聴き慣れたセリフを踏襲する子どもたち
絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。
小児科医として、色々な生きづらさを抱えた子どもたちに出会ってきました。その子が病気をもっていようとなかろうと、心が豊かに育っているかどうかで、子どもたちの生きやすさが変わっていきます。そしてそんな子どもたちが、これから少子高齢化や人口減少で大きく変わる時代を生きていく。
そんなこれからの時代を生きる子どもたちには、生まれてきてよかったと思える人生を歩んでもらいたい。そう考えると、子どもの時期に豊かな心を育てられる予防的な関わりが欠かせないと思うようになりました。そのために、こうやってvoicyで子どもの心を育てる情報を発信しています。
はじめて聴いてくれているリスナーの方もいると思って、ちょっとお話ししてみました。
今回は、聴き慣れたセリフを踏襲する子どもたちを考えたいと思います。
あなたは、自分の話し方を動画で聞いたことはありますか?自分って、こんな話し方をしていたんだ。そんな風に思ったことはありませんか?自分が感じている口調と、録音した自分の音声は少し違うものですよね。
ではあなたは、そうやって聞いてみた自分の話し方を、優しいと感じましたか?それとも、なんだか冷たいと感じましたか?小児科医として子どもたちの成長を追っていくと、話し方の育つ様子がよくわかります。そこには、一定の法則があります。それは、その子どもが慣れ親しんだ話し方が、子どもの口調になるということです。
世の中には、「てめえ」などと汚い言葉を使う人がいます。その言葉を使う本人は、優しい心をもっていても、言葉としての表現は汚くなってしまう。そんなことがあります。つまり、心の状態を素直に言葉で表現できないということです。これは、とてももったいないと思います。
そこに関係するのは、子どもとして聞き慣れていた会話です。その子どもが、親とたくさん会話をするのか。それとも、親以外の人、あるいはゲームの世界での会話を聞くことが多いのか。そういった、聞き慣れた会話が、子どもたちの話し方に大きく影響を与えます。生活で触れる言葉の一つひとつが、じわじわ子どもの言葉を育てていくんです。
当たり前のことですが、この「生活で触れる言葉が、子どもの言葉になる」という意識はとても大切です。そして、子どもが自分の心の様子を正確な言葉で誰かに伝えられるようにしてあげることは、子どもの生きやすさにつながっていくのです。
小児科医として接する子どもたちの中には、親子の会話よりも、ゲームの世界の会話を聞く機会の方が多い子どももいます。ゲームの世界は、もちろん実際の世界ではありません。人と人とが直に接している世界ではないのです。
そんな世界の会話に慣れていくと、不思議な現象が起きます。会話をする時の感情や口調に違和感を感じるようになるのです。それを空気が読めないとか、相手の気持ちをくめないとか、そういった表現で表してしまうかもしれません。それを、あたかも発達障害によるものかのように捉えようとしてしまうことだってあるでしょう。
でも、幼いうちから親との生の会話を重ねないで、ゲームの世界に慣れた生活をしていると、子どもの中では聞き慣れたゲームの世界で通用する言葉が育ってしまいます。ゲームの世界ではそういう話し方が当たり前かもしれないけれど、実際の人の社会ではもうちょっと心のこもった優しい口調で表現するかもしれない。そういった、違和感を感じるようになるのです。
親の言葉が子どもの言葉になるように、どんな世界にも負けないくらい、親と子どもとでコミュニケーションをとること。それがとても欠かせないと思っています。当たり前のようですが、その当たり前が今、変わってきているのです。
今回はここまでです。
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