が楽しいところだ。
タイトルに書いてある恐ろしい部分について書きたいと思う。
僕の父はサプライズが好きな人だった。
日曜日の朝に車に乗せられ、知らない場所へと車は進む。
カーステレオからはテレビアニメの歌が詰まったカセットテープが流される。これももちろんサプライズだ。
兄貴と一緒に車内でそれに合わせて大声で歌う。助手席では母親が父親に眠気覚ましのブラックブラックガムを食べさせてなんかいる。
絵に描いたような幸せな家族だ。
車はスピードを上げて日曜日の朝の空気を切り裂いて進む。
やがて、山合を走り始めた頃にビニールハウスが見えてくる。
既に昼前になっており、ビニールハウス周りには結構人が歩いている。
まだ、幼稚園の頃の僕にはなんであるかは良く分からない。
駐車場に車を止めて家族と細い道を歩く。
ビニールハウスが見えてくる。
皆の表情から察するになんだか楽しそうな雰囲気であることは子供心にも分かる。
ビニールハウスの前まで着くと、入り口にお兄さんが立っていて、母親が財布を取り出しお金を払う。
その時、ビニールハウスから、僕よりも数歳年上だろう小学校低学年の子が駆け出してきた。
彼はビニールハウスの陰に走って行くと、大量の血を吐いた。
もちろん、それは血ではなく苺だ。
恐らく、子供特有のやんちゃ気分でたくさん食べすぎたのだろう。
しかし、当時の僕にはそれは血に見えた。
母親はお金を払い終えて、僕の手を引きながらビニールハウスに連れていこうとする。
僕の頭の中には一瞬で、予防接種並の並々ならぬ、僕を痛め付ける何かがあるのだろうと察する。
何しろ、子供が血をはくのだ。
僕は
"僕はいいよ"
と踵を返すが、母親に捕まえられビニールハウスに引き込まれる。
途端に苺の甘酸っぱい香りが鼻一杯に広がる。
母親の
「好きなだけ食べていいよ」
の一言で、ヘタ捨て用のビニール袋をもらって、兄貴と食べまくる。
食べて、食べて、食べまくる。
そして、一時間後、僕は先の小学生の道を辿った。