小児科医が語る子どもの不安対策
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こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。
今日は、「小児科医が語る子どもの不安対策」というテーマでお話ししたいと思います。
あなたは、不安を感じやすいですか?それとも、不安を抱きにくい人ですか?小児科医として診察をしていると、不安によって生きづらさが生まれている子どもたちによく出会います。それに加えて、その親御さんも不安を抱えやすい特徴があることも珍しくありません。
じゃあ、そんな不安をちょっと考えてみたいと思います。そもそも不安って、悪いものでしょうか?不安を完全に無くしたら、うまく生活できるんでしょうか?
例えば、宿題の提出期限です。「宿題を期限までに提出できるかな?提出しないとな」、そんな不安を抱くから、提出期限までに宿題を終えることができます。例えば、料理の後に「コンロの火を消し忘れていないかな?」、そんな不安が湧くからちゃんと火を消しておくことができるでしょう。
緊急時に備えて準備をする。それは不安があるからできることなんです。地球に人類が誕生して、「肉食動物から食べられないようにしないと」という不安を抱いて用心しながら生きてきたからこそ、今の僕たちがあります。つまり、生命が生きる上で、不安そのものは大切なんです。不安があるから、うまく生活できる。そんな風にも言えます。
問題なのは、過度な不安です。生活に支障をきたすくらいの過度な不安を、適切な不安に和らげたい。そういうことなんです。まずはそのことを理解してください。
そのうえで、不安を抱きやすい子どもたちについてお話ししたいと思います。
例えば、世の中には周りの空気を読みにくかったり、相手の気持ちを察することが苦手な子どもがいます。あるいは、自分の気持ちを他の人に伝えるのが苦手な子どももいます。そんな子どもたちは、過度によそよそしかったり、会話の中での表情の使い分けにぎこちなさがあったりするんですね。
そういった子どもたちは、他人との交流の場面でうまくコミュニケーションをとることが難しいからこそ、不安が強く生まれるものです。顔ではへっちゃらな表情を浮かべていても、心では大きな不安を抱いている。そんなことは珍しくありません。会話の様子から不安が生まれやすい子なのかどうかがわかります。
そんな風に過度な不安が生まれやすい子どもには、そっと「大丈夫」という言葉が大切です。言葉でなくても構いません。そっと寄り添って、体に触れてあげる。そんなちょっとした関わりでも、子どもたちの不安は軽減できるものです。つまり、ちょっとつながってあげる、ということです。
親子の関わり、大人から子どもへの関わりで不安って調整できるんです。子どもの不安は、大人の関わり方で変わるということです。そうなると、わかっていただけると思います。大人の関わり方次第では、子どもの不安が高まるんです。
例えば、「大丈夫かしら」「心配」、そんな言葉を日常茶飯事に口にしている親御さんの元では、不安を抱きやすい子どもの心が育ちます。本来であれば、社会で抱えた不安を安心な存在である親との関わりの中で解消するんです。でも、その親が不安を抱えてばかりだと、親子の関わりのなかで子どもの不安は解消されません。
子どもの不安が解消されなければ、過度な不安となって生活に支障をきたすようになる。そういうものです。
僕たち大人は、子どもたちの心の中にある不安を理解して、その感情を緩和するための支えとなりたいものです。子どもたちはまだまだ世界を理解するためのスキルや経験を育てつつある存在です。その過程で抱く不安は、彼らの成長の一部となりえます。でも、その不安が過度であったり、彼らの幸せや学ぶ喜びを奪い去ってしまうことがないように、関わってあげることが必要なんです。
今日は「小児科医が語る子どもの不安対策」というテーマでお話ししました。
だいじょうぶ、
まあ、なんとかなりますよ。
湯浅正太
小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて:https://yukurite.jp/)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。