見出し画像

小児科医が解説するおねしょ

こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。

今日は、「小児科医が解説するおねしょ」というテーマで短くお話ししたいと思います。

あなたは、おねしょをしたことはありますか?幼児期にはおねしょは決して珍しいものではありません。でも、小学生になるにつれて、おねしょが続いていると心配になるご家族が増えるものです。外来に出ていると、そんなおねしょについてご質問をいただくことがあります。例えば、「小学生になってもおねしょがあります。おねしょはいつになったら治るものですか?」というご質問です。

夜間の睡眠中に意識せずにおしっこを漏らしてしまうことを「夜尿」と言います。特に、5歳以上で月に1回以上の夜尿が3か月以上続くものを「夜尿症」と言うんですね。

では、7歳では夜尿症を持つ子ども割合はどのくらいなんでしょうか?それは、だいたい10%程度と言われています。7歳くらいだと10人に1人は夜尿症を持っているということです。その状況が、成長とともに改善していきます。思春期までに年間14%ずつ自然に改善していくことが知られています。

しかもわかっているのは、適切に生活習慣を見直した方が改善しやすいということです。

例えば、寝る前の飲水習慣です。寝る前に水分を飲むと、その時は大丈夫ですが、消化管から水分が吸収されて、血液中の水分が増えて、腎臓で血液中の水分がこしとられて尿になるわけです。水分を摂取してから、その水分が尿に変わるまでには時間がかかるんですね。ですから、寝る前に水分をとると、その後遅れて寝ている間におしっこがみるみる膀胱に溜まって、おねしょをしてしまう。そんなことがあります。ですから、寝る前の水分摂取を控えてみることは大切なポイントです。

あとは、例えば便秘症です。便が腸管の中に溜まっていると、膀胱を圧迫することもあり、夜尿症をきたしやすいことが知られています。ですから、便秘症がある子どもであれば、まずは便秘症を改善させてみる。そうすることで、夜尿症も改善することがあります。

そして、例えば日中のストレスです。夜尿症をきたす子どもの中には、生活におけるストレスの影響を受けていることもあります。そういった子どもは生活のストレス要因を改善させることで、夜間のおねしょが改善することがあるのです。

このように、小児科医が夜尿症のある子どもを診る時、その背景にはどんなものが潜んでいるのかを確認しているものです。夜尿症自体を相手にするというよりも、他の原因を探るということです。この作業は、とても大切なのです。

夜尿症に対する治療法は無いかというと、そういうわけではありません。例えば、夜尿症を治療するためにお薬やアラーム療法など、いろいろな治療法があります。でも、どれも夜尿症を完璧に治すものではありません。もしも、便秘症をそのままにした状態で夜尿症に対する薬を飲んでも、なかなかその治療効果は上がらないでしょう。その場合は、やはりまず便秘症を改善させることが大切なのです。

先ほどもお話ししたように、夜尿症そのものを完治させる治療法はありません。ですから、夜尿症自体をどうこうするというよりも、その周辺にある課題を見つけ改善させる。それが大切です。夜間の水分摂取の問題や便秘症、精神的な状態に問題がないかを確認する。そういった周辺整理がものすごく大切なのです。

今日お話しした内容は、夜間のおねしょのみの場合です。一方で、もしも夜間のおねしょだけでなく、日中も尿を漏らしてしまうとか、便も漏らしてしまうというようであれば、より詳しい検査が必要かもしれません。その場合は医療機関でご相談されてください。

今日は「小児科医が解説するおねしょ」というテーマでお話ししました。

だいじょうぶ。
まあ、なんとかなりますよ。

湯浅正太
小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて:https://yukurite.jp/)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。

いいなと思ったら応援しよう!