子どもが思いを伝えられるようになるには
絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。そんな、子どもの心を育てるということを、あまりかたく感じないでもらいたい。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆったりとした気持ちで聴いてもらえればと思いながら発信しています。
2月9日の今日は、子どもが思いを伝えられるようになるにはどうしたらいいのか、を考えたいと思います。
あなたは、自分の気持ちを相手に伝えることが得意ですか?それとも苦手ですか?気持ちを伝える方法には、色々な方法があります。言葉で伝える、表情で伝える、身振り手振りで伝える。そうやって自分の気持ちを相手に伝えられるようになることで、気持ちよく生活できるようになるかもしれません。
例えば、子どもが気持ちを伝えることを、子どもの成長にそって考えてみましょう。子どもが言葉を使えるようになるまでには、自分の気持ちを言葉で伝えにくい時期があります。そんな時には、泣いたり、叩いたり、そんな行動で自分の思いを伝えようとします。
言葉を使えるようになるまでには、子どもの気持ちを周りの大人が言語化してあげることが、子どもを助けます。「今、こんな風に思っているのね」、「これが欲しいのね」、そんな風に周りの大人が子どもの気持ちをあえて言葉に出して言ってあげる。それが大切です。
また、1歳頃から始まり2歳頃にピークを迎えるイヤイヤ期があります。子どものやりたいという気持ちを大切にして、気持ちを言語化しながら、子どもの心が育つのを楽しみにする時期です。そうやって、子どもの気持ちを抑えつけることなく、自主性を大切にしながら気持ちを引き出そうとします。
そして迎えるのが、幼稚園、保育園、そして学校での活動です。
色々なお友達や先生と触れ合って、お家とは違う環境で生活するようになります。お家とは違うので、不安が生まれます。不安が生まれるから、外の世界で過ごすことを嫌がる時期もあります。それでも子どもが勇気を出しながら、外の世界を楽しめるようになるのは、それまでの親子の関わりを通じて、子どもの心の中に親を感じられるようになるからです。
親を感じながら、徐々にその行動範囲を広げていきます。失敗したり、不安が高まったら、すぐに親とつながろうとします。そうやって次第に色々な人を知り、自分が知らない世界を開拓するようになります。そういった外の世界に触れる機会がどんどん増えていき、中学生以降でアイデンティティを確立していきます。
自分とはどんな人なのか。そういった自分探しをするようになり、他人と違う自分の特徴を理解して、自分らしく生きようとする心が育ちます。そうやって大きな社会で生きることの勇気が芽生えるのです。そういったアイデンティティが育つからこそ、社会の中で自分の思いを伝えようとする意欲が生まれます。
このように、子どもが思いを伝えるために大人がどう関わるかを考えた時に、子どもの成長段階によって、子どもの心や大人の関わり方は微妙に違います。言葉の獲得を目指している時期と、言葉を流暢に使えるようになった時期とでは、気持ちの言語化すべき程度がやはり異なりますよね。ただどの成長段階であっても、子どもが思いを伝えるために必ず必要なものがあります。それは、何だと思いますか?
それは、子ども自身が認められるという体験です。
気持ちを表現してくれてありがとう。意見を出してくれてありがとう。そうやって、自分の気持ちを外に出していいという経験を積めるかどうかで、その子どもの生きやすさが決まっていきます。どの年齢の子どもであっても、やっぱり認められるという経験は必要なのです。
これは、大人の世界でも同様です。新入社員が会社に入ってきたとして、最初は不安を抱いているものです。そんな若者が少しでも意見を出してくれたら、すかさず「意見出してくれて、ありがとう。嬉しいなあ」。そんなことを上司が言ってくれたら、不安が解消されて仕事を頑張ろうという意欲が湧いてきます。そうやって、自分の思いを伝えられる心が備わります。
今回はここまでです。