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子どもの個性をどう育てるか

絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。そんな、子どもの心を育てるということを、あまりかたく感じないでください。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今回は、子どもの個性をどう育てるかについてお話ししたいと思います。このお話を通して、自分と社会の二つの視点を柔軟に行き来できる経験の大切さを理解いただければ嬉しいです。

あなたは、自分の個性をどんなふうに感じていますか?ユニークな個性を感じて、自信をもって生きていますか?それとも、自分なんて特に目立った特徴もないと思っていますか?その個性はいったいどうやって育ってきたのでしょうか。

まずは、あなたの個性に含まれる二つのあなたらしさを確認したいと思います。それは、あなたが本来生まれもったあなたらしさと、育った環境によりつくり出されたあなたらしさです。大人であるあなたが今もっている個性は、その二つのあなたらしさからできています。そして、世の中にあなたと同じ個性というものは一つもなく、あなたにはユニークな個性があります。

では、そんなユニークなあなたの個性を、あなたは十分に認識できていますか?あるいは、自分らしさを認めてくれる社会を感じることができていますか?これは、とても重要なことなのです。人は自分らしさを感じるからこそ、自分の生きがいを感じ、生きようとする希望を抱くからです。あなたが自分の個性を感じているならば、自分の中にある生きようとする力も感じているのではないでしょうか。

つまり、人が充実した人生を送るうえでは、自分の個性を意識できる必要があるということです。

では、自分の個性を意識できるには、どうしたらよいのでしょうか?仮にあなたが、あなたの視点からのみ自分の個性を捉えようとすると、実はあなたは自分の個性をはっきりと捉えることはできません。社会の視点がない状態では、個性の評価をしっかり行えないのです。

ですから、あなたが自分の個性をしっかり自覚するには、外の世界である社会を感じる必要があります。社会を感じるからこそ、あなたは自分の個性を意識することができる。個性を捉えるには、そうやって社会を意識することが欠かせないのです。個性を意識するとは、そういうものなので仕方ありません。

それは、子どもも同じです。子どもが個性を意識できるためには、どうしても社会という視点が欠かせないのです。ではここで、子どもの個性を育てる場面を想像してみましょう。

個性を育てようと思って、子どもに習い事を一生懸命させる。子どもが自分の個性を認識するためには、社会の視点が必要でした。もしも、社会の視点を使わずに習い事をしたらどうなるでしょう。自分だけの視点で習い事させようとすると、習い事をしている自分のことを意識できなくなってしまう。それは、ただただ習い事と向き合っているだけの状況です。そんな状況では、子どもはその習い事を窮屈なものとして嫌がるようになるでしょう。それは、社会という視点を入れていないからです。

では、そこに社会という視点を入れたらどうなるでしょう?習い事をやりながらも、誰かのために演奏する、あるいは誰かに見てもらうという機会をもうけて、社会に触れさせてあげる。そうやって、習い事をしている子どもに、あえて社会の視点をもたせることで、自分という個性がはっきり見えるようになってきます。自分のことを意識できるようになってくると、習い事に意欲的に取り組んで、自分の個性を発展させようという意欲が芽生えるようになるのです。

このように、子どもの個性を育てることを考えた場合、子どもが自分と社会の双方を意識できるように環境を整えることが大切であることがわかっていただけると思います。

そしてもう一つ、個性を育てるうえで無視できない大きなものがあります。それは、なんだと思いますか?それは、時代です。子どもが個性を認識するには、社会に触れて社会の視点をもつことが欠かせません。その社会には、流れがあります。その社会の流れが、時代です。

人の個性が生きやすさを獲得するかどうかには、生きる時代が関係するのです。みんなが同じ方向を向いて、みんなと同じことをすることが正解である時代には、個性は生きづらさを生むかもしれません。一方で、その人らしさを尊重し、ユニークな独創性を良しとする時代には、個性は生きやすさを生むかもしれません。個性は社会と切り離せない関係にあるからこそ、時代の影響をもろに受けるのです。

このように、子どもの個性を育てるうえでは、社会の視点が欠かせない。そしてその社会には時代があり、子どもたちが生きる時代によって、子どもたちの個性の生きやすさも変わる。でも、考えてみてください。その時代は、大人の思考の集合体のようなものです。つまり、子どもの個性を生かすも殺すも、大人の思考次第ということです。

時代という大きなスケールではなく、個別の小さなケースへとスケールを落としてみましょう。例えば子どもの中に、歌が好きな子がいたとします。その子は、いつも好奇心をもって楽しんで歌を歌っています。人の能力を伸ばすうえで最も大切なものは好奇心です。ですから、自分から好き好んで取り組むものには成果がついてきます。その子の歌唱力も伸びる可能性が大いにあるでしょう。

ある時、その子どもが大人たちに相談をします。その相談の内容は、歌が好きだから歌手になりたいというものです。相談を受けたある大人は、「歌手の世界は厳しいから、あなたには無理」と言って、その子の話に聞く耳をもちません。でも一方で、「あなたにそれだけの好奇心があれば、きっと歌の世界でも成功する」と言って応援してくれる大人もいます。

このケースのように、時代あるいは大人の思考によっては、子どもが否定される場合もあれば、子どもが応援される場合もあります。実際にこの子どものように、ある大人からは否定されながらも、応援してくれる大人を見つけて歌手として活躍できている人もいるでしょう。この世の中で活躍する人の中には、否定されながらも、応援してくれる一部の方々によって、成功をつかんでいる人がたくさんいます。

つまり、時代によっては、あるいは大人の思考によっては、子どもたちは個性を生かして楽しい人生を送れるのです。そう考えると、時代や大人の思考で子どもの個性を判断しないことの大切さがわかります。大人がすべきことは、判断ではなくもっと違うところにあります。それは、子どもたちに社会を見せてあげるということです。そして、社会に迷惑をかけて社会から罰せられることがないように、子どもを守ってあげることです。

子どもの個性を育てるためには、大人の判断で子どもたちの良し悪しを決めるのではなく、社会を見せてあげること。子どもたちに社会を見せるために、子どもに色々な社会との接点をつくり、色々な経験を積ませてあげるということです。大人がそういった意識をもつことで、どんな時代であっても、子どもは自分らしく生きがいをもって生きることができるようになるのです。

今回はここまでです。

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