ほめる時に気にすべき大事なこと
絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。そんな、子どもの心を育てるということを、あまりかたく感じないでください。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。
今回は、子どもをほめる時にあなたが気にすべき大事なことをお話ししたいと思います。
この放送で何度もお話ししてきましたが、最終的に人が求めるものは誰かとのつながりによる愛です。お金や名誉は、あくまで人とつながり愛を得るための手段に過ぎません。だから、子どもへの教育でも欠かせないことは、子どもに愛を得たり与えたりする方法をしっかり教えてあげることです。愛を得ると、どんな幸せを感じるのかを実感させてあげる機会を設けることです。
人とつながれなければ、どうなるでしょう?あるいは、愛を得ることができなければ、人はどうなるでしょう?自分というものに価値を見出せなくなってしまいます。ユニークな自分という存在をしっかり認識できずに、アイデンティティを確立できなくなってしまうのです。社会生活を送る中で、自分って何のために生きているんだろうと、生きる意味を見失ってしまいます。それは本当にもったいないと思います。
そこで、そんなもったいないことにならないように、子どもをほめることを考えたいと思います。あなたは、子どもをほめることについて、どれだけ考えたことがありますか?あなたのほめる行為は、子どもを自由自在に操ります。子どもの発達は、大人の関わり方次第で如何様にも変化しうるものなのです。それほど子どもの心は、とてもとても純粋に変化していきます。
例えば世の中に本当にある、困ったケースをみてみましょう。子どもがテストでいい点数をとった時ばかり、やたら子どもをほめるケースがあります。そんな環境で育つと、子どもの心はどんな風に変化するでしょうか?親にほめられようと、テストでいい点数をとることを最大の価値と考えるようになります。その行動は別の見方をすると、テストでいい点数をとることで親とつながろうとする、ということです。
テストでいい点数をとることでしか、親とつながれない。そうすると、テストでいい点数をとれなかった時には、親とつながれず愛を自覚できずに、自分の価値を見失います。そうやって、親の誤った関わりのために、生きづらさを抱えている子どもが実際に本当に多いのです。驚きます。
でも、人が求めるものがつながりであり愛であることをしっかり認識できている人であれば、そういった親子関係の修正すべき具体的な方法がわかります。その子どもが求める価値を、人が生きるうえで本来求めるものへと修正するということです。テストの点数などの生活の一部のことではなくて、もっと根本的な価値観の大きな柱を修正するということです。あなたなら、どうしますか?
それは、人とつながりをもつ行動、あるいは、人に愛を与える行動をほめるように修正する、ということです。親のためにハンカチを取ってくれた。お友達のために鉛筆を貸してあげた。そうやって、誰かのために何かをしてあげよう、という行動をとれた時こそ、最大限にほめてあげるということです。
そして、人に愛を与える行動をほめる過程で、とても大事なプロセスがあります。それは、人に愛を与えた時に、相手が幸せに感じるということを理解させてあげる必要があるということです。僕たち大人であれば、何かをしてもらったら幸せに感じることは当たり前だろうと思うかもしれません。でもそれをそのままにしてはもったいない。そのことをしっかり子どもに認識させてあげるのです。子どもが相手に愛を与えたことによって、相手が幸せを感じたことを、愛を与えた子ども本人にも味合わせてあげる必要があります。
その時に使えるのが、「ママ、嬉しい」「パパ、嬉しい」「〜ちゃん、嬉しいと思っている」という「あなたの行為のおかげで、誰かが幸せになっている」というコメントです。これによって、子どもが人とつながることによって、その子どもは誰かに幸せを与えられた、ということを確実に意識できるようになります。
そうやって子どものために、何度も何度もわざと人とのつながりをつくっていきます。子どもに、相手に愛を注ぐと相手がどれほど幸せを抱くのかという経験を積ませてあげるのです。
すると、相手の幸せを理解できた子どもの心はどうなるでしょうか?ここで以前の放送でもお話しした、心の鏡の法則を思い出してもらいたいのです。心は鏡のようで、自分が嬉しければ、相手も嬉しくなる。相手が嬉しければ、自分も嬉しくなる、ということでした。
子どもがあなたに何かをしてくれて、あなたは「ママ、嬉しい」と言います。子どもは、自分の行為によってあなたが幸せを感じていることをしっかりと理解します。そうやってあなたの幸せを理解するからこそ、心の鏡の法則によって、子ども自身も幸せになるのです。
どうでしょう?子どもが人とつながる、あるいは人に愛を注ぐことによって、子ども自身が幸せになりました。この経験を子どもの頃にどれだけ積ませてあげられるか。それが、その後の人生に大きな影響を与えます。人とつながって、人へ愛を注いで、自分が幸せになる。そういった経験を積んで、愛の価値を認識できるようになれば、大人になった時に社会という環境に惑わされることはなくなります。
自分たちの生活が便利になるようにつくったはずの社会で、人は生きづらさを抱えていることが少なくありません。それは、本来人が求めるものを意識できていないからです。でも、人の求めるものを意識できていないことは、その人自身のせいではありません。その原因は、子どもの頃の経験にあります。
子どもの頃に人が本来求めるものをしっかり意識できる教育を受けてきたか。あるいは、そういった関わりを積んできたか。そこに原因があります。
もちろん、社会を生きるうえでテストの点数などが役立つことがあるかもしれません。そうやって生きる技能を身につけるプロセスもあるかもしれません。でもそれは、あくまで人が生きる流れの一部です。人が生きるうえで欠かせない大きな柱となるものは、愛です。愛を得て、愛を与えるということをブラさずに生きていく心を育てれば、他の要素はどうにでもなります。生きる勇気や自信が湧いて、新たなものにチャレンジしていく姿勢が生まれます。不思議なものですが、人の心とはそういうものなのです。
子どもをほめるときに、ぜひつながりを意識してみてください。そうすれば、子どもは必ず変わります。
今回はここまでです。