見えないものを見せる工夫
絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。そんな、子どもの心を育てるということを、あまりかたく感じないでください。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。
リスナーの方から、このチャンネルを通じて子どもへの対応を工夫したら、子どもの様子が変わりましたとコメントをいただきます。ありがとうございます。嬉しいです。周りの大人の関わり方を変えるだけで、子どもの様子は変わるのです。
それを知らないで、子どもは勝手に成長して生きる術も身につけるからと思っていては、もったいない。おそらく、大人の関わりで子どもが変わるということを経験した方は、この「もったいない」という感覚がわかっていただけると思います。
子どもの生きやすさは、大人の関わり方次第で変わります。如何様にでも変化します。そういうものなのです。
例えば、「君は〜な個性をもっているね」「君って、〜な癖があるよね」なんてやりとりを聴いたことがある人は少なくないでしょう。その個性や癖は、実は大人の関わりによってつくり出されている部分も大いにあります。大人の関わりの影響でつくり出されたものが、いつの間にかその子ども本人がつくったかのように言われる。そういうものなのです。
大人が子どもを導くということです。大人の関わり方次第で、子どもの行動を色々な方向へ導くことができるのです。今回も、子どもを導くうえで欠かせない知識をお話ししたいと思います。それは、見えないものを見せるということです。
あなたは、スポーツの観戦中継を聴いたことがありますか?解説者の人が試合の様子を解説してくれると、その試合の様子がよく分かるものです。特にルールもわからないスポーツだったりすると、解説があるおかげで楽しめるようになるものです。
スポーツではなくても例えば、あなたが道に迷った時です。どうやって目的地に行くべきかわからない時は、不安がたまり疲労も感じるでしょう。でも、誰かに道を教えてもらって、目的地までの経路がなんとなく分かると、気持ちも楽になり足取りも軽くなるものです。
このように、自分がわからない物事でも、誰かが解説してくれると楽しめるようになる。そして、気持ちも楽になる。そんな心の変化が生まれるものです。つまり、見えないものを見せる工夫をすることで、人は生きやすくなるのです。
それは、子どもも同じです。子どもの時期は、新しい体験の連続です。わからないことの連続なのです。わからないことがあるからこそ、不安が生まれます。子どもの時期には不安がたくさんあることが当たり前。その不安を軽減するために、親という存在が必要なのです。
そんな親が担うべき役割のひとつに、見えないものを見せる役割があります。例えば「これからお料理がくるから、テーブルは綺麗にした方がみんなが食べやすくなるね」「雨が降るから、傘をもっていった方がいいね」「お友達の服が汚れちゃったから、お友達が泣いているんだね」
そんな親に予想できる、あるいは親に見えている世界を、子どもと共有すること。それが、子どもにその世界を意識させて、心の不安を取り除くうえでとても大切なのです。大人には見えていても、子どもには見えていない。実はそんなことが、たくさんあるはずです。
そうやって大人の世界を見せてあげることを繰り返していると、次第に子どもが自分から率先して行動できるようになります。そうなれば、あえて言葉に出す必要はありません。あとは、親がそっと子どもの行動を支援してあげるだけで大丈夫になります。それに、子どもは成長すると「わかっているよ」と口ごたえしてくれるようにもなります。だから、そんな時こそ、そっと親が行動で示してあげるだけの方がうまくいく場合もあるのです。
子どもには見えていない世界を見せてあげる。そうやって、不安を軽減しながら新しい物事をどんどん乗り越えさせてあげる。その積み重ねが、いつしか大きな効果となって現れます。ちょっとした対応ですが、効果は絶大なのです。
今回はここまでです。