小児科医が解説する子どもの問題行動
こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。
今日は、「小児科医が解説する子どもの問題行動」というテーマで短くお話ししたいと思います。
「子どもが校舎の窓ガラスを割るんです」「子どもが物を盗みました」、そんな風に子どもがうまく生活できなくなった時、子どもに原因があると考えて外来を受診される方が少なくありません。「子どもに発達障害があるんじゃないか」、そんな風に問題を子どもの中に見つけようとする大人がとても多いものです。
でも、まず確認していただきたいことがあります。
それは、その子に関わる親に何か原因はないかということです。特に親の精神状態、心の状態を確認していただきたいと思います。
子どもの心は、親の心と密につながっています。親に心の余裕がなくなれば、その影響が子どもに及びます。その際の子どもの症状は様々です。イライラする症状で現れる場合もあります。物を壊したり、物を盗むという行動に現れる場合もあります。
では、子どもはどうしてそんなことをするんでしょうか。
子どもは成長する過程で、新しい社会を経験します。新しい体験を経験しながら、一つずつ生きるためのスキルを身につけていくでしょう。でも、その成長の過程ではどうしてもストレスや不安が生まれるのです。
皆さんもそうですよね。仕事で新しいタスクを頼まれた時、少し不安が生じたり、緊張することもあると思います。色々な人生経験を積んだ大人でもそうなんです。ですから、まだまだ人生経験が浅い子どもたちが、新しい出来事に遭遇する社会生活の中で不安を感じないわけがありません。
その不安はどこで解消するのでしょうか。それは、親子での触れ合いの中で解消していくわけです。親と会話をしたり、親と手をつないだり、親に抱きしめてもらったり。そういった親子の関わりを通して、子どもたちは日々の不安を解消していきます。
もしも親御さんの心が健康でなかったら、子どもたちは不安をうまく解消できるでしょうか。親御さんが精神的に不安定であれば、笑顔で会話ができないかもしれません。子どもが「ねえねえ、聞いて」と相談をしようと思っても、「今はダメ」なんて反応をして、子どもの気持ちに寄り添えないかもしれません。
親の心が不調な時、子どもたちは抱えた不安を解消できません。不安を解消できないからこそ、子どもたちの心も不安によって不健康になっていきます。その結果、問題行動を起こしてSOSを発信するわけです。つまり、子どもたちの問題行動は、子どもたちのSOSかもしれないということです。その視点を社会に持ってもらいたいと思います。
大人の社会が子どもの問題行動の原因を子どもにばかり求めていては、その答えは見つからないことも少なくありません。子どもたちがSOSを発信してくれていても、それをSOSと捉えるのではなく、問題行動とだけ捉えてしまっては、せっかくのSOSも拾うことができないということです。
上手に声を上げられない子どもたちの声を、大人たちがどう汲み取るか。ぜひ考えてみてください。
今日は「小児科医が解説する子どもの問題行動」というテーマでお話ししました。
だいじょうぶ。
まあ、なんとかなりますよ。
湯浅正太
小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて:https://yukurite.jp/)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。
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