よかったと思える子どもたちへの関わり
おはようございます。絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。そんな、子どもの心を育てるということを、あまりかたく感じないでもらいたい。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆったりとした気持ちで聴いてもらえればと思っています。
2/8の今日は、実は午後から、将来医療あるいは教育の分野へ進みたいと考えている高校生たちにお会いする予定です。そんな高校生たちには、自分たちの可能性を感じてもらえるようにお話ししたいと思います。そして、将来への希望を抱いてもらいたい。そんな風に思っています。
あなたは高校生の頃、どんな生徒でしたか?将来への希望を抱いて、こんな仕事に就きたいと思いながら、希望に満ち溢れた高校生活を送っていましたか?部活などに打ち込みながら、青春を謳歌していましたか?
僕は、小児科医となり大人の社会を経験して、命に寄り添いながら人の人生を学んで、子どもあるいは若者たちに大きな可能性を感じるようになりました。今日これからお会いする高校生たちには、どんな生徒も可能性を秘めていると思っています。これからの人生を楽しめるチャンスがある。そう思っています。
でも若い彼らが、その自分たちの可能性を自分自身で感じることは簡単ではないかもしれない。それは、色々な人の人生を知る経験が豊富ではないからです。こんな経験をしている人は、その後にこんな人生が待っていた。そうやって、色々な人の人生がどのように展開されていくのかを、実際に見たり聞いたりする機会がまだまだ少ないのです。
例えばあなたは今、大人になって、昔一緒に過ごした同級生がどんな人生を送っているかを知っていると思います。そんな同級生の中には、まさかそんな人生を歩むとは思っていなかったというケースも少なくないでしょう。つまり、子どもの頃に感じていた人生の捉え方が、やはり狭い捉え方だったということです。
人生には、色々な面白い展開がある。様々な経験を積むことで、いつかそれらの経験が結びついて、想像もしていなかった楽しい人生へと発展する。そういった現実があります。だからこそ、今日お会いする高校生には自分たちの可能性を感じてもらえるようにお話ししたいと思うのです。
そんな今日は、(子ども、あるいは親が)よかったと思える子どもたちへの関わりについて考えたいと思います。このお話を通して、子どもが生きるうえで希望を抱けることがどれだけ大切か、ということを感じていただければと思います。
僕は小学校、中学校、高校はすべて地元の公立の学校に通っていました。高校生の頃は、水路や木々が生い茂る道を自転車を走らせながら通学していました。そんな道を通っていると、水や木々の香りを感じたり、生い茂る葉っぱの隙間からふりそそぐ木漏れ日を感じながら、自転車をこいでいました。それは僕にとって、とても気持ちのいい経験でした。
そんな高校生の頃の僕には、一つの夢がありました。それは、医師になるという夢です。その夢が叶う、叶わないという不安よりも、純粋に「医師になる」と思いながら生きていました。そうやって将来のことを考えながら、今の高校生活でおこなうべきことを考えることで、高校生活はとても充実したものになりました。
今は小児科医として子どもの心を学んで、子どもの心の発達にとって希望を抱けることがどれだけ大切かということを理解しています。それに、心の中で「やれるか、やれないか」ではなく、「やる」と強く思うことが結果に強く結びつくことを理解するようになりました。
実は子どもの中には、中学校の途中までは勉強も頑張って明るく過ごしていたのに、高校生以降になってうまく生活できなくなってしまったという子どもがいます。親御さんにお話をうかがうと、「この子は自分でなんでもできるから、子どもに任せておけば大丈夫と思っていた」というコメントをよくいただきます。
中学校まで学習もできて明るく過ごせていた子どもは、たいてい物事を理解する能力が備わっています。理解する能力があるからこそ、将来に向けて色々なことを想像できてしまう。そういった側面もあります。明るい将来ばかりではなくて、暗い将来までも想像してしまう。そこで大切なことは、希望を抱ける明るい将来に向けて、子どもを導いてあげるということです。
そこで大切なのが、親の関わりです。子どもが将来への希望を抱けるように、人生の楽しさを子どもに感じてもらう。そのために、親自身が人生を楽しむ。そういった親の姿を子どもに見せてあげる。また、色々な人生を子どもに語ってあげる。人生はこうでなければならないというものではなく、色々な選択肢があって、どの選択肢にも人生を楽しめるチャンスがある。そういったことを、子どもたちに伝えてもらいたいと思います。
そうやって、子どもたちのアイデンティティを育ててもらいたいのです。社会には色々な人がいて、様々な人生がある。そんな社会の中で、自分らしさとはいったい何なのか。そうやって、子どもが他人や社会を理解できるようになるからこそ、自分を意識できるようになる。そうすることで、自分らしく生きることを考えるようになります。
そして、子どもたちが「やる」と決めたことを、全力で応援する。子どもたちの心の中に「やれるかな」と不安が現れたとしても、そっと子どもたちの心を支えてあげる。人が「やる」と決めたことが結果に結びつくことを理解したうえで、親が子どもに関わる。
そういった親から子どもたちへの関わりは、きっと子どもたちにとっての「よいこと」につながっていきます。将来子どもたちにとって、子ども時代の経験が「よかったこと」になるように、ぜひ明るい将来を見せる関わりを続けていただければと思います。
今回はここまでです。